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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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時間は…
容赦なく流れる…。
百目鬼さんと別れてから1ヶ月が経とうとしていた。
海開きが近づいて、もうすぐ世の中は夏休みに入る。
気温は日々上がり、ジリジリと地面を焦がし干からびる。
僕の大学は夏休みに入った。
僕は、清史郎さんの意向で、退院しても大学に行かずに夏休みを迎え、引き篭もる予定だったけど、そうはいかない。休んだ間の講義のノートを手に入れて勉強しとかないといけなかった。
大学の友達にノートをコピーしてもらうため、大学近くの喫茶店に行くことに。
清史郎さんは、僕に何かあったら大変だと着いてきた。友達のノートをコピーさせてもらい、軽く講義の説明も受けた。
マキ「あはははは、マジで!?あの教授カツラだったの」
「マジマジ!、講義中にズレちゃってさ、もう全員固まったよ、あいつ厳しいからさ、笑ったり指摘したりしたら単位くれなさそうだもんよ」
マキ「ふふ、確かに、へそ曲げたら収集つかなそうだもんねぇ」
「だから、この日のノートは笑いを堪えるために手が震えちまってさぁー」
マキ「ふふ、だから、こんなミミズみたいな字なの?ウケるぅ」
「そうそう。まぁ、俺、字が綺麗じゃないから読めない所あったらいつでも電話かメールしろよ」
マキ「うん♪分かったありがとう♪」
「良かった、元気だな。ちょっと痩せたみたいだからビックリして心配したよ」
マキ「あはは、僕がそんなひ弱そうに見える?」
僕は、もう、ヘマはしない。
清史郎さんの前でも、他の人の前でも。
ずっとずっとそうやって生きてきた。
今まで通りに戻っただけ。
ーピコン♪
華南《海、ダブルデートになってもいいぜ、むつが騒ぐだろうけど、俺たちが何とかするよ(^o^)/夏祭りも予定空けといて(・ω<) 》
ーピコン♪
むつ《なんで海こねぇんだよ!最近顔も出さねぇし!》
ーピコン♪
修二《毎日暑いね、僕ちゃんと2人でアイス食べに行かない?それと、むつが心配してるから1回顔出して、華南も待ってるよ(*>ω<*)僕ちゃんは夏休みになるから、マキが落ち着いたら朝でもよなかでもいつでも連絡してね(*^^*)》
マキ「ふふ、修二は完全に気づいたな。そうだね、そろそろ外に出なきゃだよね…」
賑やかなメールに、いつも癒される。
清史郎「優絆、晩ご飯だよ。今日は、お前の好物のハンバーグだよ」
マキ「わーい♪♪美味しそう♪」
清史郎さんの用意するハンバーグは、高級なお肉を使ってシェフが作ったもの。高級レストランにも引けは取らない。
だけど、僕には、もっと素朴な方がいい。あの家庭料理、母親から受け継がれたっていう、あの味のほうがいい…、ううん、あの味がいい。
病院を退院したのに、食事はどれも美味しく感じない。どんなに高級な物も、コンビニのご飯とそう変わらない。
百目鬼さんの、あの優しい味のする手料理には、どれもかなわない…。
だけど、食べなくちゃいけない。だから、今日も口の中へ押し込む…
そうして毎日は過ぎていく。
夏の暑さは、ジリジリと地面を焦がし干からびる。
そんな日差しに焼かれる世の中を、色のない瞳で眺めて過ごしてる。
朝、目を覚ましたら、支度をして、美味しさを感じない朝食を口に押し込み、いつも通り笑顔で過ごす。そして1日を無事に過ごし、美味しさを感じない晩ご飯を口に押し込み、先生からもらった薬を飲んで眠りにつく。
こんなに辛くても、毎日陽は昇る、時間は過ぎていく、そして、こんなに苦しくても、意外と人間は頑丈で、倒れたりもしない。
大丈夫、昔、清史郎さんを諦めた時もそうだった。僕は、好きになった人に依存しやすい。
諦めるのには時間がかかる。
本当は、何もかも断ち切ってしまわなければならない、だけど何も捨てられない。捨てたら…きっと笑えなくなってしまう。
百目鬼さん…
苦痛の元凶の僕から解放されて、やっと自由になったね
百目鬼さんは、どうしてるかな?…
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
目が覚めると、いつもその温もりを探している。
俺を求めて擦寄る温もり。
俺を見つけると安心したように微笑む温もり。
「にゃぁ〜」
失った日から、目が覚めるとミケは必ず俺のの目の前にいるようになった。
百目鬼「おはようミケ…」
「にゃぁー」
百目鬼「マキは、もう来ないぞ」
言葉が通じる訳もないし、ミケがそう言ったか分からない、だがミケは、マキが来ないとぬいぐるみを荒らすようになった。
百目鬼「ミケ、またぬいぐるみで遊んだな、こいつらはお前のオモチャじゃないんだぞ」
ぬいぐるみをベッドサイドに戻して並べ、ミケを連れてリビングに出る。餌を与えるとミケは大人しく餌に夢中になった。
この部屋は、昔みたいに静寂が戻った。
騒がしいのが居なくなったからな。
『百目鬼さぁん、お腹空いたぁ』
朝、テーブルに着くや否や、テーブルにぺったりくっついて眠そうな目で俺を見上げながらおねだりする。
『フレンチトースト食べたいなぁ♪』
朝は朝で眠そうに甘えたり、あーんしろと要求してきたり。酷い時は服も着れず髪も解かせず、それでも目を閉じながらフレンチトーストを口に頬張って幸せそうにしてる。
夜は夜で、玄関潜るや否や、無邪気な子供から化けて妖艶に微笑み、俺に跨る。
『百目鬼さん…おっきいの、奥まで届いて気持ちいい、もっと突いて…』
せっかくご飯を用意してても、俺のタガを外して夜中までお互いを貪る。俺を食べたマキは、性欲を満たすと今度は「お腹空いたぁ〜」って無邪気な子供に戻っる。風呂に入れてやり、頭を洗ってやると、本当に気持ち良さそうにする可愛いマキを堪能して、取り敢えずご飯を食わす。すると、また幸せそうな顔して俺のご飯をリスみたいに頬張る。
食べ終わって髪を乾かしてやり、さあ寝ようとすると、マキは俺にぴったりくっついて上目遣いに甘えてきやがる。
『えへへ、百目鬼さん大好き』
なんて言いやがるから、結局朝までになっちまう。
あいつがいるだけで心が騒がしい。
大事にしてやりたいのに、結局体を貪っちまう。だが、マキはもういない、あの意味のわからない嵐のような感情はもう湧かない。
ただ、今は、静かになった部屋と、俺の心を締め付けるような息苦しさが、苦痛となって襲ってる。
それでも日々は過ぎていく。
マキと別れたと知った檸檬は、怒って口を聞いてくれなくなった。
マキのためだと説明したけど、納得しない。
そして厄介なことに、マキの居場所を瀧本に教えたやつが見つからない。
最初は清史郎を疑ったりしたが、やつは白だった。
清史郎のマキへの執着はかなり凄かったが、俺が先生様と泉に連絡したから、先生様が清史郎と話を付けた。もしマキの意見を無視するようなことがあれば、医者の権限で昔のことを暴露して親権を奪い、二度と会えなくすることも出来る、と忠告した。清史郎はマキな意思を無視しないと念書を書き、今マキのそばにいる。
清史郎の件は片付いたが、では、マキの居場所を瀧本に言ったのは誰だ?
俺は、また、マキを守れないのか?
雪哉「はあッ!?マキ様と別れたッ!?」
色々心配してくれた雪哉に別れた事実を話したら、激怒された。
マキの気持ちを考えてないと散々罵られ「馬鹿じゃないの!」と100回は言われた。
雪哉「捨てて清々した?なら何でこの部屋こんなに荒れてんの!?」
百目鬼「煩い、仕方ないだろ、俺のそばにいるとマキは自己犠牲が酷い。あいつの顔に傷が出来てもいいのか?」
雪哉「ヤダ!ダメ絶対!!」
百目鬼「どうしようもねぇーんだよ」
雪哉「神……」
あの日
終わりにすると聞かされたマキは、この世の終わりのように愕然としていた。
泣き叫んだあの声が、今も耳に残ってる。
だが、俺の手でボロボロになって死体のように転がったマキを見るより、俺のためだとナイフの前に飛び出すマキを見るより、きっとマシだ。
修二は、俺から解放されて幸せを手に入れた。だからきっと、マキもそうなる。
退院したマキのことを何度か見に行った。
初めは家から出てこなかったようだが、数日して大学の友人に会い、何事もなかったように笑っていた。
だが、それでいい。
そうして俺のことなんか忘れて幸せになればいい。
俺は、最後に認めたばっかりに、マキのことが頭から離れない。
マキを独り占めにして、閉じ込めて、ベッドに繋いで、俺の腕から出さないでおきたい。そんな危ない欲望に苛まれ、また温もりを探して目を覚ます。
その度に、別れて良かったと胸をなでおろす。
本物を監禁したら、俺はもう人じゃなくなる。二度と奏一と修二に顔向けできない。
俺たちはこれで良かったんだ。
例え気持ちを打ち明け合っても、お前は身投げを止めない。
俺の暴走は止まらない。
俺の気持ちをお前に告げても、俺の独占欲は増すばかり、そのうち本当にベッドに鎖で繋いでしまうだろう。
あのストーカーのように、俺は俺の欲望を満たす。
そうしていつか、お前を殺してしまうかもしれない。
俺は、それが怖い。
俺たちは、これで良かったんだ。
好きって気持ちだけじゃ、どうしようもできないこともある。
気持ちだけじゃ、お互いの欠点は治せない…
好きだからって、上手くいくとは限らない。
矢田「…百目鬼さん」
檸檬「ほっときゃいいよ、そのうち我慢できなくなるさ」
杏子「そう簡単にいくかな?」
賢史「あいつ、大事なことに気がついてねぇんだよ、不器用通り越して馬鹿だからな。まぁ、俺は教える気ねぇけど」
檸檬「賢史さんの意地悪!鬼!悪魔!」
賢史「檸檬、お前ほっとけって言わなかったか?」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
そうして、運命の天秤が傾きだした時。
1人の男の怒りが頂点に達した。
それはいつも、予想しない動きをする男。
描かれた筋書きを壊す男。
彼は、携帯を片手に握り締め、ワナワナと怒りに震えていた。
《何度も誘ってくれてありがとね(^_−)−♡でも、夏風邪引いてまだ具合悪いし、休んでた間の講義ノートも写さなきゃなんだ♡バイドも休んでお金ないし♪だから今年は遠慮するね( ๑ ❛ ڡ ❛ ๑ )誘ってくれてありがとう(〃艸〃)キャッ♡愛してるよむつきゅん♡時間できたらまた大人のオモチャあげるから楽しみにしててねღゝ◡╹)ノ♡ー天使なマキちゃんよりー》
むつ「ぁアん?!
俺様の誘いを無下にしやがって!あっ!このパターン前もあったぞ。何度誘っても断りやがって!最低でも週に1回は顔出してた癖に、全然来ないなんておかしいだろ!またなんか隠してやがんなマキのやつ!!ふざけやがって!とっ捕まえてやる!!」
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