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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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俺の質問に、百目鬼は何か言いたそうに睨んできたが、奥歯を噛み締め悔しそうに顔を歪める。
百目鬼「!。…そんなの、今関係ないだろ」
むつ「はあ?関係なくないだろ!大事なことだろ!」
百目鬼「マキに気持ちなんか無い。飽き飽きだって言ったろうが」
むつ「ッ!!んだとぉー!!」
百目鬼「何度も何度も危険に飛び込むような奴を好きになるわけ無いだろ!」
むつ「お前を守るためだろうが!」
百目鬼「俺は自分の事くらい自分で守れる!俺を守ろうなんてあいつはどうかしてる!!俺とマキ、どっちにナイフが刺さったらヤバそうかなんて考えなくたって分かんなろうが!!」
んぐぐっっ……確かに…
百目鬼「俺は守ってくれなんて言ってない!俺を守って傷を負うなんて馬鹿だ!消えない傷が残ったらどうすんだ!それならいない方がマシだ!!いなくなって清々する!」
むつ「はぁ!?お前結局マキが大事なんだろ!」
百目鬼「違う!俺はマキなんかどうでもいい!捨てたんだ!!」
この野郎ォオ!!言ってることめちゃくちゃじゃねぇーか!!修二がこんだけテメェーを庇ってんのに!修二が信じる〝マキを大事にしてる百目鬼〟は存在しないって言いたいのか!!
どたまカチ割って中身引きずり出さなきゃ話もまともにできねぇアホんだらなのか!!
こんなんじゃマキと……
!!
怒り渦巻く俺の心の中に、突然、草花の声のように微かで小さな囁きの雫が、波紋になって広がった…。
マキ『待って…』
百目鬼に対する怒りでいっぱいだった俺の心に響いた、マキの言葉。
それの意味が、一雫落ちるよう広がる。
マキ『今、むつが百目鬼さんの所に行って、話を聞いたとしても、僕はその話を聞けない、今はまだ、受け止めきれてなくて、何もできない…、苦しいんだ…』
竜巻の真ん中で静寂を見たように、怒り渦巻く中に、フッと、マキの言った意味と、修二が見ようとしてるものが、見えた気がした。
…ああ、そうか…。そういうことか…。
俺は、気持ちをぶつけ合えば何とかできると思ってた。…だけど、百目鬼のこの態度。あの弱りきったマキがこの場にいたら、きっと耐えられない…。
百目鬼と話してても、弾道を僅かにずらされたようなピントの合わない会話が飛び交ってる。百目鬼は答えてるようで答えてない、そして核心に迫ると、こちらを逆撫でするように話題を変えてる。
何で修二が、百目鬼はマキを大事にしてるって信じてんのか不思議だったけど、百目鬼は、修二やマキと同じなんだ、一点集中でぶつかっていかないと、話を有耶無耶にされちまうんだ…。
その時だった。
俺の横から手が伸びてきて、百目鬼の胸倉を掴んで思いっきり前に引き下げ、目と鼻の距離まで詰めて睨み付けた修二が驚くほど低い声で唸った。
修二「同じ過ちは繰り返さないんじゃなかったのか!!」
おでこや鼻が触れそうなほどの距離で、百目鬼を睨み上げる修二。その怒りは、奏一さんのようにゾッと背筋を凍らす。
修二「気持ちを伝えずにいたら、とんでもない誤解を生むだろ!いくら心の中で色々考えたって反省したって後悔したって、どんなに大事にしたって慈しんだって。計り知れないほどの愛情を注いだって、1度もそれを口にしてなかったら、伝わらないって反省したんじゃ無いのかよ!!」
百目鬼「ッ」
修二「百目鬼さんが人から理解され辛いの自分でも自覚してんだろ!どんなに優しくても、キレたら酷いこと言うし、友達なら謝れば済むかもしれないけど、恋人には、謝るより気持ちを伝えるべきなんじゃ無いの?!」
百目鬼の眉間にシワが寄った。完全にグサッとやられたみたいだが、修二はさらに腕に力を込めて逃がさない。
修二「百目鬼さん言ったよね!〝好き〟って言葉は、自分の気持ちが固まって、マキが聞き入れてくれるようになったら言うって、僕たちの前で言ったよね!!マキに〝好き〟って言ったの?!1度でも、ちゃんと言葉にしてあげたの!?
マキが1人であれこれ行動するのは、その言葉をマキが聞いてないからだよ!」
百目鬼「ッ!?」
百目鬼の驚いた顔は、修二の言葉の意味が分からないと言いたげに歪んでた。
百目鬼「何の関係がある!?何でも自分を犠牲にしたがる考え方と、好きだと言われないのと、何の関係がある?!」
修二「マキは百目鬼さんの気持ちを分かってない!分かってないのは百目鬼さんが教えないからだ!マキみたいに恋に臆病な子には何度も何度も言葉にして教えてやらなきゃ!!マキは百目鬼さんの心配を無下にしたけど、百目鬼さんもマキの気持ちを無視してる!」
修二の叫びは、百目鬼に確実に響いている。が、百目鬼は納得いかないって顔を歪める。
俺も、正直、何となくしか分からない。
好きだと言われると身を守るようになるとは思えない。好きだから身を呈して守ったわけで…
ただ、1つだけ思い当たるのは、修二は、俺や華南が〝ずっと修二を好き〟だと信じるまで、〝いつか別れが来る〟って思ってた。だから、信じさせるのに凄く時間がかかった、それまでに何度も何度も言葉と行動と体を使って教えて伝えて抱き締めて、そしたら、〝いつか別れても良いように〟って気持ちが無くなって、〝ずっと一緒にいるために…〟に変わった。…たぶん。そういうことなのかと思う…。
百目鬼「あのヘラヘラ笑う嘘つきのどこを見れば良いんだ!!」
修二「マキは百目鬼さんの前でヘラヘラしてばかりじゃ無いはずだよ!」
百目鬼「あいつは、俺に全部見せない!」
俺には、百目鬼の言葉が理解できなかった。
マキは、あんなに全身で百目鬼を好きだと訴えてるのに、何が嘘つきなんだ?
確かにマキはヘラヘラ誤魔化すし、頼ってこないし、1人で何でもやろうとする。
そんなマキが、あんなに百目鬼を好きだと言ってるのに、何が嘘なんだ?
修二「百目鬼さんはマキの何を見てるの!?」
百目鬼「見たくても見れない!本音はいつも隠すし、素直にならねぇし、直ぐにセッ…ッ…、ベッドで有耶無耶にする。そうなると俺は暴走する、また酷いことするんだ、縛って、泣かせて!俺はまたマキを傷つける!俺がどんなに大事にしようと、普通に付き合おうと、全部ぶち壊しちまう、まともに付き合うことができない!今度はマキが犠牲になる!笑顔になんか出来ない!泣かしてばかりだし、傷つけてばかりだし!マキは俺のためだと危険に飛び込む!…普通の付き合いなんか出来ない、マキは、俺と居る限り幸せになりっこない!!」
崩れるそうに前かがみになり、百目鬼が頭を掻きむしって身を起こし、ふらりと後ろに下がる。壁に背中が触れると、弱りきったその状態で、言い聞かせるように口を開く。
百目鬼「めんどくさいから捨てた。俺は、マキと別れた。だから、もう、関係ない…」
その瞳には、もう俺たちを睨む力はない。
この男は馬鹿なんじゃないだろうか?
言ってて辛いって顔してるのに気付きましない。
だが、理解はできないけど、…なんとなく、なんとなく、百目鬼が分かった気がした。
百目鬼は、確かに、マキを……
ーガンッ!!
突然、左背後の階段側から叩きつけるような音がした。
全員がそっちを見ると、そこには、修二にそっくりな顔なのに、修二のさっきの怖い顔なんかよりはるかに恐ろしい顔で怒りに震えた鬼の形相の、奏一がいた。
奏一「百目鬼…、お前、今なんてった?」
その場の空気が一瞬にして凍る。
奏一「〝めんどくさいから捨てた〟って言ったか?修二の友達の〝マキ〟を?」
ゆらっと煮えたぎる怒りが見えるように、奏一さんが百目鬼に向かって歩を進めると、凍りついてた修二が止めようと手を伸ばす。
修二「兄貴、待って…」
しかし奏一さんは修二をそっと制して、百目鬼をギロッと睨み付けた。
奏一「お前は、修二の友達にまで手を出したのか」
その睨み殺さんばかりの視線を、百目鬼は静かに受け止めた。
百目鬼「…そうだ」
奏一「テメェーはッ!」
奏一さんが百目鬼に飛びかかろうとした
その時。
修二「ウルサァァーーイ‼︎‼︎‼︎‼︎」
奏一さんの怒りが爆発したかと思ったら、怒りを爆発させたのは修二。
建物全部が震えたんじゃないかほどの大声に全員呆気にとられ、さらに修二が吠えた。
修二「兄貴も、百目鬼さんも、いい加減にしろ!!」
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