アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(番外編)純愛>♎︎狂愛
-
うわぁ〜〜、痛っそー。
流石、元朱雀特攻隊長様。威力が違げぇー。
奏一さんは、見た目は細くてスッキリ体型でも、その服の下はきっちり、ヤンチャ時代の筋肉とパワーが健在。
しかし、あの猛獣並みに大柄な百目鬼を1発で跪かせるとは…、今後も奏一さんを怒らせるのは止めよう。
百目鬼は、俺の時同様。避けなかった。奏一さんが大きく振りかぶった時、しっかり飛んでくる右手を見てやがったのに…
百目鬼は口の中を切ったらしく、血の滲む口元を拭い。これが当たり前のように言ってきた。
百目鬼「気が済むまでやってくれ…。俺は、殴られて当然の事をした…」
百目鬼は、どうやらまだ目が覚めない馬鹿のようだ。
奏一さんがブチッときて振りかぶると、修二がその手を止める。
修二「兄貴!待って待って!」
奏一さんはあのクールなルックスで非常にキレやすい。マジ逆らったら命が無い。
修二に止められて、奏一さんは、大きくため息ついた。
奏一「ハァー。…百目鬼、だから、違う。
さっきは、事情も聞かずに修二の友達ってことにカッとなったのは謝る。確かに、百目鬼とマキ君の問題に、俺の個人的な感情は関係なかった。すまん」
百目鬼が、奏一さんの言葉に驚いて目を見開く。百目鬼は、自分がマキと関係を持った事で、奏一さんが激怒したと思ったようだ。
奏一さんの凄いところは、自分が悪いと思ったら、謝れることだ。年下の俺や修二にも、間違ったら間違ったと訂正して謝ってくれる。
奏一「だが、今殴ったのは謝らない。あんたがあまりにアホで呆れた。マキ君が可哀想だ、マキ君の気持ちは、偶然だけど聞いた。あんな一途でいい子他にはいないぞ。
百目鬼、お前、自分で言ってる矛盾に気がつかないのか?そこまでアホなのか?あんたは、過去の過ちを繰り返してる。性癖の話じゃないぞ、あんたの頭ん中の話だ、居酒屋で俺に言ったよな、俺のこと、好き過ぎたって話。その話、まんまマキ君のことに当てはまってるじゃんか。俺には気持ちを言えなくて、修二には手が先に出て、気持ちを自覚した頃には信じてもらえず手遅れ。反省した結果、振り出しに戻っちまって、マキ君相手に黙りか?学習しろよ」
奏一さんは複雑な顔でため息ついて、百目鬼の腕を掴んで起こし、もう一度大きく息を吐いてから、強い眼差しで静かに言った。
奏一「俺とあんたの過去は置いといて、最善の方法を選べ。俺の仲間は俺がなんとかする、その方が早い。朱雀と溝呂木のことは俺も協力する。あんたはやるべき事だけやれ…」
百目鬼「だが!」
奏一「俺は!過去のあんたは許せない。その話しは変わらない。
あんたのためにやるんじゃない、マキ君の安全のためだ。マキ君には俺も修二も世話になった。それに、俺の仲間が間違った事してんなら、俺が正してくる。
だからてめーは、溝呂木片付けながら、そのとっちらかって何も見えてねぇ頭の中どうにかしろ!」
百目鬼「ッ!」
奏一「聞いてんのか!」
百目鬼「ッ…あぁ」
拳の背で胸を叩かれて、やっと返事をした百目鬼。奏一さんは、その拳から人差し指を立てて、怖い顔でキッと睨み、百目鬼の顔を指差した。
奏一「それから!、あんたの普通や理想をマキ君に押し付けるな!あの子はあんたより10歳も下の子供なんだぞ、今は多感な思春期なんだぞ。どんなに大人ぶったって子供は子供だ。甘えたい年頃だ!好きな人がいたら側にいたいし、触りたいし…、だ、抱き合ったりだってしたいだろ。…お前が19だった時はどうだった?…猿みたいに好きな人のことばっか考えてたんじゃないのか?…今みたいに大人な考えじゃなかったろ?」
と、奏一さんは、だんだんと口籠り始める。
「マキ君は19だぞ!お前みたいに枯れてないんだよ。あ、あれだよ、子供がオモチャ欲しがんのと一緒で、子供は、欲しいと思ったら我慢なんか出来ないんだよ。こ、子供には子供の事情があんだよ」
ん?子供子供多くねぇ?
ってか、なんか奏一さん顔赤いけど…。
って、マキ、奏一さんと一体何の話をしたんだよ。何で奏一さん、いい事言ってる風に子供だから性欲は仕方ない的な話をしてるんだ?まさか、俺たちに言ったみたいに、奏一さん相手に「恋人とは毎日SEXしたい♪」とか言ったのか?命知らずだな…
奏一「ゴホンッ!…それにだ!
マキ君の全部を知りたい、見せろって言ってるけど、あんた
本当に〝マキ君を見てるか?〟
マキ君が本当の自分を見せたとして、マキ君が求めたことに答えてやれるのか?」
修二と、同じ事を言う奏一さん。
だからだろうか?百目鬼の顔は歪みっぱなしで苦しそうだ。相当胸に刺さってるんだろう。
百目鬼は、眉間にシワを寄せたまま目をつむり、悲しそうに言った。
百目鬼「マキは、何も求めない。会えばすぐに触りたがるが、会わなけりゃそのままだ…」
奏一「本当に?」
奏一さんは確信を持った言い方をする。
百目鬼「…」
奏一「決めつけた目でマキ君を見て、大事なこと見逃してないか?」
百目鬼「…………」
言葉を失った百目鬼は、カクッと俯き拳を額に当て、何かを見ようと目を見開いて考えてるようだった。
その瞳は、動揺で揺れて混乱してる。
奏一「百目鬼、あんたは目の前のマキ君を見てたか?マキ君ではなくて、自分の理想を見てなかったか?
素直で、全部さらけ出してくれて、自分だけを見てくれて、自分の全部を受け入れてくれて、自分の愛情を全部受け止めてくれる人〝心穏やかに普通に恋ができる恋人〟」
百目鬼「…………」
そおいえば、やたらに普通とか言ってやがった。それに…マキといると嵐が来るとか…
ってか…
むつ「馬鹿じゃねぇーの」
奏一「むつ…」
奏一さんに窘められたが、俺は言ってやりたかった。
むつ「俺、修二と居ても心穏やかになんかならねぇーぜ、嫉妬なんかしょっちょうだし、いつもドキドキするし、イラつくこともあるし、喧嘩もするし、仕事したり離れてる時は早く会いてぇーし、夜はどうやってその気にさせようか毎日悩むし…」
修二「ちょッ!むつッ!」
むつ「もちろんそれだけじゃねぇよ、一緒にいりゃあ楽しいし、落ち着くし、癒されるし、元気になるし、かっこいいとこもあるのにすげぇー可愛いし…」
修二「ッ…」
むつ「それこそ嵐みたいに、毎日毎時間色々思うし感じるぜ。老後の爺婆じゃねぇんだからさ。違う人間と人間が一緒にいるんだ、意見も違えば考え方も違う。俺と修二は考え方とか正反対だし、華南は華南でちょっと大人ぶってるし、考え方が違えば色々ぶつかったり同じにはなんねぇーし、イラついたり、違うからこそ憧れたりするんじゃねーの?それこそそれが〝普通〟なんじゃねぇーの?」
百目鬼が間抜けな顔してた。
こいつ、大人なのに俺より馬鹿だ。
むつ「ってか、普通ってなんだよ。あんたそもそも普通じゃねぇーだろ」
修二「むつ…」
修二が俺を止めようとしたら、タイミングを見計らったかのように、わざとらしい明るい声が階段から響いてきた。
賢史「はいはぁーい。皆さぁーん。おまわりさんでーす」
百目鬼「賢史…」
おまわりだと言って現れたのは私服で髭面のモサっとした男。どうやら百目鬼の知り合いのようだが、あまりにチャラいので、奏一さんと俺が睨むと、ポケットから警察手帳を出して見せてきた。
確かに警察の人間だったが。あまりにも不真面目そうな風貌に、手帳を見ても疑わしい。
賢史「君たちね〜、夜中に大声はマズイよぉ〜、そりゃ、通報されもしますよ。話しのキリもいいことですし、一旦解散しませんか?」
賢史とかいう不真面目そうな男がチャらく言うもんだから、カチンときた。
むつ「良くねぇーよ!まだ、大事な事聞いてねぇー!」
って睨んだら、チャラケてた賢史の顔から笑みが消え、一瞬にして空気が変わる。その瞳は、闇に紛れてこちらを威嚇する獣。。
賢史「その大事なことを、もし、神が口にするとしても、聞くのがおたくらじゃ意味無いんじゃ無いか?」
こいつ、かなりちゃんと立ち聞きしてたな。
賢史「それによ、寄ってたかってウチの神君をイジメないでくれよ。やっと魔性の坊やから解放されて肩の荷が下りたのに…」
むつ「んだと…」
賢史「あの淫獣手懐けるのは相当苦労するぜ?簡単に押し付けないでくれよ。俺は、別れて正解だと思うぜ、獣同士で付き合って爪を立てあっても傷だらけになるだけだ」
むつ「てめぇー!」
賢史「神だけが悪いわけじゃないだろ?俺はむしろあっちに問題があると…」
百目鬼「賢史、黙れ」
百目鬼がドスの効いた低い声で賢史の言葉を遮り、賢史はそれを見て鼻で笑いながら、また不真面目なおまわりさんに戻った。
賢史「とにかく、大人組は各々やることもありますし、今夜は解散しましょうよ。お子様には悪いけど、くれぐれも目立った行動は控えるように。大丈夫。狙われてるのは百目鬼の彼女。女装した時のマキちゃんだから、色っぽい格好でウロつかなきゃ大丈夫でしょ、な、これ以上我儘言うなよ、大人は大人の事情があんだからよ」
そう言って、俺たちを百目鬼事務所から追い払った。
でも確かに、百目鬼の大事な言葉は、マキ本人に言ってもらわなければ意味はない。
今のマキに、今の百目鬼の言葉や状態を見せても、きっと、大きく改善しないだろう。
ただ、百目鬼は〝めんどくさい〟なんて思っちゃいないことだけは分かった。
だって、俺はしっかり聞いてた。
俺が「そんなに心配なら24時間自分で守れよ」って言ったら、百目鬼は…
『できるならやってんだよ!!』
って、言った。確かに言ったんだよ。
なぁ、マキ。
百目鬼の馬鹿は、
お前の側にいたいって
言ってたぞ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
721 / 1004