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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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驚きのあまり、言葉を失ってしまった。
僕たちのテーブルだけ、シン…と静まり返り、店内のどんちゃん騒ぎがやけに遠くに聞こえた。
鋭い瞳は僕を捉えたまま…
百目鬼さんの瞳は僕を写したまま…
僕の脳内はその視線の意味をグルグル考える。
誰を監禁したかったって?僕?
嘘だ…、え?え?
今、監禁って言った?なんか聞き間違った?
監禁って監禁のことだよね?閉じ込めちゃうことだよね?
僕を見てる?奏一さんじゃなくて?僕を見てるの?
あれ?〝監禁〟って…あっ!そ、そ、奏一さんの前でそんなこと言ったらまずくない??
僕の肩を抱く奏一さんの様子は、ふり向かなきゃ分からないけど、とても振り向けない。
視界の端に映る仁王立の賢史さんは、真剣な表情で百目鬼さんと僕を見ていて、どんな反応かいまいち掴めない。
そうこうしている間に、百目鬼さんの鋭い瞳がみるみる下がって光を失い、自虐的な笑みを浮かべて眉を曇らせ、強面とは思えないような今にもどうにかなってしまいそうに淡く切なげな眼差しで僕と奏一さんを見た。
百目鬼「な?ドン引きだろ?」
百目鬼さんの今にも消え入りそうな声にハッとした。
すぐに反応しなかったから、百目鬼さんは僕の反応を誤解しちゃったんだ!
マキ「違うよ!驚いたけど、そういう意味じゃない!」
百目鬼「フォローは要らない。俺の頭はイカレタままなのは事実だ」
マキ「違う!!」
ダメだ!折角見えた心の一部なんだ、絶対に掴んで見失わない!!今手を離せば、二度と掴むチャンスはない!百目鬼さんの心が壊れちゃう!!
マキ「引いてない!」
百目鬼「…いいかマキ。俺はお前が思ってるような男じゃない」
マキ「だから!」
百目鬼さんは心を閉ざそうとしてる。
奏一さんの前で、〝監禁〟って言葉を使って、地雷を自ら踏んで吹き飛ぶつもりだ。
百目鬼「お前がそう思うのは、俺が言わなかったからだ。俺がそう言わなかったから、そう思えてた。大事にされてるとか、幸せだとか…。錯覚だ。フラストレーション?やりたい事や言いたいことを言えだ?そんなことしたら、俺はお終いだ。
って、そんなことを考えちまってる時点で終わってる。
俺は変われなかった、どんなに取り繕ったって頭の中は変わらない、どんなに普通にしてたって、俺の頭の中は、お前に首輪付けて、ベッドに縛って閉じ込めておきてぇって考えてた。お前を監禁してやりたかった。閉じ込めて、誰にも見せないようにしたかった」
マキ「…誰にも?」
百目鬼「…何度も何度も賢史にちょっかい出されやがって…、何度鎖で繋いでやろうとしたか分からない」
百目鬼さんから吹き出す言葉に驚きを隠せない。百目鬼さんがそんなこと思ってたなんて思いもよらなかった…
だって…、気にかけてくれてはいても、決して縛るような真似はしない。嫉妬したりしてくれてるのは知ってたけど、そこまでなんて…
時々爆発する独占欲も、嬉しくてたまらなかったのに…
百目鬼「今だって…」
そう言って、僕の肩に回ってる奏一さんの手ゆ見据えた。
えっ?!嘘でしょ??
まさか奏一さんに嫉妬してるとか言うの?
え?違うよね?奏一さんだよ?
百目鬼さんの大好きな、好きで好きで仕方なくて好き過ぎたって言ってたお相手の奏一さんだよ??
瞳を瞬いてる間に、百目鬼さんは片手で顔を覆い、自分の中の何かを押さえつけようと必死だ。
マキ「……嫉妬?…してるの?」
百目鬼「…」
マキ「…奏一さんだよ?」
百目鬼「…」
どうやら、奏一さんが僕の肩に手を回してるのを…、奏一さんが僕を抱き寄せてることで間違いないらしく、百目鬼さんは歯軋りした。
信じられない…。
でも、驚いてる暇はない…。
心は驚きに右往左往しながら、今の状態をなんとかしなくてはと頭はフル回転。
何か言わなきゃ、百目鬼さんの心は閉じてしまう。百目鬼さんの心を、溢れた細い糸を掴み損ねるわけにはいかない。
マキ「…監禁して良かったのに」
僕の一言に、百目鬼さん歯軋り激怒した。
百目鬼「お前馬鹿だろ‼︎‼︎‼︎」
その場がシンと静まり返る。
聞いてないふりしていたお姉様方も、さすがにこれは聞き流せない。
百目鬼「お前はそうやってッ!、俺が抑え込んでるものをあっさり肯定する!良い訳ないだろ!!お前は何も分かってない!!修二がどれほど酷い目にあったのか!俺がどれだけ後悔してるのか!お前は何も分かってない!」
百目鬼さんの苦しみ
百目鬼さんの罪
僕は何も分かってない訳じゃない。
百目鬼さんは、僕を蝶のように脆いと言ったけど、脆いのは百目鬼さんの方。
その大きくて立派なタテガミの下に隠した、小さく震えるその身は、いつもいつも怯えていた。
その震える背中に触れさせて、きっと、僕がその震えを止めてあげるから。怯えて威嚇しても、その心の寂しさはいつまでも埋まらないよ。
僕に抱きしめさせて、その立派なタテガミに隠した小さなその心を…、僕の愛しい愛しいプードル。
〝ライオンの着ぐるみを着たティーカッププードル〟
マキ「百目鬼さん。百目鬼さんは、同じことがしたい訳じゃないでしょ?」
百目鬼「当たり前だ!!あんなこと二度としない!!」
優しく見つめても、百目鬼さんは僕の瞳から逃れようとする。
目の前にいる百目鬼さんに手を伸ばすけど、百目鬼さんは僕の手から身を引く。
マキ「僕を監禁するのは簡単だよ」
百目鬼「だから!!そんなことをできる訳ないだろ!?」
そう、簡単だ。
マキ「道具なんか要らない、一言で良い」
百目鬼「だから!!」
マキ「『そばにいろ』で、足りる」
百目鬼「だからッ!!言える訳ねぇだろ!!」
百目鬼さんの感情が溢れ出る。
百目鬼さんの本音が溢れ出る。
そのマグマの中に押し込めた、滾った心が、今噴火してドロドロと灼熱に身を焼きながら僕の前にぶちまけられる。
百目鬼「一度でも言えば、俺は我慢できない!我慢してる時だって我慢できてねぇのに、その後コントロールできる訳ねぇーだろ!死にてぇーのかてめーは!!」
マキ「幸せいっぱいの腹上死?男としては理想の最後だね」
百目鬼「冗談言ってんじゃないんだよ!!」
マキ「僕も冗談言ってるつもりはないんだけど」
百目鬼「ッ!!話にならないッ!!お前はそうやって身投げして自己犠牲してるだけだ!!」
言葉は怒りに満ちているのに、その瞳は悲しみでいっぱいじゃん!
絶対にその瞳を見失わない!
やっと見れたその本音を、僕は見失ったりしない!
逃げ腰の百目鬼さんの胸ものを鷲掴み、僕は心の限り叫んだ。
マキ「好きな人と一緒にいることの、どこが自己犠牲なの!!」
百目鬼さんは逃れようとしたけど、僕はその手をはなさい。
百目鬼「お前は俺に夢見てる。俺はそんなんじゃない!もっと醜くいて汚い!!
お前はDVにおける共依存と同じ状態なんだ!俺に暴力振るわれながら、優しいところもあるなんて錯覚してるんだ!!」
マキ「僕は!暴力振るわれたことなんか無い!!」
離さない!
絶対にこの手を離さない!
その心を逃しはしない!!
百目鬼「振るわれただろうが!!言葉も立派な暴力だ!!」
マキ「分かってんなら直せば!?百目鬼さんの言葉はそのまんまの意味の時の方が全然少ない!賢史さんが言った通り、三回転半捻ってる!」
百目鬼「なんだと!!」
マキ「僕は知ってる!みんな知ってる!!少なくともここにいる人はみんな百目鬼さんが口は悪くても優しいこと知ってる!
それに、矢田さんなんか、いつも怒られてても、百目鬼さんは怒鳴った分だけ心配してくれてるだけだって本当は優しいんですって言って回ってる!!」
百目鬼「ッ…あのバカ…」
マキ「僕と別れるって言った時の言葉も、全部本当は心配から来てる言葉だって知ってる!僕が勝手なことばかりするから、探偵の仕事が危険が付きまとうから、馬鹿なことばかりした僕を遠ざけることを選んだんでしょ?危険から遠ざけるために」
百目鬼「…お前の頭はどおなってるんだ?人の悪いところを無視してばかりで、悪いところを見ようともしない」
違う。
僕は、人が見失った気持ちを見つけたいだけ…。
百目鬼さんの胸ものを握る手に一層力を込めて、百目鬼さんを見上げた。
マキ「じゃあ、僕に言った言葉は全部本心なの?」
百目鬼「…」
マキ「修二の代わりにしたけど、面倒くさくて手のかかる子供だったから、面倒見きれなくて捨てたの?」
百目鬼「…」
マキ「僕のこと…そうゆう風に見てた?…僕と出会ったのを後悔した?さっきは監禁したいって言ってくれたけど、それは修二の代わりとして?修二を忘れるための道具として?」
僕の事、大事にしたいって言ってくれた事すらも…
僕の本当の姿を見たいと言ってくれた事も…
あの星空の下の幸せも…
マキ「僕は、百目鬼さんが好きだよ。一途なとこ…、不器用なとこも 、優しいところも、必死に努力してる姿も。僕を監禁したかったって言うなら僕は嬉しいよ。独占したいって事だよね?独り占めしてくれるなら、そんな嬉しい事無いんだよ。そのやり方で悩むなら、一緒に考えればいいじゃん。百目鬼さんは色々言うけど、僕からしたら、百目鬼さんは僕の欲しいもの全部持ってる人なんだよ」
貴方のくれた優しい時間も…
僕の信じた愛された時間も…
マキ「僕は、百目鬼さんと付き合ってる間。もっとそばに行きたかった、会いたかったし、いっぱいイチャイチャしたかったし、もっともっと独占して欲しかったし、独占したかった。僕だって百目鬼さんを僕のものにしたかった、百目鬼さんの1番になりたかった。独り占めしたいよ」
僕だって、百目鬼さんと同じ。
マキ「それでも、あの時言った言葉の方が真実?僕と付き合ってる間、百目鬼さんは苦痛で仕方なかった?面倒くさかった?」
百目鬼さんに必死にしがみつき、
その瞳に真っ直ぐに…
マキ「僕は……要らない?」
ねぇ、僕を見て!
僕は脆い蝶じゃ無い!
百目鬼さん本当の声を聞かせてよ!
百目鬼「……………」
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