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〔裏番外〕狂愛??<純愛3
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ープルルル、プルルル
矢田「はい、こちら百目鬼探偵事務所です。はい、居まっス。今代わりやす」
相変わらずふざけた電話対応をする矢田が、保留音を流して俺を呼んだ。
矢田「百目鬼さん!電話です!」
百目鬼「…。誰からだ」
矢田「あっ…、す、すいやせん、聞いてません…。あっ!女の人です!」
やれやれ、何年電話番やってんのか…。
タダでさえ、奏一に殴られて顎が痛いのに、頭まで痛くなって来る。
今に始まったことじゃないから仕方がない、相手が分からないが取り敢えず電話に出た。
百目鬼「お待たせしました。お電話変わりました百目鬼です」
姫香「百目鬼さん!お久しぶりです!姫香です!お忙しいところすいません、今お時間よろしいですか?」
百目鬼「ああ、姫香さん。こんにちは、どうされましたか?」
姫香さんは、半年くらい前の依頼者で、ストカーの特定を依頼してきた女性。
式場に乱入したストーカーを取り押さえ、彼女は無事結婚。その時マキがストーカーが投げたナイフを素手で払い落とすという危険な真似をした為に、俺はマキを引っ叩いた。
思えば、あれからマキとの関係がこじれた。
姫香「その節は大変お世話になりました。本当にありがとうございます。母の手術経過も順調で、皆さんのおかげで今とても幸せです」
百目鬼「それは良かった。みんな気にしていたんですよお母様のご様子」
〝幸せです〟そう言われると、なんだかズシリと心が重たくなる。
俺は、どうしてマキを笑顔のままにしてやれなかったのか…。
最後の悲鳴混じりの泣き叫ぶ声が、未だに耳の中に響いてる…。
姫香「あの、お仕事の依頼じゃないんですけど、マキちゃんに連絡を取りたいのですが、構いませんか?」
百目鬼「あ、申し訳ありません。マキは事務所を辞めました」
姫香「えっ!!そうなんですか!!…あー、そうですかぁ…、どうしよう…。あの、連絡先を教えてもらうことって…」
百目鬼「それは……、そぉ…ですね…。失礼ですが、マキにどのようなご用件でしょう」
姫香「マキちゃんに連絡取りたがってる人がいて、大事な預かりものしてるのに、マキちゃんが電話に出てくれないって言ってまして、取りに来てあげて欲しいって言いたかったんですけど…」
百目鬼「預かりもの?どんなものですか?」
姫香「あの、秘密厳守でお願いしたいので、他の人には内密にお願いしたいんですけど…」
百目鬼「はい、もちろん。秘密は厳守します」
姫香「マキちゃん、恋人への贈り物を買ったんです」
恋人への贈り物?!
姫香「代金も支払い済みで、かなり高価なものなんです。だけど『もう、いらなくなったから処分して下さい』って言ったらしくて、その後電話に出てくれないそうなんです」
もう、いらなくなった…
ってことは、まさか、俺へか??
いらなくなったって…。もしかして、別れたから?
姫香「私、術後の母が落ち着いてきたので、マキちゃんに勧められたプレゼントを旦那様に買おうと思ってお店に行ったんです。そしたら、そこにいた店員さんに声をかけられて、以前妹さんといらっしゃいましたよねって。前に妹に変装したマキちゃんと入ったお店で、店員さんが私たちのこと覚えてて、妹に商品を渡したいって。あの…不躾ですが、マキちゃん…恋人とうまくいってないんですか?」
一体何を買ったんだ。
子供の癖に…お金なんか使うな。
百目鬼「…えぇ、別れてしまって…」
姫香「ええ¨ッ!!」
電話の向こうで、自分のことのように悲しそうにオロオロする姫香さんは、何度も〝そんな、どうしよう〟って繰り返していた。
姫香「百目鬼さん!なんとかなりませんか?」
百目鬼「えっ…」
姫香「マキちゃん、その恋人さんのこと、凄く凄く好きで、めちゃくちゃ幸せそうな顔して笑うんです!それにあの腕時計は…」
百目鬼「腕時計?」
もしも、この言葉を聞くのが、むつや奏一に殴られる前だったら、知らん顔したかもしれない。捨てた方がいいと言ったかもしれない。
だけど、今の俺には、大きな衝撃の中に、嬉しさが滲んだ。
俺は、姫香さんに頼んで、そのお店に案内してもらった。
本人は海外に行ってていないとか、色々言ってみて、その腕時計を一目見れないか、あわよくば受け取れないかと考えながら、店員に話を聞くために店に向かった。
第三者の俺にそう簡単に品を見せてくれないだろうと思っていたが、俺の名刺を差し出すと、名刺の名前を見た店員は、「あっ!」と声を上げた。
店員「百目鬼神様ですね、あちらのソファーにお掛けになって、少々お待ちください」
店員は、奥に引っ込み、小さな箱をトレーに乗せて現れた。
黒の光沢のある高価そうな箱。
店員は白い手袋を付けていて、俺たちの座るソファーの前のガラス張りのローテーブルに置くと、そっと丁寧にその箱を開けた。
そこには、俺の予想もしない物が…
百目鬼「これは……、まさか……」
そこには、色が暗めに抑えてあるが、美しい青色の文字盤の腕時計が収まっていた。
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