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〔裏番外〕狂愛♎︎<純愛16
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ジュピター色の綺麗な瞳から、はらはら溢れる美しく悲しい涙は、俺だけのものだった。
誰にも頼って生きないと、強い思いで今までは涙を止めていたマキ。魅惑的な不思議なジュピター色の瞳から、溢れて止まらないのは、透明で美しいまでに純粋な心そのもの。
マキが泣いている。
また、泣かせてしまった。
普通の人間はここで、その涙に胸を痛め拭ってやるのかもしれない。
だが、俺は普通じゃない。
マキの純粋な涙を見て、1番に感じる感情は嬉しさだ…、マキが泣くほど俺が好きだというのが見れて喜んでる俺がいる。
そして同じくらい。苦しい…。俺はまたマキを泣かせた。しかもこんな風に、悲しい泣かせ方をして喜んでやがる。
さらに、マキが泣いてるこんな状態で、冷静な部分の俺が気にしてるのは、泣いたマキをみんなの前に晒してることだ。マキのヘラヘラする以外の内側の顔を…、俺以外の奴が見るなんて許せない、見んじゃねぇ!ムカつく!
マキが泣いてるのに、俺の頭の中は自己中極まりない…
拳を強く握りしめ、その手を伸ばそうか迷いながら、自問自答を繰り返し苦しんで苦しんで歯を食いしばりながら言葉を絞り出した。
百目鬼「どうしてお前は、狂ってる俺を好きだなんて言うんだ?」
胸が締め付けられる。
悲しいのと、嬉しいのと、イラつくのと、ごちゃ混ぜの感情でマキを睨む事しかできない。
マキは、涙をいっぱい溜めたその瞳を真っ直ぐに、素顔すぎる表情で迷いのかけらもなく言いやがる。
マキ「…百目鬼さんは、狂ってなんかない」
俺の過去の行いを引き合いに出しても、マキは〝それはそれ〟〝今は違う〟と言い切りやがる。
マキは俺と出会ってから今日まで、俺を狂ってると思ったことはないと言い切る。
自分が知ってるのは〝修二を好きすぎて、ちょっと過剰反応してただけ、修二を守りたかったがゆえ、それは修二がそう感じてるから、それが真実〟と言い切った。
俺は、奏一と出会って、その立派な考え方や厳しくも優しい性格に惚れた。そして、その弟の修二は儚そうなのに芯の通った強い気持ちと懐が深くてなんでも許して受け入れる、そんなところに惚れた。
マキは、そのどちらをも持っている。
百目鬼「お前らはおかしい…」
マキ「百目鬼さんは、どうして矢田さんを雇ってるの?」
百目鬼「は?」
目を丸める俺に、マキは優しく微笑んだ。
失敗ばかりする矢田をどうして雇ってるというから。矢田は矢田なりに頑張ってると言ったら、自分をそういう風に見てあげてと言ってきた。
マキはいつも、俺が何十年も悩んだことを、簡単に整理整頓してしまう。
マキ「変わりたいっていうなら、変われた自分は認めて伸ばしてあげなきゃ」
百目鬼「俺は、変われてない、お前を泣かせて喜んでた!」
マキ「…百目鬼さんは変われてるよ。僕は、狂ってるなんて思ったことない。僕が〝修二みたいに狂う程愛されたい〟なんて言ったから、混乱しちゃったんだよね。ごめんね。アレは、一途に愛されてて羨ましいって言いたかっただけなんだ、何年も真っ直ぐに、冷めることのない愛情が、羨ましいって……、ごめんね。忘れていいから…」
あんな強烈な告白を忘れられるか!!
マキ「百目鬼さんの目指す恋愛の形を邪魔するつもりはなかった。ただ、僕は羨ましかったから、ちょっと勿体無いなと思っちゃったって…。百目鬼さんが今までキレてたのは、ほとんどがフラストレーションだよ」
「忘れて」とか、「邪魔するつもりはなかった」とか、「自分じゃダメだった」とか!!
違うだろ!!お前は俺にはもったいないっつてんだ!!
マキ「やりたい事や、言いたいことを我慢して、ずっとストレスを溜め込んで、1番譲れないものすら諦めちゃう。自分は乱暴な人間だって決めつけて。それに僕と居たから…」
悲しそうに一瞬目を伏せたマキは、自分と居たから駄目だったと涙をこぼす。
お前と居たから…?違う!
お前は分かってない!!
お前と居たから俺は…
俺は…
カワレナカッタ?カワレナカッタのか?
変わったと言えないことが、マキと居た時間の否定になるのか?
マキと一緒にいて俺は変われなかったのか?
マキのおかげで穏やかな時間も出来たとマキに言ってやれないのか?
マキが居たからだって…
マキ「今は、せっかくいい感じに変われてるんだから、自分をこれ以上虐めないでよ」
百目鬼「何を言って…」
マキ「百目鬼さん。百目鬼さんは変われてる。優しく笑えるようになったし、怒鳴るの減ったし、穏やかな時間も増えた、SEXだって今までより落ち着いてきてたでしょ?」
百目鬼「いや、落ち着いてないだろ、最後は縛って滅茶苦茶なやり方で気絶させた」
マキ「…百目鬼さんこそ、僕のこと…無視してる」
百目鬼「は?」
マキ「僕は、幸せだったって言ってるし、僕は百目鬼さんと出会って、甘やかされる心地よさを覚えた」
百目鬼「お前が俺に甘えたことなんかない」
マキ「…僕は、普通を知らない」
確かに…、マキは、人に頼ったり本音を見せることが苦手だった。そういったことを嫌ってるようにすら見えた。
マキ「百目鬼さんと出会えて良かったし、好きになって良かった。付き合えた時間は、一生の宝物だし、僕は大事にしてもらった」
百目鬼「お前は、自分の幸せを低く設定しすぎだ、もっと…」
マキ「その言葉そのまんま返すよ」
マキは、人に説教するときだけ自信満々なのに、自分のことは〝なんか〟あつかい…
マキ「僕の大事な時間にケチばかりつけないでよ、百目鬼さんにとって苦痛だったかもしれないけど、僕には贅沢で、とても大事な時間だったんだ」
それもこれも、マキと一緒に居て、良いことがあった、俺もお前と居れて良かったと言わなかったから…。俺は、マキを大事にしたくて変わりたくて、そればっかり気にしていたから、マキが自分といると俺が苦しんでると思っちまってるのか…
苦しくはあった…、でもそれもこれも原因は苦痛だからじゃない、その反対だ…
いつでもそばに置きたかった。鎖で繋いで俺の腕に閉じ込めてしまえば、きっと楽になった…
百目鬼「俺は、お前といて苦痛だったわけじゃない…」
マキ「…じゃあ、百目鬼さんにとってどんな時間だった?」
涙の残る瞳で、俺を見つめるマキ。
マキに、なんて言えば伝わる?
まさか、そのまま言うわけにもいかない…
百目鬼「ッ…それは…」
マキ「…もう、気を使う必要ないよ。別れちゃってるんだから。百目鬼さんには、正直な話をして欲しいな。
…百目鬼さんにとって、僕と居る時間はどんな時間だった?ほとんどベッドの上だったね♪フフッ。SEXばっかり強請られてうんざりだった?終わったらいつも落ち込んでたもんね。忙しいのに僕の相手は大変だったでしょ。それも、僕が修二の友達だから、無理して合わせてた?」
百目鬼「修二修二うるさい」
直ぐに修二だ奏一だと…
他の男の名前ばかり言いやがって…
マキ「…僕はね。百目鬼さんと一緒に居られる時間は幸せで温かくて嬉しかった。その時間が待ち遠しすぎて、もっと一緒に居たかったって思ってた。フフッ♪、僕ね、百目鬼さんの家に住み着くつもりだったんだよ♪」
百目鬼「は?」
マキ「大学への入学で一人暮らしするために引っ越したのに荷ほどきしないで、いつか百目鬼さんの所に転がり込んじゃおうって思ってた♪、フフッ♪僕はね、もっと百目鬼さんと一緒に居たいって思うくらい、百目鬼さんとの時間は大好きな時間だったんだ」
マキが荷ほどきしなかったのは、直ぐに消えれるようにしてたからじゃないのか?
俺はてっきり…、身軽でいようとしてるのかと……。
百目鬼「………俺にとって、……お前との時間は……騒がしい時間だった」
お前といるといつも心の中は嵐のようで…
百目鬼「賑やかで…いつも嵐のように落ち着きのない時間だ…」
日に日に、憎らしいくらい可愛くなりやがる…、こっちは誘惑にたえたり、理性を保つので精一杯…
百目鬼「…ほっとけなくて…目が離せない…」
マキ「…」
百目鬼「可愛いと思っちまったが最後。その不思議な瞳に魅了されて、誘われるままタガが外れて、お前を貪った…」
マキ「…ごめんね」
百目鬼「……お前は、掴み所が無くて、付き合ってる間も、ひらひらひらひら蝶のように舞ってる。掴んだら、羽を捥いでしまいそうだ…」
マキ「僕は、そんなヤワじゃない」
百目鬼「俺はお前を傷つけてばかりだ」
マキ「…僕は、傷ついてばかりいない。本当は傷ついてないって言ってあげたいけど、今日は言わない。僕が傷つくのは、百目鬼さんが傷つく時だ」
百目鬼「は…?」
マキ「百目鬼さんが僕と居て、傷ついたり苦しんだりした時。僕が好きになったりしなかったら、僕以外の誰かなら、修二や、奏一さんなら百目鬼さんは幸せになれたんだって思う時」
百目鬼「おい、修二や奏一の名前を出すな、2人は関係ない」
マキ「……」
百目鬼「ッ…悪い。俺に想われるなんて、2人の耳に入ったら迷惑になる。誤解されたら困るからはっきり言っとく、煩い番犬に噛み付かれる」
マキ「…嫉妬深い番犬だからね」
百目鬼「……、俺は、あの2人には、もう恋愛感情は無い」
それを聞いた瞬間、マキは心底驚いたと言いたげな表情で固まった。
何故そんな驚く??!
…特別な存在ではあるが…、もう、手を出そうだなんて思わない。2人にはやっぱり笑顔でいて欲しい…
マキにはっきり伝えたが、マキはそれでも疑ってるような難しい顔をしていた。
色々説明してみたら、なんとか飲み込んだみたいで、俺は、それも疑われてたみたいだから、ハッキリ言ってやる。
百目鬼「とにかく、俺は同時進行できる程器用じゃない」
マキ「同時進行?」
百目鬼「お前と付き合ってるのに、修二や奏一の事なんて、そんなことできるわけないだろ、俺は〝不器用〟だからな」
マキ「怒った?」
百目鬼「…それにそんな事したら、浮気だろ!」
…ん?そういえば、やたら奏一にこだわった時期があったな、まさか…、まさかとは思うが、マキと付き合いながら俺が奏一を好きだと思ってたりしないよな?
マキは、それまで饒舌に話していたのが一変、シドロモドロ慌てふためく。
そうなってくると、アレの意味も変わってくるんじゃないか?
百目鬼「奏一がお前と2人で話したことがあると言ってた、まさかお前…」
俺と奏一をくっつけようとしやがったのか?
至近距離で睨み下ろすと、マキはシュンと小さくなりながらアワアワしていた。
百目鬼「さっきまでの饒舌さはどうした」
マキ「ふえ……ぇ…」
百目鬼「どうなんだマキ」
詰め寄ると、マキは瞳がオロオロしながら、ヘラッと笑いやがった。
マキ「…えっと♪、奏一さんが…修二とのことでぇ色々悩んでたみたいで…」
百目鬼「ほぉ…」
嘘をつけ嘘を…。
マキ「…アドバイス…を…」
そんで何が目的だった!!
ギロッと睨み下ろしながら顔を近づけると、それ以上逃げられないマキが、瞳を潤ませながら、唇を噛み締めて、怯えたようにビクビクしながら言葉を吐き出す。
マキ「…ぁ…えぇっとぉ…、あの時、僕とはあまり会えなかったでしょ…、百目鬼さんは奏一さんと頻繁に会ってたから…」
声が震えてたマキは、それをごまかすみたいに、またしてもへらっと笑って可愛らしく取り繕った。
マキ「テヘ♪ヤキモチ焼いちゃった♪♪」
ありえない!!
俺と奏一だなんて!!
百目鬼「俺が奏一を選ぶと思ったのか」
マキ「…ぁー…選ぶっていうか…、初めから…」
遠慮がちな小さな声が呟いた言葉は、俺の中に雷を落とす。
百目鬼「初めから!?」
マキ「…僕は下の方…でしょ?」
意味がわからない!!
なんでマキが初めから下なんだ!?ってかそもそも下ってなんだ!?
なんで比べるんだ!!
それに奏一は駄目だろ!ここまで来て俺がまだ奏一をなんてことになったら、俺はこの数年なにを反省したってんだ!
百目鬼「お前、常識で考えろ。俺が奏一を選ぶなんてありえないだろ」
マキ「常識は関係ないよ、百目鬼さんの気持ちは、僕より奏一さんの方がいいでしょ?」
百目鬼「ふざけた話をするな」
マキ「僕は…ふざけてない…」
本気で言ってたらそれはそれで問題だろうが!!
マキ「…僕は…、百目鬼さんに大事にしてもらったって思ってる…、その気持ちは信じてる…。でも、一度も百目鬼さんが僕をどう思ってるか言ってくれたことなかったから…」
百目鬼「ッ…」
マキ「…僕ね。…例え奏一さん相手でも、百目鬼さんを渡したくないって思った。嫉妬しちゃったんだ」
その瞳は怯えたように逸らされて、悲しそうに揺れている。
マキ「百目鬼さんは僕と居ても楽しそうじゃないし。でも、奏一さんは素敵な人だから、奏一さんの方がいいんだよねって思っちゃって…。だって奏一さんって厳しいけど優しいし、怒ると怖いけど、怒った理由もちゃんと説明してくれて、納得のいかないことは最後まで話し合ってくれてるし、あんな風に誰かととことん話したの僕初めてで…」
百目鬼「グ…」
〝奏一さんの方が百目鬼さんもいいでしょう?〟
と、言われてるはずなのに、褒め言葉で埋め尽くされた奏一への評価に、マキが
〝奏一さをと方が良い〟
と言っているようにも聞こえてならない。
マキは自分が〝嫉妬〟したことを口にしたのが恥ずかしくて、それを誤魔化すみたいにペラペラと奏一を褒める。
いや、分かってる。
奏一は俺よりよっぽど頼りになるし考え方も大人だ、クールでカッコ良い一面と意外に短気だったりたまに抜けてるところが可愛いのも、マキに言われなくても分かってるつもりだ。
だがどうしてだろう。
マキの口から奏一の褒め言葉が出るたびに、この煮えるようなグツグツと湧き上がってくるものは…
マキの口から…奏一の名前を聞きたくない…
奏一「どうして俺の話になってるんだ」
頭上から、奏一の声が降ってきて、目の前のマキの頭が、奏一の手でくしゃくしゃっと撫でられた瞬間。
俺を見て怯えて揺れていたマキの瞳が、奏一を見つけてキラキラ輝き、それまで強張っていた表情は、満開の花のようにパァアッと明るい笑顔に変わった。
マキ「奏一さん♪♪」
ーズキッ!!!!
その瞬間。
胸を刺されたみたいな激痛に襲われた。
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