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(番外編)純愛>♎︎<狂愛3
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ープルルルル♪プルルルル♪…
出ないなぁ…。
事実確認のため、清史郎さんの携帯にかけたけど、清史郎さんは出なかった。
一応前に清史郎さんも実父は体調が思わしく無いと言ってたけど…。僕が連絡して出ないことなんか無かったのに…。今までは瀧本の件で仕事中無理してたのなか?
百目鬼さんには、実家に行くって電話しようかメールにしようか。でも、夜までに帰れるか分からないし…。忙しいだろうけど。
声…聞きたいな…、百目鬼さんのアノ耳の奥を擽る低音ボイス聞けたら、この憂うつな気分も良くなるし、うん♪電話にしよう。
ープルルルル♪プルルルル♪…
なんかちょっと緊張するな。僕からかけるとか無かったから…
ープルルルル♪プルルルル♪…
…百目鬼さんも出ないや。仕事中だし、うん、忙しいんだよね。メールで済むのに、声が聞きたいなんて、僕も末期だなぁ。
百目鬼さん忙しいし、昨日の半休も無理やり取ったのかな?…メール入れとこっと。
えっと、〝実家に行く事になりました。今晩は帰れるか分かりません。また連絡します〟っと、送信。
ー。
実家は、馬鹿デカイ日本家屋、僕が家出した時と何一つ変わってなかった。
実家に着くまで数時間、百目鬼さんから折り返しの電話は無く、メールの返信も無い。元々百目鬼さんの手が空いた時に来た電話やメールに返してただけだから、いつの時間なら百目鬼さんの手が空くか分からない。
…残念。
僕は、憂うつなまま実家の門をくぐる事になった。
別に実家が嫌いなわけじゃ無い。お世話になった所だし、成一さん以外には何もされたこのはない。
ただ、僕ではなくなる場所ってだけ。
〝茉爲宮優絆〟としての僕は、〝いい子〟なだけ。
だから、百目鬼さんに、「マキ、早く帰って来い」って言ってもらいたかっただけ。
玄関には、僕に電話した秘書だと名乗る男性が待ってた。子供の頃は、お手伝いさんがいっぱいいたと思ったけど、今日の屋敷には人の気配は無かった。
秘書「お待ちしてました。茉爲宮優絆様。社長がお待ちです」
電話の時と同じ丁寧な言葉遣いの秘書は、僕を屋敷に上げ、奥の部屋に案内した。
僕は、行事の時以外ずっと離れの部屋にいたから、主屋を懐かしいと思うことは無くて、ただ、変わらずある庭の風景だけが、忘れていた思い出を鮮明にした。
一人で過ごした幼少期の思い出ばかり…
当時は何も思わなかったけど、今は、あの時は百目鬼さんと出会う前だったんだと寂しくなる。
秘書「こちらでございます。人は払ってありますので、ゆっくりとお話しください」
開けられた襖の向こう側に、介護用ベッドでくつろぐ、鼻に管を通した白髪交じりの痩せた男性がいた。
家出をしてから7年近く会ってないし、〝お父さん〟と呼んだことは一度も無い、僕にとっては〝親戚のおじさん〟と教わって育った相手だから、遠いい存在だ。
マキ「…」
実父「随分探したよ、優絆」
マキ「お体の具合はいかがですか?」
ヘラッと笑って丁寧な言葉遣いで、茉爲宮優絆に戻る。もう、捨てたと思った僕になる。
探してたと言われても、そうなんだ、としか思わない。
実父「…綺麗になったな、マリアの生き写しのようだ…」
それ、息子に言う言葉としては不適切だよ。
僕は、この顔が好きじゃない。この顔だから、この人も清史郎さんも僕に優しいんだと思えて仕方ないから…。
少しだけ、どこで何してたのか聞かれたけど、答える気はないのではぐらかした。
彼は深くは聞いてこなかった。そして、はなしはじめる、それが本題だったんだろう。
実父「私は長くない。家に戻ってきてほしい。残りの時間側にいてくれないか、働き口ならある。会社に直ぐ勤務できるようにしてある」
まあ、そんな話もあるだろうと思ってた。
マキ「すいません、私は家には戻れません」
清々しいぐらいきっぱりと、笑顔で断ったが、まぁ、簡単には頷かないよね。
実父「会社を、成一に継がせたが、経営が傾いてる。兄を助けると思って戻ってきてはくれないか」
マキ「成一さんは、私を嫌いですので嫌がると思いますよ」
実父「成一には、話は通してある。お前と和解して、一緒に会社を立て直すと約束してくれた」
うっそだぁー。
心の声が胸の中でこだます中。僕は爽やかな笑顔を崩さない。
マキ「そうだったんですか。仲直りできるのは嬉しいですが、残念です。私は戻りませんし仕事は継ぎません。育てて頂いたご恩はお返ししたいですが、私はお力にはなれません」
実父「…私を、恨んでいるからか?」
マキ「いいえ、育てて頂き感謝してます」
実父「なら…」
マキ「お見舞いや親孝行ならいくらでもしたいですが、実家に戻ることと会社に入ることは出来ません。私はなんのお役にも立てません」
僕の帰る場所も、生きて行く場所もここじゃない。僕の帰る場所は、百目鬼さんの居るところ。
もう決めたんだ、百目鬼さんの側にいるって。もう少し早くこの話をされてたら、この家に戻ったかもしれないけど、僕は百目鬼さんと仲直りして、側に居ても良いって言ってもらったんだ。
だから…帰るんだ…
実父「…そうか」
食いさがるかと思ったけど、彼は小さく息を吐いただけで、残念そうに俯いた。
実父「残念だが、無理強いは出来ない。お前には、随分苦労させた…。すまない。だが、老い先短くなると、出来なかったことが悔やまれて仕方なく魘されることがある。お前には苦労をかけた、2、3日で良いから、私と一緒に過ごしてくれまいか」
え?
確かに、この人と思い出なんかない。正月とか親戚が集まるような大きな行事で主屋に来た時に大勢で食事を囲んだことがあっただけだ…。
マキ「…」
泊まるのは…やだなぁ…。
マキ「通いでも良いですか?」
実父「2、3日寝食をともにするだけだ、最初で最後の願いを、どうか叶えてくれないか」
マキ「……」
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