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(番外編)純愛>♎︎<狂愛29
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百目鬼さんが、みんなの前で宣言した。
僕と付き合ってて同棲するって言った。
…これが現実なの?これは現実なの?
信じられない…
息が苦しい…震えが止まらない
こんな事が起こるなんて夢みてるに決まってる。こんなに痛いくらい胸がバクバクいってるけど、信じられない。…百目鬼さんがみんなの前で…みんなの前で…こんな事…夢だ…
百目鬼さんの肩に抱きあげられたまま、僕の目に映るのは、夢のような出来事。でも胸が締め付けられて苦しい現実。
夢じゃないなら、そうだ!、酔ってるんだ!…百目鬼さんは今酔っ払ってるに違いない。
ニヤニヤキャーキャーするお姉様方。
不機嫌に呆れた顔のむつがいて、嬉しそうな修二に、微笑ましそうに見る華南。
檸檬さんと杏子さんは可笑しそうに笑ってて、矢田さんはワクワクする子供みたいに目を輝かせてる。
賢史さんは相変わらずいやらしい顔でニヤついて。その下で、驚いてるつよしがいて。
そして、こっちを睨むように厳しい目をしてる奏一さん。
百目鬼さんが、奏一さんの瞳を真っ直ぐ見つめ返してる。僕と付き合ってるって、一緒に住むって宣言しちゃった…。
僕と一緒に歩いてるのを見られただけで真っ青になってたアノ百目鬼さんが…
僕らの関係を秘密にしてた百目鬼さんが、みんなの前で…
みんなの前でこんな事…
どうしよう
きっと酔ってるんだ
だってこんな事…
百目鬼さんがこんな事言っちゃうなんて…
目の前のことが見えてるけど、頭に入っていかない、だって、息ができないほど頭が真っ白で…。思考回路が停止してて、目も口も、開いたまま塞がらない。
どうしよう…
苦しくて…震えが止まらない…
胸が痛くて…息ができない………
百目鬼「…」
奏一「…」
百目鬼さんの真剣な眼差しと、奏一さんの睨むような鋭い眼差し。奏一さんは怒ってるのか、見るからに苛立ったオーラを放ってる。僕はといえばパニック状態のまま、無言で視線を交わしてる2人に生きた心地がしない。
僕のせい?僕のせいで奏一さんが険悪な空気なの?
奏一「…」
百目鬼「奏一、俺…」
奏一「なぜ、俺に言う?俺に言う必要はないとさっきも言ったろ」
百目鬼「ケジメだ」
奏一「示し方がちげぇーだろーが」
どんどん険悪になる奏一さんに、百目鬼さんは怯む様子はなくて、唖然とする僕の頭に手を置いて、優しく撫でながら、奏一さんに臆せずに言った。
百目鬼「奏一や修二に対するケジメもあるが、マキに対するケジメでもある」
奏一「…そうは見えねぇなぁ…。マキは納得してないんじゃないのか?」
奏一さんが厳しい視線のまま僕を見た。
僕はこの状態をなんとかしなきゃと思っだけど、頭も体も痺れて訳が、わかんない…
震えるだけで何もできない僕に、百目鬼さんが振り向いた。百目鬼さんは僕の顔を見るなり困ったような難しい顔をする。
僕はきっと、酷い顔してる。
百目鬼さんは僕を抱えてない方の手で僕の頬に優しく触れて、そっと撫でる。
百目鬼「…やっぱり、そおいう顔するんだな」
…?…
そおいう顔ってどんな顔?
僕、どんな顔してる?
やっぱりって何?
百目鬼「お前は信じないと思った」
見透かしたみたいに言った百目鬼さんの瞳は、凄く凄く悲しそうに曇った。
違う、信じてるよ、信じてたよ、って言いたいのに、口が動かない…。
だって、信じられないような夢みたいな出来事なんだもん…。信じてないんじゃない…。夢みたいで信じられないって驚いてるだけ…
百目鬼「…言っとくが、これは夢じゃないし、俺は酒は飲んでないぞ」
ッ!?
百目鬼「…驚くなよ、やっぱり信じてないじゃないか…、俺が何を言っても、お前は嘘だと思うだろ?自分の身に起こる〝いい事〟を、お前は信じないし疑う。その身に起こる幸福を、お前は幸福だとは思わない」
百目鬼さんの瞳が悲しそうで胸が痛い。
夢やお酒のせいじゃないかと思った自分がムカつく。百目鬼さんにこんな顔させた自分の考えがムカつく。百目鬼さんにこんな悲しい顔させたくないのに…
百目鬼「俺と一緒になるのは、そんな悲しい顔をする事か?」
喉が締め付けられてて声が出ない、僕はなんとか首を横に振る。百目鬼さんの目が和らいで、僕の乱れた髪をそっと髪を耳にかけてくれた。それからその手で、震える僕の手を優しく包み込む。
ぐしゃぐしゃに歪んでる僕の顔。
シワくちゃの眉間に限界まで寄った眉。固く閉じた唇は震えて、最高に不細工で情けない顔してるに決まってる。
百目鬼「喜ばせたかったのに…」
嬉しいよ!喜んでるよ!
でも、今堪えているのは嬉しさじゃない。混乱で訳も分からない感情に対する怯え。喜びより、それが消えてしまう事を恐れた。
百目鬼さんがみんなの前で付き合ってる宣言をしてくれたのに、僕は百目鬼さんの言葉に嬉しさよりも恐怖を感じてた。
夢なんじゃないか
酔ってて忘れてしまうんじゃないか
現実じゃないんじゃないか
って……
マキ「ッ…」
百目鬼「マキ…、悪かった。矢田にも、奏一にも覚悟を見せる…」
僕が素直な子じゃないから、素直に喜ぶいい子じゃないから、百目鬼さんにこんな悲しそうな顔させてひらんだ…
百目鬼さんは小さい子をあやすような優しい声で。大きな温かい手が、何度も何度も柔らかく頬をなぞり、僕は百目鬼さんの腕の中。
百目鬼「…マキ、…いいんだぞ。…ほら、素直な気持ちを言ってみろ…、ちゃんと最後まで聞くから…」
マキ「……めん…なさい…」
百目鬼「…」
こんな顔して百目鬼さんを困らせたいんじゃない。夢みたいに嬉しいことが起こってるのに、嬉しいって笑顔でいられない自分が嫌だ…、こんな可愛くない反応しかできない自分が嫌だ…。困らせたいんじゃない、悲しい顔させたいわけじゃない…
嬉しいのに…
凄く凄く嬉しいのに…
マキ「…ぅ…れ…しい…のに…」
百目鬼「…のに?」
百目鬼さんは、僕のメチャクチャに歪んだ顔を見つめながら、今までで1番優しくて、今までで1番困った顔をしてる。
ごめんなさい
そんな顔させてごめんなさい
でも僕…
マキ「……こ……怖い……」
崩れそうな感情を必死に抑えて、口にした。口にしなきゃいけない、百目鬼さんに伝えなきゃいけない、そうしなきゃもっと怖い事になりそうで…
僕の溢れた気持ちは、百目鬼さんが腕の中に優しく抱きしめ直し。
コチンっと、おでこをくっつけながら呟く。
百目鬼「…俺も怖いさ」
百目鬼さんの瞳は、優しくて、見えないものが僕と同じように怖くて、でも、それを受け止めて前に進もうとする強い意志の光を宿し、僕を真っ直ぐ見つめてた。
ツッ…
堰き止められてた感情が溢れ出る。
百目鬼さんがどんなに〝恋愛を恐れてるか〟僕は知っている。己をどんなに恐れて押さえつけてたか知っている。だからこそ、その言葉の重みと意味が僕の中で弾けた。
百目鬼さん!好き!大好き!嬉しいよ!側にいたいよ!ずっといたいよ!
百目鬼「お前を泣かしちまうし、寛大になれねぇし、暴走壁は治んねぇし…」
マキ「ムゥ、暴走はしてないもん」
百目鬼「お前は頑固だし、俺に甘いし」
むくれたら、クスッと笑われて、鼻を摘まれた。
百目鬼「でも、もうキレちまうかもなんて迷わない。いっぺんに何もかも正そうなんて俺には無理だった。だけど、お前が言ってくれたように、俺とお前のルールを一から作ろう。俺は、俺なりにお前を大事にするし、今後は何があってもお前を手放さない。大事なことさえ見えてりゃなんとかなる。
お前が怖くなくなるように、笑顔でいられるように、みんなの前で誓う。
マキ、頼むから、そんな顔して泣くなよ」
マキ「ッッッ~~~~~~~~~!!」
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