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2〔裏番外〕ゆくえ…
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俺の朝は、マキを眺めることから始まる。
目が覚めると、俺の腕の中でぴったりくっついて寝息を立てて眠るマキと、マキの側で丸まるミケの姿。
この温もりが戻ってきたと、毎朝確かめては安心する。
マキの寝顔は幼い子供のようで、子供は寝てれば天使とはよく言ったもんだ。この天使が、夜にはあんな妖艶な魔性になったり、恥じらって真っ赤な顔で乱れたり、昼間はへらへら大人びた顔をする。
マキの寝顔をあまり眺め過ぎると危険なので、少し眺めたらマキを起こさないように腕を抜く。しかし、マキは、俺が居なくなるとブルッと身震いして、目を瞑ったままモソモソ動き出す。寒いのかと布団を掛け直して頭を撫でてやると、マキは安心したように再び眠る。
穏やかな寝顔のマキ。
これからは俺が守っていく…
心から笑えるように大切にしてやりたい。
…だが…
マキについて、いくつか気になる事がある。
俺は、今回成一からマキを切り離すために、マキに詳しいであろう2人の人物に話を聞いていた。
1人は、先生様。
マキを保護し、枕探しをしていたマキを更生させて、SEX依存症を和らげる手助けをしてくれてい人物。彼にマキの現状について聞いた。
もう1人はマキの育ての親、清史郎。
マキの小さい頃の話と、マキと関係を持った時の話を聞き出した。
だが、これはどちらも、マキ本人の口から聞いたことではない。だから、俺はまだまだ、マキの断片的な部分しか知らないのだろう。
マキは〝茉爲宮優絆〟である自分を捨てたと言った。
明るい表情も、拗ねるような表情も、怒ったり泣いたり色鮮やかになり始めたマキ。俺は、マキの喜怒哀楽全部、俺の物にしたい。
これから徐々に、俺たちのペースで歩み寄って行きたい。
しかし、俺の名前一つであそこまで恥ずかしがるとは思わなかった。
名前ごときでこんなに手こずるなら…
この先はもっともっと時間がかかりそうだ…
いちいちあんな風にクソ可愛いツラで反応されちゃ、こっちの身がもたねぇ…
ハァ…。とりあえず、キングに餌をやるか…
明日から、マキの大学が始まる。
今日中にマキの引越しを済ませなきゃならない。
フッ…、この俺が、恋人と同棲だってさ…。
世の中何が起こるか分からないもんだ…。
この家で誰かと住むことになるなんて驚きだ。
俺がここに事務所を構える時、俺は一生1人だと思っていた。修二にあんな事をして、俺の暴走壁は収まる様子もなかった。
だから、マキが現れて泊めてやってる間も、こっちは気が気じゃないし、いちいち気になってしかたないから早く出て行けと思っていた。誰かと一緒に住むなんて俺には向かない。いつか相手を抱き殺しちまいそうで…。
だが、どうだ…。実際にマキが出て行ったら行ったで、気になって仕方なくて、時々余分にご飯作っちまったり、俺のマヌケ具合は半端なかった。しかも、マキと別れ、姿を見なくなった途端。マキがいないこの部屋は自分でも驚くほど堪えた…。
いない筈の影が、俺に笑いかけてきやがる。
朝起きりゃ、眠そうにしながら朝ごはんを楽しみにカウンターで待ってたり、仕事から帰れば玄関に飛んできて抱きついてきたり、そこら中マキの残像を探して求める自分に苦しくなった。
でも、もう、今日からは、マキの荷物も来て、俺の部屋に一緒に住む。
手を伸ばせば届くし、呼べば返事をする。そんな事を嬉しいと感じる俺は、かなり頭が馬鹿になってる。
ーピンポーン♪
ついつい、マキを見ながら色々考えていたら、マキの荷物が届いてしまった。
仕方ない、まだ夢の中のマキは寝かせて置いて、荷物を運び入れておくか…。
玄関を開けると、外には水森泉が立っていた。泉の後ろには、段ボールが3個積まれている。
百目鬼「ご苦労様、今マキは…」
泉「寝ているのでしょ?構いませんよ、荷物はこれだけなので」
水森泉が段ボール3個を指差し、相変わらず冷めた感じでそう言った。俺は荷物の少なさに驚きを隠せない。
百目鬼「は?マキの一人暮らしの時の荷物がか?」
泉「いいえ、一人暮らしの荷物と実家の分も入ってますよ。まぁ、一つはアルバムがぎっしり入ってますが」
マキの荷物は、事実上段ボール2個分しかなかった。
百目鬼「いや、一人暮らしの時もう少しあったろ」
泉「ああ、大人の玩具は捨てましたよ」
百目鬼「大人のッ!?…」
思わず大きい声で繰り返しそうになり、慌てて口をつぐむ。
泉は何でもないことのようにサラッと報告してきた。
泉「クローゼットの中いっぱいに詰まってましたから、纏めてポイッと。…それともお使いになる予定でもありましたか?」
俺が嫌な顔するって分かっててニコニコそんな事を言う水森泉。
こいつは味方なのか敵なのか、イマイチよく分からない。
それともあれか?仲良しのマキを俺に取られて拗ねてるのか?
水森泉は、俺とマキの間を反対したり、攫ってやれと言ってきたり。察しろと言わんばかりの冷めた態度、俺にはどれが正解なのか分からない、だからはっきりいってほしい…。
百目鬼「お前、マキのこと…」
泉「気色悪い想像はやめて下さい」
俺が質問する前に、ピシャリとうんざり言い切る水森泉、こいつは冷たい言葉を平気で吐く。それなのに、マキに信頼され好かれてるし、この冷たさでマキのピンチの時は飛んでくるし。イマイチ関係性が分からない。
泉「荷物は届けましたからね。…ああ、そうだ、アルバムと書かれた箱は、マキが起きる前に見てしまうといいですよ。マキは見せたがらないと思いますから」
百目鬼「…それをお前が言うのか?」
てっきり見るなと言われると思ったが、水森泉は、なんだか企んだように笑う。
泉「百目鬼さんなら構わないでしょ?恋人なんだし。それに、百目鬼さんはどうせ見るおつもりでしょ?」
百目鬼「…まぁ」
泉「百目鬼さんが先に見てしまえば、マキも嫌とは言えないでしょうしね」
百目鬼「……お前は見たのか?」
泉「…このアルバムは、清史郎さんが保管していたものなので、清史郎さん以外は誰も見たことがありませんよ。いちいち子供みたいに嫉妬しないで下さい」
うっ…
水森泉は「では、夜は程々に」とか言いながら帰って行った。
マキにとって水森泉は、信頼おける友達だろうが…
俺は苦手なタイプだ…。
しかし、段ボール3個。一つはアルバムだから、事実上2個分…
物無さすぎだろ…
仕方ない、引越し作業は終わっちまったから、マキの使う日用品や、パジャマなんか後で買いに行くか…
俺は、3個の段ボールをリビングに運び入れる。リビングでは、ゲージの中でキングが吠えたりボールで遊んだり、この後散歩に連れて行かなきゃと思いながら、俺は、マキのアルバムが入ってる段ボールが気になってた。
幸い、まだマキはミケと寝てる…
俺は、そっとアルバムの入ってる段ボールに手を伸ばした。
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