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10〔裏番外〕ゆくえ……
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茉爲宮優絆を無事に自宅に送り届けた。
裏口に心配そうに立つお手伝いさんらしい年配女性に引き渡し、茉爲宮優絆はことの経緯をその人に説明した。
茉爲宮優絆は、本当は何でもないように取り繕いたかったのだろうが、シャツを破かれては誤魔化し用がない。服が破けたのも服が濡れたのも暴漢のせいにしていた。
マキの嘘癖はこの頃からあったんだな…。
本当にどうしようもない奴だ。
こうして改めて見ると、襲われるのも仕方ないのかもしれない…
小4の茉爲宮優絆は、俺のマキより外人色が強い華奢な少年だった。髪はロン毛でパッと見は神秘感漂う女の子に見えるし、短パンから覗く真っ白な足。肌の色は白人に近い独特のホワイト。子供なのにこれだけ白かったら、目立つだろうし、髪の色にこの瞳の色じゃな…、銀にもエメラルドにも光るジュピター色の瞳。見ていて吸い込まれそうなこの瞳は、変な気になるのも分かる。マキは黒のカラコンを入れてたし…、肌も白いが、茉爲宮優絆ほどじゃない…。
マキは、子供の頃から魔性の気があったんだな…。
危なっかしい子供だ。
こんな子供に、守るどころか手を出すなんて清史郎はどうかしてる。…俺が、人の事をアレコレ言えたもんじゃ無いがな…。
マキの初めてはこれからしばらくして奪われることになるんだろう…。
マキにとっては大好きな人に捧げたことになるのか………。
初めてを清史郎にやっちまうと思うと、腹の中が煮えくり返るが、これは夢だし、茉爲宮優絆は小4の子供だ…。俺にはどおする事も出来ない。
複雑な気持ちで茉爲宮優絆の後ろ姿を見送った。
俺は、マキの何を包み込んで支えてやれるだろう?
マキはきっと、1人で抱えて歩いてきた。
その過ぎた過去を今更掘り返されたくないんだろう。それは分かってる。暴漢にイジメに身代わり…本人は辛かったろうが、きっと不幸だったと思ってたわけじゃない、マキが言うように、これがマキの普通だった。俺が「辛かったな」と声を掛ければ、マキにとって普通として処理した過去が、辛い物になってしまうのかもしれないし、本当は「辛かったな」と誰かに慰められたいのかも知れない。でもそれは紙一重で、人に頼るのが嫌いなマキがしたがるとは思えない。
俺は言葉が下手くそだ、それは十分分かってる。マキの過去を話してもらえたとして、過去のマキを救ってやれる自信はない。俺は、マキの全てを俺のものにしたい。マキが俺の過去を包み込んで解放してくれたように、俺もマキの心を包み込んでやりたい…。
俺はマキの全てが欲しい。
怯えるマキの心の全部が…
自分を汚いと言ったマキ。そんなことありえねぇのに。お前は、人の痛みの分かる優しい天使みたいな奴だ、みんなの心を救ってる。
どおしたら、お前を本当の意味で俺のものに出来る?俺を信じてくれるんだ?
俺はお前を誰かの代わりにしてないし、お前を裏切ったりしない、一生手放さない自信はある。
どおすれば、マキを心から安心させて笑顔にしてやれる?
俺は、考えながら元いた公園に戻ってきた。
しかし、俺ってボンクラは、マキを心から安心して笑顔にしてやれる気の利いた言葉なんか思いつきもしない……
百目鬼「さて、俺はこれからどおすりゃ良いんだ?この年代の俺はまだ実家暮らしだから帰るわけにもいかねぇし…。俺の無能っぷりはよく分かったから、夢なら早く醒めろよ」
優絆「目を開けながら寝てるの?」
百目鬼「ッ!?」
背後から声を掛けられ驚いて振り返ると、そこにはさっきと違う格好をしてる茉爲宮優絆が立っていた。
百目鬼「おまっ!何でこんな所にいるんだ!さっき家まで送ったろ!?」
優絆「えっ?何言ってるの?おじさんと会うのは1週間ぶりだよ?」
キョトンと瞳を瞬いて首をかしげる茉爲宮優絆。
確かに、服装が綺麗になっていて、髪の毛も乾いてる。
百目鬼「1週間?」
優絆「うん、1週間。ねぇねぇ、おじさん名前は何ていうの?」
茉爲宮優絆は人懐っこく笑って尋ねてきた、どうやら懐かれたみたいだ。
相変わらず警戒心があるのか無いのか分かったもんじゃない…。
百目鬼「…百目鬼神だ」
優絆「ジンさんだね♪どんな字書くの?」
子供の茉爲宮優絆に無邪気に名前を呼ばれて懐かしい気持ちになった。ヘラヘラそんな風に呼んできていた事もあるが、今の俺のマキは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに名前を呼ぶ。
というか、この頃の茉爲宮優絆に俺の名前を言っても良かったんだろうか?
…面倒くさい。夢だから構わないか…
優絆「へー、神さん。ふふ、神さんか♪」
百目鬼「どおせ神様ってより閻魔みたいな顔してるって言いたいんだろう」
優絆「それは被害妄想だよ。暴漢から助けてもらったんだから、僕にとっては神様だよ」
助けたというか、あれは俺が居なくても助かってたろ。暴漢は茉爲宮優絆を女の子だと思って襲ったんだし…
優絆「神さん、あの時は助けて下さりありがとうございます。あの時貸してもらった背広、クリーニングしたからお返ししたいのでここで待ってて下さい、僕取ってきます」
百目鬼「待て待て!」
茉爲宮優絆首根っこ掴んで止めると、茉爲宮優絆はキョトンと俺を見上げる。
ぐっ…、ロリコン趣味はないが、やっぱこのジュピター色の目には弱い。
百目鬼「あれは返さなくていいって言ったろうが。まさか、背広を返すために俺を探してこの公園に通ってたとか言わないよな」
優絆「ふふ♪心配しないで帰り道だから♪」
ニコッと無邪気に笑うが、俺はこれが嘘だと知っていた。マキが過去を話してくれた時、車で送り迎えされていたと、言っていたからだ。
百目鬼「貴様、暴漢の出た公園をウロウロするなんて何考えてんだ!!」
優絆「!!」
百目鬼「自分をもっと大事にしろ!!」
小4相手に、怒り任せにどなっちっちまう大人気ない俺。いつも、反省するのは、やっちまった後だ……。
茉爲宮優絆は、目を丸めて固まってる。
これが普通のガキだったら、おしっこ漏らして泣き叫ぶ……、甥っ子に一回そうした前科が俺にはある。
優絆「…ごめんなさい…。神さんて、とっても優しい人なんだね」
さすがマキの子供の頃。俺に怒鳴られて優しいとか言って笑顔になるなんて、どうかしてる。
百目鬼「俺は叱ってるんだぞ!」
優絆「僕、怒鳴って叱られたの初めてなんだ」
百目鬼「ア¨?!」
優絆「僕ね、神さんに会いたかったんだ。会って、聞きたいことがあって…、とっても大事なこと…」
茉爲宮優絆は段々と真剣な表情になり、目を伏せる。
聞きたい大事な事?一体なんだ?
優絆「もし、違ったらごめんなさい。神さんこないだ言ったよね、ガキな僕には興味ないって…。男だからとは言わなかったよね。なら、神さんって…もしかして…、男の人を好きな人?」
ッ!?
ちょっと待て…
それに「そうだ」と答えたら、もしかして俺は、茉爲宮優絆の恋愛相談をされるのか?
茉爲宮優絆の…、マキの、恋愛相談を…
清史郎とどうしたら結ばれるかとでも聞くのか?
これは一体どんな悪夢だ……
早く覚めてくれ…
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