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お兄ちゃん。
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翌日の奏一は、忽那の警告を無視したために、非常にグロッキーになっていた。
奏一「うー…。飲みすぎたぁ…」
事務所のデスクに突っ伏して、頭痛がすると頭を押さえる奏一。そんな奏一を見て、悔しそうに嘆く大型犬がいた。
羚凰「ズルいー!!何ヶ月も忙しそうにしてたから遠慮したのに!!彩さんと二人っきりで飲むなんて!抜け駆けだ!裏切りだ!」
奏一「羚凰…五月蝿い」
奏一が最高に不機嫌に羚凰を睨みつけると、羚凰は涙目で精一杯可愛くウルウルするが、190のデカイ図体はいくら頑張っても可愛くはならない…
修二「兄貴、オーナーの癖に酒臭いよ。彩さんところで薬飲んだの?」
奏一「あー、飲ませてもらった…」
奏一の体調を心配しながら、飲み過ぎだと怒ってる弟の修二。見てるだけで癒されると顔を綻ばせていたが、その横で大型犬が五月蝿い。
羚凰「飲まっ…飲ませて貰ったってまさか口移しじゃ…!!」
奏一「黙らねぇーならクビにするぞ」
羚凰「あーん、怖い奏一さんカッコいいっす!」
手に負えない大型犬は、ここ二ヶ月ほったらかしにされて酷く五月蝿い。
奏一がマキの世話を焼いている間、飲みも無いし、仕事も昼休みのたびにいそいそ出かけて行くから嘆くしかなかった。
奏一「そういえば修二、マキからメール来たぞ。お前から良かったなって言っといてくれ」
修二「えー、会って言えばいいじゃん、マキ兄貴の顔見たら喜ぶのに」
奏一は拗ねた顔してそっぽを向いた。修二は理由が分かってるから、呆れたため息を漏らす。
そんな二人のやりとりに、羚凰はキョロキョロ興味津々。
羚凰「マキって誰々?!」
修二「僕ちゃんの友達、兄貴が今可愛がってる子だよ」
羚凰「えー!!いつの間に!!」
奏一「羚凰仕事しろ…」
明らかに勘違いしたのが分かったが、あえて修正しない。奏一は、面倒くさいとそっぽを向いたまま、仕事に戻ろうとパソコンをいじりだした。
羚凰「奏一さん、俺には仕事だって言ってたのに…、そのマキちゃんと会ってたんすね…。ど、どんな子っすか?奏一さんの相手なら美人でなんでも出来て才色兼備じゃないとダメっす!」
貴様はどこから目線で言ってんだと奏一は思ったが、頭痛が酷くて喋るのが億劫になっていた。
修二「兄貴は世話したがりだから、才色兼備じゃなくてもいいんじゃ無い?」
羚凰「くぅー!!もう修二くんも認めてるの?!修二くん!マキちゃんの写真とか無いんすか!?俺が審査してやります!」
修二「えっ、でも…マキは…」
羚凰「お願いします!修二様!!」
修二の携帯を奪うように手にして、写真のフォルダーを開くと、いきなり目を引く美人が写っていて羚凰が雷に打たれたような衝撃と共に機能停止。
フォーローを入れようとして修二がオロオロしていたが、羚凰の暴走は止まらない。
羚凰「まっ、まっ、まさか!!この超可愛い子がそうだとか言わないっすよね!?」
修二「あー…、えっと…」
羚凰「マジっすかッ!?」
ガックリ床にうなだれた羚凰。
修二が戸惑っていると、奏一が放っておけと呆れたように手を二、三度振った。
羚凰「レベル高すぎだし!どこのモデルさん?!ってかハーフって最強じゃないっすか!!」
完全に独走態勢の超大型お馬鹿犬は、二ヶ月お利口にしていた結果、奏一がいい感じの女の子とデートしてたんだと思い込み爆発状態。
羚凰「奏一さん酷いっす!俺とか彩さんがいながら女の子とイチャイチャしてるなんて!!」
奏一「ばぁっ、馬鹿野郎!!ッッ!!」
修二がいるのに!と言わんばかりに怒鳴った瞬間頭がズキンッと刺すように痛む。
今日は何をするにも分が悪い。
奏一「その子には相手がいるし、イチャイチャしてたわけじゃねぇ、相談に乗ってたんだよ」
羚凰「え…、奏一さん失恋したんすか?」
ハァアアアアーーーッ!?
奏一は、頭痛がこれ以上酷くならないように激怒しそうな気持ちを辛うじて耐え、声を出さなかったが、顔はもう、阿修羅のごとく恐ろしい。
危険を察知した修二が間に入るが…
修二「れ、羚凰さん、この子、男の子だから、そういうんじゃ無いから…」
羚凰「いやいや、そりゃいくらなんでもないでしょう、こんな可愛い子が男だなんていくら俺が馬鹿でもそれは信じないよ」
修二「いやいや、マジだから」
羚凰「いやいや、ウソウソ」
修二「な、なんなら今度連れてきつあげようか?」
修二は、男同士ネタに敏感な奏一を気遣って言った一言だったが、奏一を「余計なことするな!」と更に怒らせ。更に、羚凰は会えると聞いて飛びついた。
羚凰「会いたい会いたい!奏一さんのお気に入りちゃんがどんな子か会ってみたい!!」
奏一「絶てー会わせねぇーぞ!お前みたいな獣に!」
羚凰「そんなぁ、俺は奏一さんに一途だから、浮気もしないし、マキちゃんを取ったりしませんよ〜」
奏一「そういう話じゃねぇーんだよ!」
羚凰「だったら、奏一さんが俺と飲みに行ってくれますか?お食事デートしてくれるならマキちゃんは諦めます♪」
頭が痛い上に、可愛い可愛いマキを獣の羚凰に合わせるなど即刻阻止したい奏一は、面倒くさいと二つ返事してしまう。
奏一「分かった分かった!お前の奢りだからな!」
羚凰「やったぁ♪奢ります奢ります♪なんでも奢ります♪」
奏一「カウンターで寿司食放題だ、修二、むつと華南も呼んでいいぞ」
羚凰「えーー!デートって言ったのに!奏一さんと二人っきりのお食事なのに!しかもカウンター寿司!容赦ない!!」
奏一「なんだよ、俺の大事な家族だぞ〝弟たち〟が一緒じゃ不満か?」
羚凰「あぁ…、家族ラブな奏一さんもカッコいいっす…」
奏一「よしよし」
羚凰「手厳しい奏一さん流石です…」
こうして大型犬が何とか手に入れた弟同伴のデート。
奏一は知っていた。
マキが心配で色々してる間、羚凰は察して店のことを色々やってくれていた。昼休みもどこかに必ず出かける奏一のために、自分の出来る範囲で仕事をやっておいてくれたり、社員の中でも羚凰は、成長スピードが目覚ましい。
忽那のように、言葉だったり癒しの空間を作れるほど大人じゃないが、目の前の何をやるべきか、先を見据えて何をするべきか、社会人としてのスキルはかなり高く。馬鹿だ馬鹿だとおとぼけ言って場を盛り上げることのできるムードメーカーだ。
だが、そんなことは言ってやらない。
能力は高くとも精神的にお子様な羚凰は、そんなこと言ったら確実に調子にのるからだ。
感謝の言葉も、褒め言葉も、奏一は教えてやらない。
その日は結局、修二とむつと華南と羚凰を連れて、回転寿しに行った。
勿論、食べ盛りの男の子たちの大量の皿のお会計を払ったのは、奏一お兄ちゃん。
羚凰本人の知らないところで、仕事では頼りになると評価が上がってる一方。
恋愛値は全く上がらず、意識してもらえてんだか貰えてないんだか、まだまだ修行が足らない羚凰だった。
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