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「からかいたい」3
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ひらりと舞った白いドレスは、強烈な蹴りを入れてきたのに五段の段差から綺麗に着地してモデルのように優雅な立ち振る舞いで仁王立ちする。
金髪の髪に、真っ白なドレスにハイヒール。
気の強そうな顔立ちはハーフっぽく綺麗で、何より目を引くのは、いしの強そうなエメラルドグリーンの瞳。
『人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られてなんとやら……』
吹っ飛んだ俺が地面に激突した時、菫ママの声でそう聞こえた気がした。
が!
賢史「いや、邪魔じゃなくてヨリ戻してやったんだろうが!!」
思わずツッコンで起き上がる。
柔道有段者だったから、なんとか体をひねって受け身を取ったが、俺が反応出来ないほどのスピードで蹴りを入れてくるキャバ嬢って何者だッ!?
そりゃ俺は神みたいにヤンチャはしてない一般人だが!スポーツマンだぜッ!女にこんな事されたことなんか……
つよし「ユリちゃん!!その人お巡りさんだよ!!」
普段消え入りそうなどもり声ばかりのつよしが、ビックリするぐらい大きな声で叫んだ。
ユリ「エ¨ッ!?」
つよし「僕を心配して夜道を送ってくれたんだよ!」
ユリ「エエッ!」
つよし「賢史さん!!大丈夫ですかッ!!」
ユリちゃんと呼ばれたキャバ嬢から、一瞬にして殺気が消えた。凛々しいくらい雄々しい殺気で俺を仁王立ちで見下ろしていたのに、急に内股で両手で不安げに口元を隠してぶりっ子みたいにオロオロしだす。
反するように、おどおどビクビクしていたはずのつよしは、男らしくキビキビ動いて俺の元へ飛んできて、俺に怪我がないかテキパキ見て回る。
なんとも不思議な人間が二人。
同じエメラルドグリーンの瞳の持ち主。
間違いなく血縁者だろう。
俺は目の前の二人に驚きを隠せない、そして、一つ重大な勘違いに気がついき、言葉を失っていた。
つよし「賢史さん!骨折とかしてないですか!?」
ユリ「ご、ごごごめんなさい!てっきり弟が絡まれてるのかと思って!本当にごめんなさい!」
つよし「賢史さん!立てますか!?」
ユリ「や〜ッ!本当にごめんなさい!病院行きますか?ヤダァ!救急車?!」
ユリは、近くで見ると童顔だが端正で整ったパーツでとても綺麗な顔立ちをしている。良く良く見ると、つよしも同じようにパーツが整っていて、前髪で隠してるのが勿体無いくらい…
兄弟だというのは間違いないだろう。その瞳が何よりの証拠だ。だが…
賢史「……男?」
どこからどう見ても綺麗で派手なキャバ嬢にしか見えないが、俺の目は誤魔化せない。
だいたい人間は、化けたくても化けれないパーツがある。それが手と、喉ボトケだ。
ユリ「!」
つよし「そうです。ユリちゃんは、僕の兄です」
ユリ「ヤダッ!そんなはっきり言わないでよ!心は乙女なんだから!」
はッ?!
エメラルドグリーンの瞳に、ハーフ顔。
ユリはどう見てもつよしより10才は離れてそうだし、親は海外で、兄がニューハーフ??
こいつん家大丈夫か?!
頭の中が整理できずにいたら、店の入り口から黒服のボーイが出てきて騒ぎ出した。
男「お、お客様!ど、どうなさいました!?」
倒れこんで顔だけ上げてる俺に驚いて、ボーイが駆け寄ってくる。
俺「ユリちゃん!〝また〟なんかやったの!」
ユリ「あの…」
ボーイが詰め寄るとユリは身を縮めて今にも泣きそうになりながら、事の経緯をバカ正直に話そうとしたから、話に割って入った。
ユリ「私が…」
賢史「いやぁあ〜、すいません驚かせて、入り口であまりの美人に見とれて階段踏み外しちゃって、あははッ、驚かせてごめんねユリちゃん、ほーらなんともないから。ユリちゃん指名したいなぁ」
起き上がって屈伸して見せて、ボーイを安心させてやると、ボーイは申し訳なさそうに謝ってきた。
男「お怪我がなかったならよかったです。ですが申し訳ありません。ユリは、本日はもう帰るところで…」
まぁ、ドロップキックされたなんて言ったら一発クビだろうな。
賢史「そうなんだ、残念。ちなみにさっき〝また〟とか言ってたけど、ユリちゃんなんかやらかしたの?」
男「そ、それは…」
賢史「一目惚れだし、あ、次回指名するから、ちょこっと教えてよぉー」
男「…、ユ、ユリは人気はあるんですが、気が強くて、この前はセクハラされたとお客様の腕を捻り上げまして…」
賢史「わお!いいねぇー!自分の意見を言えて腕も立つなんてますます好みだぁ、次回が楽しみだぁ」
その場を誤魔化して納め。
ユリがお礼がしたいと言ってきて、俺は断ったのだが、何度も何度も食いさがられ、その瞳にはお礼とはまた別の怒りに似た感情が混ざっていて、面倒だが夕食をご馳走になることにした。
まぁ、気持ちは分からなくもない。
俺が何者か知りたいのだろう。大事な弟とこんな時間に一緒にいたんだ。それにつよしは俺をお巡りさんと言ったが、ユリの瞳は信じてないと言いたげに鋭かった。
レストランに入ったところで、ユリはつよしに手を洗っておいでと席を外させた。
その瞬間、可愛らしい女の顔から、警戒心を丸出しの男の眼に変わった。
ユリ「先ほどは、大変申し訳ありませんでした」
口調はあくまで裏声を使って可愛らしく、礼儀正しく深々と頭を下げ、次に顔を上げた瞬間、俺を睨むように見てきた。
ユリ「失礼ですが、つよしとはどういったご関係ですか?まさか付き合ってるとか言わないですよね?」
ブラコンか?それとも年の離れた弟が我が子のようなのか…
賢史「どういった関係って程じゃないですね、会うの2回目なんで」
ユリ「お巡りさんって本当なんですか?」
賢史「ああ、お巡りさんじゃなくて刑事です」
内ポケットから警察手帳をチョロっと見せたが、ユリは半信半疑。まぁ、そうだろう、言いたいことは分かる、俺みたいなモサッとしてチャライのが刑事かって言いたいんだ。
そこへ、つよしが戻ってきたが、愛想笑いするユリの様子から何かを感じ取り、怖い顔をした。
相変わらず勘がいいのか、家族だから分かったのか…
つよし「ちょ、ちょっとユリちゃん、賢史さんにし、し、失礼なこといってない?」
さっきは男らしくテキパキしてたのに、また、小動物に戻ってやがる。
ユリ「失礼なのことは言ってないわ、大事な弟に手を出してないか確認したの」
つよし「ちょっ、ちょっと!!
す、すすすすいません賢史さん!!」
ユリは開き直ってツーンとそっぽを向き、つよしは顔を真っ赤にしてオロオロ俺に謝ってきた。
この兄弟、なんなんだ。
めちゃめちゃ観察しがいがある面白い兄弟だ………。
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