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☆マキside(茉爲宮優絆)
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眼前に広がるのは、闇夜に散りばめられた煌めき瞬く星々。
言い表せないほど素晴らしい色合いのオーロラ。
見上げたソコには、美しい星々を背に僕を見つめていつもより優しく嬉しそうに微笑む、僕の大好きな人。
強面の彼の顔が覆いかぶさるように、優しく触れてきた手に導かれ、僕の唇に温かいものが触れる。肉付くの薄い、ちょっとガサガサする荒れた唇。ゆっくりと触れてきて愛おしむ様に重ねられた。
僕の心は驚いて恥ずかしくてパニック寸前。
だって、このキスは意図的なもののはず、ワザワザここまで来て、天井のオーロラを指差した。
もし、彼がそのジンクスを忘れていたとしても、僕にとっては大きな意味を持つもの…
そのキスは今までで一番優しく重ねられて、僅かに聞こえた吐息が震えていた。
暗闇の中で、緊張気味の声が、僕に囁いた。
百目鬼『マキ…、好きだ。これは夢じゃない…』
夢だと思った。
幻だと思った。
きっと今だけだと…
百目鬼『これで、ずっと一緒にいられるな』
強面の顔がうわずった声でそう続ける。
緊張で汗ばんだ彼の大きな手が、僕を一層強く握りしめてきてて。僕の心臓は、痛いくらいドキドキして、何が起こってるのか分かってるけど分らない。
百目鬼『オーロラの下でキスしたら、幸せになれるんだろ?』
確認するように、眉間のシワが困ったように寄せられてて可愛くて。決意を持った意志の強い瞳が、暗闇の中でもしっかり僕を見据えて、僕の胸をさらに激しくさせる。
やだっ…、カッコいいッ!!
プラネタリウムの満天の星空と幾重にも色を変えるオーロラのカーテンの下で、好きだと言われてキスされた。こんなロマンチックで素敵なことを、〝あの〟百目鬼さんがしていることが信じられなくて…
でも、カッコよすぎて、本当でも嘘でも幻でも直視なんか出来なくて、突然全身が沸騰してヨロヨロ後ずさった。
夢みたいで、嘘みたいで、素敵過ぎて現実味がなくて。フワフワして、地に足がつかなくて、でもずっと心臓が痛くて苦しくて…
パニック状態の僕に、百目鬼さんは優しく丁寧に、そして力強く示して、一つ一つ教えるように、ゆっくりと僕の逃避する思想を潰していく。
その唇で、僕を追い込んで、お前の居場所はここしかない、ここ以外認めないとくちづけて誓ってくれる。
熱くて恥ずかしくて、もっともっとギュッとして欲しくて、何度もくちづけて、キスして、気がついたら、僕は縋るように強請ってた。
もっと、教えて欲しい、もっと逃げ道を塞いで閉じ込めて離さないで欲しい、要らないなんてもう言わないで…
いつもと違う、カッコいい顔で、いつもと違う、根気強さで、いつもと違って歯の浮くようなイケメンすぎる言葉で…
百目鬼『マキ、お前の全部が欲しい、お前の全部を受け止められる人間になりたい。俺はお前が好きだ。だから、お前が20歳になったら、茉爲宮優絆を俺にくれ』
えっ……何?
20歳になったら、茉爲宮優絆を百目鬼さんに?
百目鬼『過去も未来も、マキであるお前も茉爲宮優絆だった消したい過去も、全部俺のものにしたい、お前が生まれてきたのは、俺と出会うためだったと思えるくらいにするから』
心の中がザワッと波立つ。
隠れていた足元の闇が、ざわついて足にまとわりつく、閉じ込めていたはずの茉爲宮優絆が、マキである僕の足を掴んで言うんだ。
「1番にはなれない。代わりになるために生まれた」
飲み込んできた見ないフリしてた最大の闇が、形になって囁いた。
百目鬼さんには、消すことのできない罪がある。
修二と奏一さんのことは、一生百目鬼さんの心に住み続ける。代わりでも2番目でもないって分かってはいても、百目鬼さんの思考や行動の端々に、修二への気遣いが伺える瞬間、頭で分かってはいても、心がざわつく。自分ではその闇を満たしてあげれない、自分では代わりにもならない…
闇の声に舞い上がった気持ちが地に着いた。足をしっかり地べたにつけて冷静にと思っていたら、僕は気がついた。
温かな腕が、僕を逃さないと腰を抱き、俺のもんだと力強く抱きしめ直された。
そして僕の手に、一枚の紙切れが手渡された…
百目鬼『清史郎に挨拶は済ませた、お前が20歳になっても俺を好きだったら、攫ってもいいと〝約束〟をさっき取り付けた。マキであるお前も、茉爲宮優絆としてのお前も俺が甘やかし倒してやるから。20歳になったらお前を奪いに行く。未来への誓いを、ここで立てる』
紙切れには、こう書かれていた。
〝養子縁組〟
…ようし…えん…ぐ…み…
ようしえんぐみ…
〝家族になろう〟…って言われた気がして、その瞬間全部が繋がった気がした。
アルバムをめくりあって昔話をした。百目鬼さんはそれは自分たちの親が再婚する時、お互いの子供が早く家族になれるように、生い立ちから思い出を共有する家族になるための儀式だと言った。
それを、僕とやったってことは、そういうことで…
生まれた時から今日までのある限るの全ての写真に目を通して、どうやって今の僕になったか聞いてきた。
この世に生まれて、どんどん成長して僕になったのを、百目鬼さんは知りたかったし、自分のものにしたかったんだって思ってたけど…。他にも意味があったんだ。昔があるから今の僕がいる。産まれてきたから、百目鬼さんと出会えて、抱きしめてもらえてる。
百目鬼『夢でも幻でもない。全部、烏磨立会いで書類にしてあるし、後日清史郎の同意書ができる。
マキ…もう、逃げられないからな、俺と一緒に生きてもらう』
見えないものを信じれない百目鬼さんと、見えないものを信じれない僕だから…
形にしてくれたんだ…
でもね、百目鬼さん…
神さん…
熱くて苦しくて、溢れて止まらなくて、今はよく分かんないよ、せっかくくれた書類がボヤけて読めない。…大事な大事な書類だから、濡れてしまわないようにしたいのに、心臓が痛いくらい切なくて嬉しすぎて、ただただ書類を握りしめていることしかできないよ…
百目鬼『マキ、茉爲宮優絆ごと俺のものにするからな』
足元に絡みついた過去が、氷のように冷たかったはずなのに、百目鬼さんの熱に温められて溶けるように足から離れていく気がした。僕の足元はいつも暗くて見たくもなかったのに、今は神さんに強く抱きしめられて、その過去ごと寄こせと言われてなんだか嬉しくなった。今までで見たくもないし見せたくもなかった僕の過去なのに、今は神さんに抱きしめられて見られちゃってることが、嬉しくなってる。
溶けた影はなくなりはしないけど、僕の足元で神さんの思いに温められて、溶けて水みたいになった気がした。真っ黒だったはずのそれは、今は、神さんの世界に強引に引き込まれて、頭上の星空を同じように写してる。
頭上に広がる満天の星空。
足元にも煌めく星々を写して。
僕は、神さんの腕の中にいる。
僕を好きだと言ってくれる。
僕の大好きな人の腕の中に…
マキ「ん……」
ぬくぬくの気持ちい毛布の上から強く抱きしめる心地いい人肌の重み。
その匂いと肌の感触と抱かれ心地がたまらなくて、眠気で開かない瞼のまま、もっと顔を寄せたくてすりすり寄り添う。
筋肉質の大きな腕が、僕を迎え入れてくれるように抱きしめ直してくれて、僕は気持ちよくてふにゃっと笑いながら、また幸せな寝息を立てる。
すると半分夢の中なのに、確かな感触が僕の猫っ毛の髪を優しく撫でてくれて、気持ちよくて幸せで、もっと触ってほしくなってしまう。
僕を撫でる大きな手はそれを知っているみたいに、チュッとおでこにキスしてくれた。
やだ…もっと…
離れていく唇が切なくてモゾモゾしたら、もう一度おでこにキスしてくれた。
ふふ…嬉しい…
甘やかすような唇がもう一度くちづけてくれて、僕は嬉しくてもっともっとと擦り寄ると、唇は、僕の開かないまぶたに、頬に降りてきて、僕は我慢できなくなった。
迎えるように唇で擦り寄って、ふにっと触れた唇は、もう一度僕の唇に戻ってきてくれた。
マキ「…ん…っ…」
気持ちい…、へへ…気持ちいいなぁ…
神さん…、神さんの荒れた唇、美味しいよぉ
百目鬼「…こら、もうそろそろ起きないと、朝ごはんまで食い損ねてまた襲っちまう…」
マキ「や…、もっと…」
離れたくない、離して欲しくない、もっと繋がってたい、もっと熱く溶けて、神さんの腕の中にいたい…
もっと…さっきみたいに星に囲まれて…
…。
その時ふっと見上げた天井は、星の一つもない、真っ白な天井だった。
マキ「えっ!?」
急に目が覚めて辺りを見回したら、そこは百目鬼事務所のある、自宅三階の寝室。
さっきまで星に囲まれてたのに…
百目鬼「…おい、まさか今、夢かも、とか思ったのか?」
マキ「えっ…と…」
何か確信が欲しくて目だけキョロキョロした。
僕がわかるのは、自分の下半身が痺れて動きそうもないってこと、身体中キスマーク。
不機嫌になった神さんの顔…
それからそれから…
何もつけてない神さんの腕…
腕…
あっ!
腕時計は?
夢じゃないなら腕時計はどこ?!
百目鬼「…、まぁ、一回でお前の考え方を変えれるとは思ってなかったけど…、さすがに翌日もダメとはな…」
マキ「ち、ちがうよ…、あの、僕…」
チラチラ神さんの腕を見たから、神さんは僕が何が言いたいのか気がついてくれた。だけどイラついた顔はそのまま、ベッドサイドを指差した。
そこには、たくさんのぬいぐるみの中に、二頭並んだライオンが、仲良く腕時計を持っていた。
神さんに上げた僕からのプレゼントのビジネス用のシックな文字盤の青い腕時計と、僕が神さんに貰ったアンティーク調の文字盤の青い腕時計。
マキ「…ぁ…夢じゃなかった…」
キラキラ輝く腕時計は、ちゃんとそこにあった。
百目鬼「マキ、お前ってやつは…」
マキ「あっ、ち、違うよ、夢を見て、360°星に囲まれて神さんにキスしてもらう夢をね…」
今さっき見た夢も、昨日のプラネタリウムの世界観だったから一瞬慌てたってだけだったけど、神さんは、昨日の出来事を僕が夢だと言ってるって勘違いして、猛獣のように瞳を光らせた。
百目鬼「いいさ、もう一回教え込むまでだ。さっきももっとって強請ったろ」
マキ「アんッ…、じ…んさん…、下半身痺れて動けないからお手柔らかに…」
百目鬼「淫乱、キスの話をしてるのに、何腰くねらせてるんだ。そうか欲しいのか、だったらたんと喰え!」
マキ「ああんッ、おっきいの…、いきなり…」
百目鬼「欲しがったくせに」
マキ「んん…、神さん…好き…」
百目鬼「俺の方が好きなんだぞ」
マキ「ああっ…」
本当だ…、何もかも。
夢じゃない…
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