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溺愛8
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修二に言った事を忘れたわけじゃない。
修二は、僕に似てた。
願いを諦めて、片思いをどこまでも胸に秘めておこうとするとことか、相手に尽くしちゃうとことか。
だから、修二の願いが分かったし、むつと華南と付き合った後に拗れた時も。きっと僕ならこう思う、こうして欲しいと思ってると冷静に分析できたし。むつと華南の事も冷静に見れたから、どう助言したら3人が上手くいくか分かった。
ただ、修二は、僕にはない純粋で可愛らしい部分をいっぱい持ってた。だから臆病で脆い。
むつや華南を巻き込まないように色々頑張ってたみたいだけど、精神的にも力でも、直ぐに敵に付け込まれて、ピンチになると周りを助けようとして自分で自分が犠牲になるようにするのに、心はそれに耐えられない。
過去に僕が解毒剤を持ってた時、あの時もしも僕が解毒剤を持って行かなかったら。修二は、百目鬼さんの前で耐えられずに壊れてたと思う。
自分の限界を修二は見誤ってた。
でも、僕は違う。
例え、誰に犯されたって辱められたって、心に傷はできない。僕は平気だ。
だから、ずっとヘラヘラ出来てた。
…だけど…、神さんを好きになっちゃた。神さんと付き合えるようになって、神さんが僕の中で大きくなって、好きで好きでたまらなくなって。…僕は、神さんにだけは、心のコントロールが効かなくなった。簡単な事で傷つくし、些細な事が不安で仕方なくて、泣いてばかり…。
神さんに嫌われたくない。
神さんの嫌がる事はしたくない。
神さんの理想の恋人になりたい。
今までの自分じゃ考えられないくらい感情的になって。信じられないくらい脆くなった。
どうしてだろう?
修二はこんなに綺麗で温かくて強くなったのに…
僕は、神さんにふさわしい人間になれない。
壊れやすくて脆かった修二は、今は大人の男に変わってきてる。
僕は、僕を好きだと言ってくれた神さんに、後悔して欲しくない。もう、要らないなんて思われたくない。
どうすればいいのかな?どうすれば神さんに喜んでもらえるかな?
修二みたいになりたい…綺麗で温かい存在に…
奏一さんみたいになりたい…凛とした強い男に…
マキ「……どうしたら、修二みたいになれるかな?」
修二「…マキは、僕ちゃんにはなれないよ」
マキ「知ってる。でも、憧れるんだ…修二みたいに、優しくて温かくて、真っ直ぐで強くなりたい…。奏一さんみたいにカッコよくて強い人になりたい…」
今まで、こんな風に人に憧れる事はなかった。
人の気持ちが見え過ぎる分、側にいる人間を選んだ。
修二や、奏一さんは特に憧れる。
泉やむつにも、すごいと思う事がある。真っ直ぐ嘘をつかない。泉は正直で賢いし、むつはがむしゃらに熱い男だし。他にも、華南は同じ年なのに、物事を大きく見据えて待つ事ができて、包容力もすごい。賢史さんだって、あえてチャラケてるだけで、ちゃんと現状の先を見てる。まぁ、スケベで悪戯好き過ぎるけど。
みんなみんな、憧れる。みんなの良いところみんな見習ってそうなれたら、神さんをもっと安心させてあげられて好きになってもらえるんじゃないかと思っちゃう。
修二「兄貴には僕ちゃんも憧れるし、兄貴みたいになりたいけど、僕もマキも兄貴にはなれないよ。それに、兄貴もマキにはなれない。百目鬼さんは、マキが好きなんだよ。僕でも兄貴でもなくて、マキを好きになったんだ。マキは凄く可愛し、優しいし、色々教えてくれるし、あっ、エッチな意味じゃないからね」
優しくも真剣な顔してた修二が、羞恥で顔を真っ赤にして僕を睨む。
ハハッ、やっぱり修二はいつまでも初々しくて可愛い。
修二「なんでも先読みして、どんなことにも対応できる柔軟性があるし強いけど。それは全部自分に嘘をついてる姿だ。百目鬼さんは、相手の…マキの全てを知りたいし見たいから、素直になれって言うけど、それは、素直じゃなきゃ好きじゃないって事じゃないよ。百目鬼さんは、マキに甘えて欲しいんだよ。全部預けて欲しいんだよ。
……マキはやっぱり、僕や兄貴の事が気になる?モヤモヤするの?」
少しだけ困ったような優しい顔が、僕を覗き込む。
違う。修二を困らせたいんじゃない…。ただ…
マキ「…、モヤモヤするわけじゃない、嫉妬してるわけでもないよ。だって、僕が百目鬼さんを好きになったきっかけは、百目鬼さんが一途に修二を好きで、1人で拗らせちゃうくらい好きで好きで、葛藤してる姿だもん。今も、修二や奏一さんを大事にしてる百目鬼さんの姿だもの。誰かをずっと大事に思う事ができる百目鬼さんの心を好きになったんだもん」
こんな曝け出したことを言ってる自分がいる。
不思議な感覚だ。思ってることをそのまま口にするなんて…。でも、神さんと約束した、もっと素直になるって…、神さんは、素直な子が好きだから…
修二「んー。それは、ちょっと違うかな?」
修二は、可笑しそうにそう言ってクスクス笑い出した。
修二「百目鬼さんは、今、僕や兄貴がマキの側に居ると凄い嫉妬した顔で『近いッ!触んなッ!』って感じで睨んでくるんだよ」
マキ「…?……え?」
ふえ?…修二は何言ってるの?
修二「ふふ、信じられないって顔してる。だったら試してみようか?」
マキ「試す?…」
キョトンと瞳を瞬いた僕に、修二は楽しそうに僕の手を引いて建物の陰に隠れて携帯を取り出して、何やら百目鬼さんにメールを送った。
なんて送ったのか聞こうとしたら、10秒開けずに修二の携帯がけたたましく鳴り響く。
修二は、僕に見えるように電話してきたのが百目鬼さんだと教えながらニコニコしながら静かにって口元に人差し指を当て、そのままスピーカーで通話ボタンを押した。
修二「…もしもし」
百目鬼『今すぐ迎えに行く』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、超不機嫌な百目鬼さんの声。いったい修二は百目鬼さんになんてメールしたんだろう?
修二「迎えに来なくていいよ。僕ちゃん達の家に泊めるから。むつのマッサージがよっぽど気持ちよかったんじゃないかな?気持ちよさそうに寝ってるし、今起こしたら可哀想だよ」
僕、むつにマッサージされて寝ちゃったことになってるのか…。でも、なんでそれで不機嫌?
修二「僕ちゃん家に着替えも置いてあるし、起きなかったら華南がベッドまで運んでくれるし。さっきマキが居るなら兄貴も晩ご飯一緒に食べたいって言ってたし、起きた時帰るって言うなら、兄貴と一緒に送るよ」
百目鬼『マキは明日大学だ。晩ご飯はもう支度してある。今もう車を出したから30分で着く』
えっ、もう出たの?まだ電話して40秒位しか経ってないよ。…ってか、30分って、普通車では40分くらいかかるんだけど…。
修二「そう、分かった。百目鬼さん仕事してるし、マキに毎晩ご飯作ったり大変かと思って」
百目鬼『そんなこと一度も思ったことない。俺は楽しくてやってる、マキは食わしがいがあるからな』
修二「そっか、分かった」
百目鬼『……修二』
修二「ん?」
百目鬼『…マキは、何か悩んでるのか?』
不機嫌だった声が、急に弱気に変わった。
声を聞いただけで分かる。強面の顔に、困ったように寄せられる眉。悩み苛立ち葛藤する瞳をしながら、優しくあろうとするその表情が困り眉のまま不器用に微笑む姿が、僕は大好きだ。
大好きだけど、こうして携帯越しに聞く声は、なんだか切なくて胸が締め付けられる。
百目鬼『何かあるなら言ってくれ、なるべくマキ本人と話しをして解決したい。こんなことお前に頼むのはずうずうしいかもしれないが、マキのためだと思って、俺が何かやらかしてるなら、守秘義務で言えないなら〝やらかしてる〟とだけでも言ってほしい』
僕は…
何を怖がってるんだろう?
こんなに優しい神さんを困らせてまで…
修二「ずうずうしくないよ。どんどん聞いてよ。マキのこと大事にしてるって分かって嬉しいよ。
マキは、今眩しがってるだけだから、長いトンネルから抜けて百目鬼さんに導かれて陽の下に出るのにビックリしてるだけだよ。百目鬼さんは何もやらかしてないから安心して。マキはね、僕ちゃんたちと一緒にいても、百目鬼さんの話ばかりするし、お喋りしてない時も百目鬼さんの事ばかり考えてて、最近は、百目鬼さんにプロポーズされたってニヤニヤウキウキし過ぎて、むつに怒られてるんだよ。可愛いよね」
百目鬼『…ああ、喰っちまいたいくらないな』
ふえぇええッ!?
にゃにを修二相手に言っちゃってんのッ!
神さん!!
修二「あはっ、僕ちゃんは食べちゃうなんて勿体無いことしないな、じっくり観察して、ギュってしていっぱい可愛がっちゃう♪」
百目鬼『おい、やめろ。それは俺の特権だ。お前はイチャつく相手が違うだろ。…修二、お前随分変わったな、その発想、むつや華南に影響されてるぞ』
修二「百目鬼さんも、変わったよ。マキの影響だね」
百目鬼『……ああ。マキと出会ってなかったらと思うとゾッとする。…もう直ぐ着くから、切るな』
そうしみじみ言って切れた通話に、修二は満面の笑みで僕を見つめ。
僕はといえば、修二を見れないほど顔が熱くて仕方ない。熱くて心臓がバクバクいってて、もう、ふっとあしてるんじゃないかくらい中身から溶けてしまいそう。
神さんの事、毎日好きになる、毎日毎日好きになって、これ以上ないと思ってるのに、神さんは平気でさらに僕を惚れさせる。
僕ばかりが溺れて、溺れた先でさらに溺れて溶かされて、僕は、神さんの腕の中で…
どうしよう…。
僕…
マキ「車の中で神さんの事襲っちゃいそう…」
修二「もぉー…、マキってば、照れて恥ずかしいからって下ネタで誤魔化さないの!」
マキ「えへへへへ」
両手で触れた自分の頬は、熱くて、きっともう神さんの事を考えただけで、とろけたように笑っちゃってる…
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