アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
溺愛END
-
1度目に僕のアルバムを開いた時、写真を指差して喋るのは神さんだった。
神さんが質問して、僕が答える。後はだいたい写真の下に、なんの写真で何があったのか清史郎さんの字で書いてあった。
清史郎さんと一緒に過ごした時間を見るのが嫌な訳じゃない。清史郎さんは僕に良くしてくれた。綺麗な服を着せてくれて、オモチャやゲームを買ってもらって、ちゃんとした教育もマナーも教えてくれた。本当の親じゃないのに親以上に良くしてくれた。感謝してる。
僕の思い出は、どれも不幸だった訳じゃない。
ただ、成長するにつれて母親の面影を濃くする僕に、清史郎さんが母親のマリア姿を僕に重ねた日から、僕自身を見てくれる人が居なかっただけ。
僕自身も、自然と自分を見せる事がなくなっただけ。
それが僕の当たり前で、普通の事だった。
今、改めて神さんに、僕のアルバムを見せる。
寝室のベッドの上で、神さんに寄り添って、一枚一枚指差し。覚えてる限りの事を話した。
アルバムの中の僕が成長していき、とあるページに差し掛かった時、写真には無い事も口にする。
マキ「この後、女の子に間違われて公園に連れ込まれちゃったりしたんだ。なんともなかったけど、清史郎さんは取り乱しちゃって、僕の事大事だって毎晩心配して抱きしめたり、無事だったかお風呂で裸をチェックしたり。僕、ドキドキしちゃったんだよね。僕は清史郎さんにこうゆうこともっとされたいって思った。この時かな、自分がそういう意味で清史郎さんに恋してるって思ったの」
百目鬼「…そうか」
神さんは、眉を寄せて痛々しそうに静かにそう言うと、どう言って良いのか分からないって顔してた。
別に何を言って欲しい訳でもして欲しい訳でもない。ただ、自覚したってだけだから、ただそれだけの事。
神さんは僕の頭を抱き寄せて、大きな手で優しく撫でてくれた。神さんは、言葉がうまく出てこない時、良く頭を撫でてくれる。力加減を気にしたちょっと戸惑った手つきで……。僕には、それだけで充分過ぎるくらいなんだよ。
猫みたいにゴロゴロすり寄って、大きな手に甘えてみる。ずっとこういうのは良くないと自分に言い聞かせてた。僕に優しくしてくれる手は、ずっとそこにある訳じゃないから…。でも、神さんはきっと、たぶん、きっと、ずっと…。この先も僕の頭を撫でてくれると思う。だから、神さんには、甘えて良いんだ。
神さんの大きな手が僕の頭を優しく撫でて、猫っ毛の髪に何度も触れる。それが気持ち良くて、ゆだねるように目を瞑ってうっとりする。
優しい手が、僕の頬に触れて振り向かせ、神さんが困り眉で僕にキスしてきた。
マキ「ん…ぁ…」
慰めるような優しいキス、優しい指先。
それなのに眉間にシワの寄った人を睨むような顔して、神さんは内心戸惑って困って葛藤してる。
こんなに可愛くて、優しいキス、した事がない。
恋人にする、相手を愛しむくちづけ…
神さんが僕にくれる愛情…
マキ「神さん…、好き…」
百目鬼「…なんだ…、話し疲れたか?猫みたいにゴロゴロして。…よしよし、甘やかしてやる」
マキ「うん、いっぱい甘やかして」
いつもふざけて言ってる時とは違うって、神さんは気づいてる。だから、本当にミケを相手にするみたいに慎重に慎重に優しい手つきで僕を撫でて、抱きよせる。こんなに優しいのに、その内側は葛藤して大変なことになってるみたい。
百目鬼「グッ…ぅ…、どうしたらお前は癒されるんだ?」
とても優しいことを言ってるのに、噛み合わない険しい表情。僕は今すぐ押し倒されてもいいんだけど、神さんが僕を甘やかしたい時したいのは、僕の望みを叶えること。
マキ「神さん…〝僕〟を側に置いてくれてありがとう」
百目鬼「は?…お前」
マキ「〝僕のこと〟好きになってくれてありがとう」
〝僕〟を見てくれた…
(茉爲宮優絆)
〝僕のこと〟を好きになってくれた…
(マキ)
この先も一緒にいてくれるって約束をくれた…
百目鬼「おい、なんだその言い方は…」
神さんは、僕の言った意味を理解できずに勘違いしたみたいで一気に不機嫌になった。
でもいいんだ。僕も、別に自覚してなかった。茉爲宮優絆なんて消えちゃえばいいと思ってた。最初に曝けだせと言われ、茉爲宮優絆を見せろと神さんに言われた時も、嬉しくなかった。別に僕は、あの時のことをなんとも思ってないから、可哀想でも不幸でもない、ただ、誰の1番にもなれない自分を見ていたくなかった。だって、見てしまったら心がザワザワして軋むから…。
何にでも笑って済ませられる強い僕(マキ)が、脆くて弱かった僕(茉爲宮優絆)に戻ってしまう…。
あえて理由をつけろと言われたら、そんな感じ。
別にこんな風に深く悩んでたわけじゃない。
見ないようにしていた、無かったことにしていた。
だから、それだけ。
神さんはそれを許さない。
そして好きになってくれた。
百目鬼『過去も未来、マキであるお前も茉爲宮優絆だった消したい過去も、全部俺のものにしたい、お前が生まれてきたのは、俺と出会うためだったと思えるくらいにするから』
僕が生まれてきたのは、神さんと出会うため…
そうだったら素敵だね…
百目鬼「お前は、まだそんな風に思ってるのか、好きになってくれたとか、側に置いてくれたとか。お前の捻くれた考えがすぐ治るとは思ってないが…」
マキ「違うよ、神さん」
僕はそんな神さんだから心から笑えるんだと思う。
マキ「あはっ、捻くれて受け取らないで。普通に、言っただけだよ、好きな人に好きだって言ってもらえるって素敵なことでしょう?」
僕も神さんも、まだまだこれからだと思うけど。
ねぇ修二…。修二やむつや華南みたいに、キラキラした笑顔が、僕と神さんにもできる日がくるよね…。
百目鬼「……」
マキ「どうしたの神さん、ポカンとして」
百目鬼「…ぁ…あぁ。そっか…そうだな。好きな人に好きだと言われるのは、とても難しい事だな…。ボソボソ、(なんつう眩しくて可愛い面しやがるんだ!不意打ちはやべーだろ!喰われちまいたいのか!)」
マキ「ん?何?」
百目鬼「い、いや。なら、俺もだな」
マキ「えっ?」
百目鬼「お前に好きになってもらえて良かった。お前と出会えて良かった」
修二…。
今なら分かる。
心臓が焼けつきそうなほど焦がれて、壊れちゃいそうなほどドキドキして、苦しいくらい神さんが好きだから、その神さんが、こんなに優しくて愛しい眼差しを僕に向けてくれる日がか来るなんて…
幸せで、心臓壊れちゃいそう…
百目鬼「そうだ、写真を撮ろうか」
マキ「え…」
百目鬼「お前と2人で写ってるもの〝は〟無いからな」
マキ「2人で写ってるもの〝は〟?」
疑問を投げかけると、神さんは急に何かを思い出して慌てだした。
マキ「え?何々?百目鬼さん僕の写真持ってんの?」
百目鬼「ぅッ…、知らん!持ってない!」
マキ「やだやだぁ♪持ってるから怒るんでしょ♪」
百目鬼「知らん!煩い!ニヤつくな!」
マキ「何々?隠し撮り?僕の裸とってオカズにしてたの?」
百目鬼「ざけんな!んな下衆いことするわけねーだろ!裸なんか撮るか!!」
マキ「あっ、分かった、寝顔?僕の可愛い寝顔?」
百目鬼「誰がよだれ垂らして寝てるガキンチョの顔なんか撮るか!!ふざけてんなら写真は撮らなくていいんだな!!」
マキ「やぁん♪撮る撮るぅー♪」
百目鬼「可愛くない顔すんじゃねぇ!!」
マキ「顔は生まれつきだもん、いつでも神さん好みに整形するよ♪」
百目鬼「クソ馬鹿野郎が!そんな勿体無い事すんじゃねぇー!!」
マキ「えへへ♪じゃあ可愛い?」
百目鬼「うるせー、撮るからな、グダグダ言うなら俺1人で撮るからな!」
マキ「ヤダヤダ!写る!写りたいです!」
神さんの首に絡みついて、携帯で自撮りしようとしてる神さんと同じフレームに入るようにほっぺをくっつけてピースサイン。幸せなこの時間が、この写真に切り取られて、何年後かに、神さんと2人でなぞるように見る日が来るかもしれない。その時、きっとこの時の事を思い出して、また幸せな気持ちになる。
百目鬼「近い!」
マキ「ラブラブなところ撮ってよ♪僕が神さんに好き好きぃーってしてるところ♪」
ゴロニャンってイチャついたら神さんが耳を真っ赤にして怒ってた。可愛い可愛い神さんは、今日もやっぱりライオンの着ぐるみを着たティーカッププードル♪
神さん可愛い♪大好き♪♪
そんなお花畑の脳みそで熱苦しい僕に、ティーカッププードル百目鬼さんは、睨むように真剣な顔で吠えかえす。
百目鬼「おい、馬鹿マキ。何度言ったら分かるんだ。俺の方がお前を好きなんだからな!!」
マキ「ッ!!!!!!」
ーカシャッ!
百目鬼「おー、おー、真っ赤な林檎面の可愛らしい姿が撮れたな」
ヒィッ!、ギャアァァア¨ーーーーーー!!!!
マキ「にゃ、にゃ、にゃにするのッ!!」
百目鬼「おー、おー、耳がツンツンでしっぽが膨らんで怒ってやがる。それも撮っとこう」
ーカシャッ!
マキ「ちょっ!また撮った!もう怒った!こうなったら神さんの恥ずかしい写真撮ってみんなに送ってやる!」
百目鬼「どわっ!バカ!どこ脱がしてんだ!」
マキ「神さんが僕のフェラに弱いの知ってんだから!」
百目鬼「や、アホ!やめろ!魔性化すんな!馬鹿野郎がッ!!」
マキ「神さんのアヘ顔撮るんだもん♪」
百目鬼「アヘ顏するのはお前だろ!クソ馬鹿野郎がッ!この馬鹿マキッ!!」
ーカシャッ!
ーカシャッ!
溺愛【完】
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
903 / 1004