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(裏)ー芽生えー4
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こんなゴツくてイカツイ男捕まえて可愛いなんていうのはお前だけなのに何言ってんだ!?
呆れて言葉が出ない、本当に意味がわからない、可愛い可愛いって、30のヤクザ顔捕まえて何言ってんだ!?
俺のパニックをよそに、マキの真剣で悲痛な訴えは熱を増す。今にも泣き出しそうな瞳と、人前で弱みを見せたがらないマキが、酔いからか周りが見えてないのか、控え室に入って俺のことを名前で呼び出したあたりからどんどん感情的で幼い口調で必死に訴える。
マキ「僕だって…、嫉妬するし、もっとそばにいたいし…、僕だけにしてほしい…」
俺の服に掴みかかってたマキが、俺に抱きついて顔を埋める。その体は不安からか震えてて、とても痛々しかった。
だが、嫉妬してたのも、怒ってたのも俺のはずなのに、何故マキがこんなに怒ってるのか分からない。
あの、いつも、我儘も欲求も願いも口にしないマキが、本気で賢史に嫉妬してるっていうのもなんだか信じがたい。
もっと一緒に居たい、構ってほしい、それは分かる。一緒に住んではいるが、俺は毎日仕事だし、休みは無いし、今はマキを事務所に長居させないから気にしているだろうとは思っていた。
俺の可愛い姿は見せないでとか、僕だけにしてほしいとか、俺はどうすればいいんだ?全く意味が飲み込めない。
呆然としている俺に、賢史と菫が何やらジェスチャーで伝えてきてる。だが、俺はなんのことを言ってるのか理解できずに困って首を傾げると、菫は呆れて怒り、賢史は馬鹿だなぁって顔して「こうやれ!」と言わんばかりにジェスチャーを強調した。
百目鬼「…」
それでも分からなくて、キョトン顔した俺に、2人は苛立ちを募らせた。
だって、意味が分からねぇ。
酔ってるから普段言えないことを爆発させたのだとしたら、俺はマキに対して上手くやれてなかったってことだ。
そこは、俺が悪いなら反省したい。だがそもそも、未成年の癖にこうなるまで深酒したことに対してはムカつくし反省すべきはマキの方なのに、全く反省しないどころか反発的で、怒ってるのは俺なのに。マキの方が怒ってると言われてもこっちも納得がいかない。
そもそも、お互いの気持ちは、ちゃんと本音で話し合って俺らのルールを決めようと言っていたのに、マキは、こんな風に普通じゃ無い時、理性で本音を押さえ付けられなくなる時にしか本音を言わない。
頑固で意地っ張りなマキのことを少しづつ理解していこうと決めたが、こういう瞬間を目の当たりにするたびに、分かっちゃいるけどムカついて仕方ない。
だが、もう泣かせないと誓った。
もう早とちりや誤解でマキを泣かせないと自分で自分に誓った。
だからここは、マキの話を聞くべきだ。
分かっちゃいるけどイラつくし、聞いてはみたがマキの言ってることはめちゃくちゃだ。
寂しいと思ってるのだけは分かったが、俺の可愛い姿を人に見せるなだの言われて、こんな俺を可愛いだのなんだの言うのはマキだけなのに、俺にどうしろと??
さすがに困ってお手上げ状態で賢史と菫の方を見ると、2人は、〝なんでこんな簡単なことが分からねぇって〟口パクしながら、菫と賢史が抱き合って俺を睨みつけた。
どうやら、「マキを抱きしめてやれ!!」と言いたいらしい。
だが、俺はさっき、マキに手を払われた。
触ったらまた嫌がるかもしれない。
抱きしめてやりたいが抱きしめてやれずに困り果てて眉を顰め、目の前でジェスチャーでアドバイスしながら抱き合う菫と賢史に困惑の表情を向けると、2人は焦れて地団駄踏んだ。
困った大人達の必死のサイレント劇場が行われているのを知らないマキは、顔を俺の胸に埋めながら震えるようなヘラヘラした声で呟いた。
マキ「…今日も…、仕事忙しかった?」
仕事?今忙しいのはマキが1番知ってるはず…
動揺した声のマキの質問に、何か隠されてるとは思ったが、俺は今日、普通に仕事しかしてない。
そうだと答える以外答えはなくて、だが、そうだと答えたら、いけないような空気だってことだけは分かったが、俺は本当に今日仕事しかしてない。
ただ、マキに知られたくない内容の仕事をしたことが脳裏に浮かんだ。
もしかしたらお喋りな矢田が漏らしたか?だが、アノ件に関しては、かなり厳重な緘口令を敷いたし、矢田とマキが2人になる瞬間が無いように檸檬と杏子にも言ってあった。
アレがバレたのかもと思いながら、アレは仕事だから、そうだと答えることは嘘には当たらない。だから頷く他はない。
百目鬼「…あぁ」
マキ「ッ…」
マキの体に力が入った、悲しそうな瞳のマキが、俺を見上げて尋ねてくる。
マキ「…神さん…、さっき言ったよね」
百目鬼「?、何をだ?」
マキ「手を繋ぐのも、肩を抱くのも、撫でるのも駄目だって…」
百目鬼「…あぁ、言った」
確かに言った。スケベな賢史にマキを見せるのすら嫌だ。
そういう意味で答えたのだが、マキは今にも泣きそうに涙を瞳いっぱいためて苦しそうに訴える。
マキ「僕も…嫌だよぉ…」
百目鬼「はッ?!」
悲しそうに歪んだマキの表情、酔った呂律の怪しい口調は幼く辿々しく、だけど必死に俺を見上げてる。
僕も?僕もって?
賢史と俺はしょっちゅう一緒にはいるが、手を繋ぐのも肩を抱くのも……、あっ、肩はある肩は…、俺をからかう時に肩を抱いてニヤニヤ耳元で喋ってくることはあるか…、だが、撫でるなんて気色の悪いことはしてない、……ってか、そこまで賢史のこと気にしてたのか?賢史だぞ?俺と賢史なんてあり得るわけ無いのに…。
脳内で一生懸命アレコレ考えたが、困惑の色ばかりで解決の糸口が分からない。
そんな俺を見て、マキは益々悲しそうで、俺も益々オロオロする一方だ。
マキ「……我儘…だったよね…ごめんなさい…」
マキが、諦めたようにシュンと視線を落とす。
俺は、菫と賢史にガン見されてる中で、恥ずかしいやら訳わからないやら葛藤しながら、何が正しいのか必死に考えて、悲しそうにするマキに優しく声をかけた。
百目鬼「我儘じゃないだろ」
マキ「ううん…、我儘だよ…、仕事だもん…分かってたのに…勝手に嫉妬したりして…」
なんて言えばいい?何を言えばマキは落ち着く、言葉を間違えれば、今にもまた号泣しそうに涙目だ。これ以上、賢史や菫の前で素のマキを晒すのは俺も嫌だ。
百目鬼「…い、言えばいい、お前の嫌がることは、可能ならなるべく減らす。…俺だって色々言ってるんだ、なのにお前の言うことを我儘だなんて思わねぇよ」
マキ「……さっきは、我儘って言った…」
2人きりの時でもなかなか見せてくれない、拗ねた顔。
泣かせたくない、怒らせたくない、だが、拗ねた顔も怒った顔も、泣いた顔も、感情的な表情は俺のものなのに、今、貴重なマキの表情を、菫と賢史に晒してて。
嫉妬でイラついてる場合じゃないし、今こんな状態なのに、涙目で訴えるマキの姿に猛獣が暴れだしそうになってる場合でもないのに。
俺を好きだと全身で訴えるマキを、今すぐどうにかしてしまいたい衝動と、菫や賢史から隠したい気持ちと、なんとかしてマキをなだめなきゃという考えと、なぜこんなになるまで飲んだんだという怒りと、俺の頭の中は嵐の中。
百目鬼「…ッ…、さっきのは違うだろ、…あんな大勢の獣の前でキスだとか無理だろ」
マキ「……」
納得がいってないって顔するな!シラフのお前なら俺の言いたい意味が分かったはずなのに!
百目鬼「家に帰ったらいくらでもしてやる」
賢史やる菫の前なのにこんなことを言えば、後日からかわれ倒される。だが、こう言わなければ、マキは落ち込む一方、苦渋の選択だったのに。
マキ「……僕…」
なんで落ち込むんだ!?
マキ「…嫌だったんだ…、お仕事でも…」
百目鬼「分かった、賢史にはベタベタすんなって言っておく」
マキ「………ゃん」
百目鬼「ん?」
マキ「…ユリ…ちゃんと…、腕組んで歩いたり…、抱きつかれたり……デートみたいで…僕…」
!!!!!!!!!!
マキの口から溢れた衝撃の言葉に、ギョッとしたが、俺より先に反応した菫の雄叫びが響き回る。
菫「まぁあッ!!なんてことッ!?」
いやいやいや!!
睨まれて必死に首を振ったが、菫は詰め寄って睨んでくるし、その後ろで賢史が複雑に俺を見てくるし…
いやいやまて!!
アレは!
百目鬼「仕事だ!!」
菫「デートってなんなの?!」
百目鬼「そんなもんする訳ねぇだろ!」
どうゆうこと?どうゆうこと?って詰め寄る菫を落ち着かせていたが、その後ろの賢史の無言の眼差しが痛い。
賢史「…」
百目鬼「だから!ちげーよ!」
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