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ー芽生え歌うー
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神さん…
神さんが、翼君をヨシヨシしてた。
神さんが、ユリちゃんと腕を組んで歩いてた。
神さんは、お仕事忙しくて、賢史さんと仲良しで、一緒に肩を並べる檸檬さんがいて、事務所を守る杏子さんがいて、送り迎えする矢田さんがいて…
神さんは僕と一緒に暮らしてくれてて、毎晩一緒に眠ってくれて、ご飯作ってくれて、嫉妬してくれて…
お仕事忙しいのに優しくて…
甘やかしてくれるけど、毎日毎日忙しい…
それが普通の事。
仕方のない事。
清史郎さんの時は、朝しか顔を合わさないとか当たり前で、ご飯は一緒に食べなくて、僕にとってはそれが当たり前だった。
だから今、神さんと過ごせてる時間はとても贅沢な時間なんだ…
お仕事だから…
忙しいから…
一緒にいる時間があるのに、僕は贅沢な事考えてばかりいる。いい子でいれない。
神さんが、賢史さんに背中を預けて、依頼人の子の翼君にヨシヨシして、協力してもらったお礼にユリちゃんと腕組んでお買い物…
お仕事だから…
でも、嫌だよ
もっと一緒にいたいよ…
可愛い神さんを独り占めしたいよ…
百目鬼『…キ…、マキ…』
あっ、百目鬼さん!
お仕事お疲れ様!
百目鬼『マキ、好きだ』
え?
百目鬼『マキ、…好きだ』
ぇえッ!?
ど、ど、どうしたの急に!!
百目鬼『マキッ、……好きだ』
真剣な顔して迫ってこないでよ!
そんな何度も言われたらッ!僕、爆発しちゃうからッ!!
百目鬼『マキ、…俺は、伝わりづらいって言われるが、こんなにお前を好きなんだぞ』
ッッッーーーー////!!!!!
マキ「ッッッ!?……ウッ…」
気持ち悪い…頭痛い…
え?…え?
寝てた?
気がついたら、頭がガンガン痛いし気持ち悪いし、体は思うように動かず鈍痛がする。そういう動けない夢を見てるのかと思ったけど違った。
見慣れたリビングの天井。部屋に漂うのは、お醤油と油の混ざった炒めものの匂いに、台所で誰かが調理してる気配と音。
あ…れ…?
どうしてこんなところに寝てるの?
ソファーなんて、神さんとの喧嘩した日以来。
別れたいのかと神さんに聞かれた日以来…
なんかやだ…涙出そう…
あれ?…
あれれ?
朝?昼?
窓の外の明るさからして、朝ではない。
だとすると、どうなってる?
あぅ…頭痛い…
マキ「う¨ッ…ぅー…」
百目鬼「どうしたマキ!?吐きそうなのか?」
突然視界いっぱいに神さんの心配そうな顔が現れて驚いた。
僕はきっと二日酔いでひどい顔なんだろう、慌てた様子の神さんが急に両手で受け皿を作り、僕の口元に差し出した。
えッ?えッ?!
まさかここに吐けって事!?
絶対やだッ!!
思わず神さんの手を払いのけたら、体のバランス感覚が分からなくなり、グラッと体が傾く。だけど気持ち悪いし頭は痛いしでそのままソファーから落ちそうになったら、神さんがすかさず支えてくれたから、僕の心臓がドキッと跳ねた。
夢の中の告白と同じ至近距離。
耳にこだまする甘い願望。
百目鬼『マキ、好きだ』
低い低い低音ボイスが僕を求めてくれる夢。
どうしよう!思い出したらドキドキしちゃって顔見れないよ!!
思わず俯いたら、僕の体がフワッと浮いて、神さんに抱っこされてトイレに連れてこられた。
神さんの心配そうな顔がずっと目の前で、僕を壊物みたいに優しく優しくトイレに下ろしてくれて、僕はドキドキドキドキ乙女思考だったけど、トイレに入ったとたん気持ち悪い事を思い出した。
えづきそうな僕に、神さんは背中をさすってくれたけど、恥ずかしさで顔が熱くて泣きそう!
神さんの前で吐く姿なんて見せられる訳ないじゃんかッ!!
せっかく心配してくれた優しい神さんを、拒絶してトイレから追い出してしまった。
ッて!!
うわーん!!神さんは心配してくれただけなのに!こんな風に拒絶したら誤解されちゃうよ!!
頭痛いぃぃ…
気持ち悪い…
いったいどこまで飲んだんだっけ??
こんなになるまで飲んだら神さんに怒られるよぉぉ…
……。ん?
百目鬼『おいマキ!貴様未成年の癖に!ふざけてないで答えろ!』
あれ?
脳内にこだまする神さんの怒鳴り声。
僕、怒られた…、夢の中で…
あれ?
夢だよね?
えっと、確か…
僕は飲み会にいって…、ムカムカしてたから飲み比べに参加してお酒飲んで……、キッチリ勝って……
あぁ…それから……
それから…飲み過ぎだって礼ちゃんとみみちゃんに怒られて、お迎えを頼んで…泉が来てくれて…。
それからそれから……
記憶をたどってみると、泉がお迎えに来てくれたところで気が抜けてプッツリ途絶えてる。泉に絡んでお説教された気もするけど、いつもの事過ぎて何言われたか覚えてない。
泉に会ったら気が抜けて、一気に酔いが回って、ふわふわしてて、寝ちゃった気がする。
そうだ、寝ちゃったんだ。
そんで神さんに怒られる夢見て、思わずいつも思ってる事ぶちまけちゃってメソメソしちゃって、神さん困らせる夢。夢だから神さん凄く甘々に優しくて、可愛い可愛い、好きだ好きだって何度も言ってくれたんだ。
で?
さっきまで見てた夢が夢で…。
ん?
なんか冷や汗出てきた…
夢だよね?
現実は、泉に送ってもらって神さんに引き渡されて…
神さん激怒させて別々に寝たからソファーにいたんだよね?
僕がソファーにいたのは神さんが怒ってたから…
…。
…。
…だと …したら…
なぜ僕の体は甘く痺れてるんでしょう?
…なぜ…、髪が濡れて、洗ってあってシャンプーのいい匂いがするのでしょう?
なぜ、僕の耳は、夢で聞いたはずの声が今も鼓膜を震わせるみたいにハッキリ鮮明に思い出すのでしょう?
…………、それはッ!!
それはッ!…今、夢に見たと思ってた事が現実だからッ!?!!
血の気が引くような、顔が燃えそうに熱いような、めちゃくちゃな感覚が襲いかかる。
走馬灯のように思い出すのは。鮮明すぎる僕の愚痴と泣き言の数々。
ボク…
泣き叫んでた……
『『僕だって神さん独り占めしたいもん!もっと構ってほしいし、抱っこしてほしいし、離れたくないし、よしよししてほしいし、ッッッ、料理出来るようになりたい!神さんを癒したりしたい!お仕事助けたりしたい!神さんを守りたい!僕が!神さんを守るんだもん!!僕だって、僕だって、ぼ…ッッッ…!!僕だって!神さんの〝ためだった〟になるんだからぁッ!!』』
百目鬼『マキ、好きだ』
『『じぃんさぁん、だぁあーいすぅきぃ♪』』
百目鬼『マキ、…好きだ』
『『じぃんさんのぉー、消したい過去もぉ、これから先もぉ、全部僕のものなんだよぉ。神さんがぁ、生まれてきたのはぁ、僕と出会う〝ためだった〟ってぇことなんだぞ』』
ギィや¨あぁあアアーーーーーーァァッ!!!!!
現実じゃんッッッ!!!!!!!!!!
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