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ー芽生え歌うー12
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雪哉さんのところのケーキはどれもキラキラして、いつも美味しそう。お姫様への宝石をコンセプトにしてるから、お店に来てるお客の女の子達は、瞳をキラキラさせてケーキを選んでる。
美味しそうな甘い匂いに囲まれて、嬉しいはずなのに、今日はその甘さが逆に切ない。
ユメ「あの、マキさん?でしたよね」
レジのところに立ってた、さっきの可愛らしい店員さんが、僕を見つめてニコっと微笑んでお菓子の入ったカゴを差し出してきた。
確か名前は、ユメちゃん。
ユメ「お買い上げ頂いたお客様にお一つお配りしてます。どうぞ選んで下さい」
マキ「あっ、どうも、ありがとうございます」
カゴの中はクッキーが入ってて、どれも綺麗な模様のマーブルクッキー。真ん中に色とりどりのゼリーがくっついてて、どれを食べようか迷っちゃう。
ユメ「百目鬼事務所さんにはいつもご贔屓にして貰ってて。なのに、うちのパティシエがテンション高く絡んですいません。マキさんも百目鬼事務所で働いてらっしゃるんですか?それともモデルさん?」
マキ「ふふっ♪ただの大学生です。前に百目鬼事務所でアルバイトしてたんで、事務所のみんなとは今も仲良しなんです」
ユメ「あぁ、百目鬼事務所の皆さんとても気さくで良い人たちばかりですよね。特に百目鬼さんなんかすっごく優しい人ですし。百目鬼さん、毎年事務所のみんなの誕生日ケーキとか、ご家族へのケーキとか、特注で雪哉さんに注文して下さってて、中には甥っ子姪っ子にキャラクターケーキとか」
マキ「キャラクターケーキ…」
思わぬワードにキョトンとしたら、店員のユメちゃんがショーケースの中のケーキの見本を指差した。
ユメ「こういうアニメキャラクターなんかを書いたものをデコレーションしたものですよ。こないだは、動物戦隊ガオオォーンのゴレンジャーでした」
マキ「ふえ…、動物戦隊…ゴレンジャー…、百目鬼さんが?……ふふふふ、可愛い♪」
ユメ「百目鬼さんって可愛い方ですよねぇ」
ニコニコ可愛らしいユメちゃんはとても人懐っこくて、話もうまい。
僕は、数回百目鬼さんとこのケーキ屋に買い物に来てる。だからかな?ユメちゃんは意図的に百目鬼さんを褒めてる気がした。だとしたら、とても商売上手。
僕とユメちゃんが話してたら、ケーキを箱詰めをし終わった雪哉さんが羨ましそうな顔して頬を膨らませてた。
雪哉「ユメちゃんズルい、もうマキちゃんと仲良し、二人とも大学生だから打ち解けるのも早いのかな?」
マキ「そうなんだ、凄く接客上手だから社員さんかと思った」
ユメ「ありがとうございます♪看板娘のユメちゃん神明大学三年生でーす♪」
そうなんだ、こんなしっかり者で笑顔も明るく自然に綺麗でこんなにトーク上手なのに学生さんなんて凄い。
マキ「僕はマキ。医大の一年生、留学経験あるから年は一つ上」
ユメ「医大生!スゴッ!将来はお医者さん?男のお医者さんなのに白衣の天使になっちゃう」
マキ「ふふっ♪カウンセラーの資格を取りたいんだ」
ユメ「将来までちゃんと見据えてるなんて中身も完璧!!。宜しければID交換しません?ユッキーの最新ケーキ情報お届けしますよ」
ユメちゃんが可愛らしいメモにIDの書いてあるものをサッと僕に手渡すと、隣で雪哉さんが大絶叫。
雪哉「ちょっとちょっとー!どさくさに紛れて何やってんの!俺だって交換してないのにぃー!
俺の方がファン歴長いんだよ、マキ様!俺と交換して下さい!」
告白にちょっと待ったをかけるように割り込んだ雪哉さん、勢いよく抗議したかと思ったら、言いながらポケットに入ってたメモ帳にIDを書き込んだものを僕に手渡してきた。
この二人、息ぴったり、ウケる。
とりあえず。IDを受け取ったら、ユメちゃんが気になることを言った。
ユメ「そういえば、ここから1番近い医大の女の子で、常連さんがいるけど、マキさんの知り合いだったりしないのかな?その人達も心理学専攻してるって言ってましたけど」
マキ「えっ、わざわざ電車に乗って?」
このケーキ屋は、僕の大学から電車で30分以上かかる。
ユメ「うちのお店、去年雑誌に取り上げられて、その時いらした方なんですが、ケーキと雪哉さんをとても気に入って下さって1年半位通ってくださってる常連さんなんです」
ユメちゃんの言葉で思い出したのか、雪哉さんが名前を口にした。
雪哉「ああ、そういえば夏休み明けからしばらく見てないなぁ、確か名前は…、アキラちゃんとみみちゃんだったっけ?」
マジ?
ケーキと雪哉さんのファンって…
礼ちゃんとみみちゃんって、ゲイを嗅ぎつける能力ありすぎじゃない?
マキ「その二人、僕の友達…」
礼ちゃんとみみちゃんが、今の雪哉さんと烏磨さん二人を見たら、もう脳内大変なことになりそうだなぁ…。
でも、礼ちゃんとみみちゃんこっちに1年半前から来てたんだ。
そういえば二人がどこに住んでるか聞いたことないな…、もしかしてすっごい近くに住んでたりして…
ふふっ、まさかね…
僕は、お菓子と紅茶の入った袋とケーキの入った箱を持って、雪哉さんのお店をあとにした。
商店街をトボトボ歩きながら、僕は重たく感じるケーキになんだか切なくなる。
難しいなぁ…、神さんには、心を全部あげたいのに、なんだかいつまでたっても二人のちょうどいい距離にならない。
僕、神さんに気を使われなくていい存在になりたいのに。頑張り屋の神さんに、少しでも癒しになるような存在になりたいのに。
…。
居るだけで癒しになる人
修二みたいになりたいのに…
なかなか難しい…
そんなことを考えながら、百目鬼事務所が見える角を曲がったら、百目鬼事務所の前に百目鬼さんが仁王立ちして待ち構えてた。
マキ「百目鬼さん…」
百目鬼「おかえり、マキ」
神さんは、僕と目が合うまで少し不機嫌そうだったけど、僕と目が合うとホッとしたように優しく目を細めた。
百目鬼「悪かったな、ご苦労様」
そう言って、優しく頭を撫でてくれた。
なんだろう?
この反応。
小さい子が初めてのお使いしてきたみたいな…
マキ「はい、お菓子とケーキ」
百目鬼「ありがとな」
マキ「ふふ♪お使いならいつでもするからいつでも言ってね♪」
百目鬼「ああ、また頼む」
なんだろう?、神さんの喋り方がめちゃくちゃ優しいような、少し不安そうなような…
マキ「じゃあ、僕三階に帰ってるね」
百目鬼「マキ、今日は暇か?」
マキ「?。うん暇だよ」
百目鬼「なら、事務所のみんなにコーヒー淹れてくれないか?」
え?コーヒーなら、杏子さんの方が上手いのに…、杏子さんいないのかな?
マキ「うん♪いいよ♪」
久々に事務所のお手伝いだ♪
お茶汲みだけど♪なんか嬉しい♪
百目鬼「…。サンキューな」
神さんは、凄く優しいんだけど、少しだけ不安そうな目をしながら、僕の頭を優しく撫でた。
なんだろう?
神さんいつもと違う…。
ちょっと心配だけど、そのあまりにも優しい瞳で見つめながらヨシヨシしてくるから、ちょぴっと恥ずかしいんですけど…。
マキ「ッ…、これくらいでお礼とかいいから。美味しいコーヒー淹れてあげるね♪」
百目鬼「お前の淹れたもんはいつでも上手いよ」
マキ「ッ…!?!?!?」
百目鬼「だが、頼むから、火傷だけはしてくれるな」
マキ「も、もうしないもん」
百目鬼「だといいがな…、フフッ」
大きな手が、僕の頭をポンポンとして鼻で笑われた。
困ったような仕方ないなぁというような瞳に見下ろされ、大きなあったかい手が僕の頭に添えられる。
その優しい眼差しは、いつもと違ってどこか甘口で…
優しい優しい神さんはドキドキして困る。
なんだか、僕…、眩暈を起こしそうだよ…
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