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俺たちを壊す媚薬〜修二〜
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8月10日日曜日、15時43分。
僕ちゃんは今。
待ち合わせ駅の公衆トイレ内にいる。
突然現れた男に、トイレの個室に押し込められ、男は僕ちゃんの両肩を掴んで。必死な形相で話し出す。
男「修二さんですよね?」
修二「そうだけど?」
男は、人相も服装も柄が悪いが、困り眉で必死な様子から、危険そうではなかった。
男「お願いします!百目鬼さんと会って仲直りしてあげてください。お願いします!」
百目鬼さん?
この人、百目鬼さんの知り合い?
僕ちゃんが男を睨みつけると、男は、公衆便所の床に膝をつき、額をタイルの床に押し付けて土下座してきた。
男「すいませんでした!!」
えっ?!な、な、何!?
男「お友達が怪我したのはマジに俺のせいなんす!百目鬼さんは関係ない!、俺!いつも百目鬼さんに面倒ばっかかけて!百目鬼さんは寝る間も惜しんで仕事詰めて、やっととった休みだったんす!俺のせいで仲違いさせるなんて!すいません!俺責任とって切腹でもなんでもします!だからどうか!会って仲直りして上げてください!!」
切腹って…、いつの時代の人?
あまりの情けない声と熱意に、毒気を削がれ、男の話に耳を傾けた。
修二「あなたは…」
矢田「矢田です。矢田又三郎っす!」
修二「顔、上げて…。矢田さんは、百目鬼から僕のことを聞いてるの?」
矢田は、土下座から正座に直って、背筋を伸ばし、僕ちゃんを真っ直ぐ見上げる。
矢田「何も。…こないだ電話で言い争ってる時隣にいまして…それで…。今俺があなたにお時間もらってるのも、俺が勝手にやってて。今回チンピラのザコが、華南さんに手を出さないように見張りを頼まれてて…。修二さんが見えたからつい…」
修二「…見張り?」
矢田「華南さんを襲った奴ら、俺が出しゃばったせいで一部捕まえ損なって。俺が百目鬼さんの下っ端だってバレまして、華南さんを俺が助けたから繋がってると思ったみたいで。でも、百目鬼さんあなた達に危害が加わらないように上手く引きつけて、この土地から離れたんです!でも、やつら百目鬼さんが捕まらないからって、こっちに戻ってきちゃって、華南さんや、一緒にいた修二さんも知り合いだろうと…、百目鬼さんをおびき出す材料に狙う可能性があって。でも、安心してください!もうすぐ全部方がつきます。潜伏先を掴んで報告したところッす。今晩にも全員ブタ箱ッす。仕事が片付いたら、帰らなきゃなりません!その前にせめて誤解を解きたくて」
彼の言ってる事は、大筋で兄貴が言ってることと重なってる。だからきっと、本当のことだろう。
修二「つまり矢田さんは僕と百目鬼さんの関係を知らないと…」
矢田「…はい。ただ…会いたかった相手としか…」
修二「悪いけどあの人とはもう会わない」
矢田が今にも死にそうな顔をしたが、同情の余地はない。
矢田「そんな…」
修二「矢田さん、貴方のせいじゃない、僕と百目鬼はもう何年も前から仲違いしてるんです、彼は今回謝りに来ただけ、だからもう会う必要は無いんです」
矢田「…でも…。あの後もずっと元気がないんです!あなたの写真も…」
修二「…矢田さんすいません、僕戻らないと」
矢田「あの!電話!電話は駄目ですか?せめて声だけでも…」
修二「ごめんなさい」
矢田「百目鬼さんは顔は怖いけど!不器用なだけで、貴方を大切に思ってると思うんす!」
修二「…不器用なのは知ってます。ごめんなさい矢田さん」
不器用なのは十分知ってる。本当はいい人だってことも。でも、僕はあの人のパートナーにはなれない。
百目鬼さん、どうか自分とちゃんと向き合って欲しい。自分から目をそらしていては、真実は見えない。
ちゃんと自分と向き合えたら、百目鬼さんにもきっといい人がみつかるよ…
男「へー、百目鬼の大切なお友達?」
矢田「あッ!?」
トイレを出ようとしたら、強面の男たちが出入り口を塞いだ。
矢田はそいつらの顔を見るなり、僕ちゃんの前に立ちはだかり、僕を背中に隠した。
どうやら、こいつら、話に出てきてるチンピラのようだ。
男「チョロチョロするネズミを捕まえようと思ったら、いいもん見っけちまったぜ」
矢田「クソッ!」
男「間抜けだね、あんなあからさまな尾行でアジトが分かると思ったのか?本当におめでたいな、一緒に来てもらうぜ、お二人さん」
矢田「その子は関係ないだろ!」
男「黙れネズミが!」
トイレに現れた男たちに薬品の染みた布を嗅がされ、僕ちゃんの意識はそこで途切れてしまった。
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8月10日16時2分
【奏一sid】
キラリ『…いち…奏一!!』
奏一「…あっ、ああ、聞こえてる」
キラリ『大丈夫?すごい音したよ?』
奏一「ああ、事務所の壁に穴あけちまった」
キラリ『ゴメン…』
奏一「いや、報告してくれ」
キラリ『チンピラが、ココに来てて、華南が攫われかけて、むつと華南を助けたら、同じタイミングで修二も狙われたらしくて、間に合わなかった』
奏一「むつと華南は!?」
キラリ『何ともない、何も知られてない』
奏一「ッ、百目鬼の野郎、何がチンピラは任せろだ!!」
百目鬼にホテルで再会した時、奴は厄介な仕事に首突っ込んでる最中で、修二達がチンピラに目をつけられてると知らされた。
半信半疑でいたが、奴は警察と手を組んで、その日のうちにチンピラを捕まえに行った。ただ、勘づいた数名を取り逃がし、危険が残ったため、百目鬼が情報を流す代わりに制裁を待って欲しいという申し入れを聞き入れた。
『修二達の身の安全が優先だ』
と、真剣な瞳に妥協した結果がコレか。
チンピラも、百目鬼も、ぶっ殺す!!
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