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番外編2ひと夜咲く純白の花の願い
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「大丈夫っすか?気持ち悪いんすか?」
聞いたことのある声に振り返ると、そこには、以前百目鬼と会った時一緒にいた〝矢田〟という男が傘をさし立っていた。相変わらずチンピラみたいな人相で、ダサい色のスーツを着ている。
マキは、突然百目鬼と再会するかもと驚いて、狼狽えた声が出る。
マキ「あっ…落とし物を…」
なんで矢田さんがここに?
まさか…百目鬼さんと一緒?
訳も分からず緊張して、笑顔が作れずキョロキョロ辺りを見回した。
しかし、百目鬼の姿はなく、矢田はマキの隣にしゃがみこむ。
矢田「何を無くされたんすか?一緒に探しますよ」
マキ「…四角い…キーホルダーを…」
矢田は、雨の中一緒に探してくれた。
しかし、キーホルダーは一向に見つからない。そうしてる間に、雨はどんどん強くなり、気が付けば、矢田のスーツのズボンもビッショリ濡れていた。
マキ「あの…、ありがとございます。もう、大丈夫です、諦めます。すいません足元濡れて…」
矢田「あっ、元からっす。大丈夫っす、見つかるまで諦めちゃダメっすよ」
マキ「本当に大丈夫です。ありがとございました」
ニッコリ微笑んで、深々と頭を下げると、矢田は困ったように慌てた。
矢田「あの、お家は近いんすか?送りましょうか?」
マキ「あっ、大丈夫です」
矢田「そ、そうっすよね、すいません初対面の女性の家聞くとかデリカシー無くて、俺、いつもそおいうとこ怒られるんすよね」
女性?この人僕のこと女の子だと思ってんの?僕が誰か覚えてない。
矢田「あの!せめて泥拭くタオル使いませんか?その角曲がったとこに、行きつけのママの店があって…」
マキ「えっ、あの…」
矢田「待っててください!すぐ戻るっす!」
マキ「あっ…」
矢田はマキの話しを一切聞かず、角を曲がって消えた。
戸惑っていたら、1分もしないで、矢田が姿を現した。着物姿の大柄なオカマのママを引き連れて。
マキが驚いていると、オカマの野太い声が響き渡る。
「やぁだぁ!びしょ濡れ!あら?ちょっとあんた怪我してるじゃない!早くこっち来なさいよ!可愛いのに台無し!!」
矢田「え!?怪我?!気づきませんですいやせん!」
矢田のマヌけな声が響き。大柄オカマの勢いと力強さに呆気に取られてる間に、マキは引きずるように連れて行かれた。
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連れてこられた先は、大柄ママの経営するスナック。名は菫(すみれ)。
中には、数組のお客さんと、綺麗とは言い難い、お姉様達が待ち受けていた。
矢田「心配ないっす、彼女達はとても優しい人たちっす、貴方の話をしたら、服を貸してくれるって言ってくれて、遠慮は要らないっす」
矢田が説明してる間に、屈強なオカマに両脇を取られ、更衣室に連れ込まれた。脱がされ、拭かれ、乾かされ、着せられ、何故か化粧された。
オカマのお姉さん達「ジャジャーン♪」
更衣室から送り出され、みんなの前に可愛らしいレースの服のマキが登場。
スカートからは生足がすらりと伸びている。
矢田「お、お、お似合いです」
菫ママ「あらあら、超かわい子ちゃんじゃない♪、温かいスープ作ったからこっちいらっしゃい」
野太い優しい声で、気さくな菫ママ。
貸してもらった服は、女の子物の服で、可愛いブラウスにカーディガン、ヒラヒラスカートだった。
マキ「あ、あの…僕…おと」
男だと言おうとしたら、着替えを手伝った一人のオカマが、マキを引き寄せ耳打ちしてきた。
まりん「ちょっと貴方、そうゆう野暮は要らないのよ、貴方もお仲間でしょ?大丈夫、矢田ちゃんは私たちのこと女の子だと思ってる天然天使ちゃんだから、カミングアウトなんていらないいらない」
物凄い勘違いをされてしまっている…、僕のことオカマ仲間だと思われてる?
見渡すと、菫ママも、店のオカマさん達もニコニコこっちを見ていて、わざわざ否定するのも気まづくなりそうだった。
…まぁ、別にいいか、服貸してもらったし、今だけだし、似合ってるし。
矢田さん僕を女の子だと思ってて。キラキラとした瞳でこっち見てるし、お礼も兼ねて、あのときめきを打ち砕かないであげておこう。
野太い声の菫ママが、カウンターに暖かいスープを置いてくれ、座るよう言われた。
素直に従い、カウンターに座る。
マキ「…ありがとうございます」
矢田「菫ママさんのスープ美味しいでしょ、菫ママさんの料理はどれも大きな愛情で出来てるんす」
菫ママ「あらぁ矢田ちゃんなんて可愛いの♪食べちゃいたい!」
たわいも無い会話で盛り上がる。
スープが飲み終わった頃、菫ママがグラスを拭きながら、静かな声で話し出した。
菫ママ「あなた家出?」
マキ「え?」
菫ママ「こんな時間に、怪我なんかしてウロウロしてるなんて…。行くあてあるの?」
マキ「あはは、家でじゃないです…」
終電無くしただけだが、怪我のせいで帰りづらくなったのは事実だ。
それに、百目鬼さんに買ってもらったキーホルダーをまだ見つけてない。
続く答えに少し考えていると、隣の矢田が突然乗り出した。
矢田「お困りならウチに泊まりますか?!」
え!?矢田さんもしかして僕をお持ち帰りしようとしてる?
菫ママ「矢田ちゃん、そんな鼻息荒くしたら誤解されるわよぉ」
矢田「あっ!す、すいやせん。俺、先輩兄弟と一緒に住んでて、女の人もいますから、大丈夫っすやましいこととか全然ないっすから!」
菫ママ「大丈夫よ、矢田ちゃんはレディを襲ったりしない紳士だから、お世話になっちゃいなさい」
マキ「え…」
矢田「どうぞどうぞ!じゃ、俺、先輩に報告の電話を!」
考える隙も与えてもらえず、話しを聞かない矢田は、携帯で電話しだした。
泊まるとこが出来たのはありがたいけど…
この、突っ走る矢田について行くことに少し不安を覚えるマキ。
カウンターでは、菫ママがニコッと笑う。
そしてカウンターに頬杖ついてため息を漏らした。
菫ママ「でもね、矢田ちゃん。帰るなら、〝あいつ〟引き取ってね」
菫ママは、奥のテーブルを指差す。
そこには、机に突っ伏して寝ている黒髪の大柄な男性がいた。
矢田は、思い出したように慌ててその人に近づく。話しかけても、ほとんど応答がない。
菫ママ「ほんとだらしない、仕事で3日寝てないくせに、酒なんか飲むからつぶれんのよ。困った子」
菫ママは、呆れながらタクシーを呼び、店前に到着したところで、菫ママと矢田が、その人を担いだ。
しかし、その男性はダランとしていてほとんど自分で歩けてない。
菫ママ「ちょっと、しっかりし歩きなさいよ!、百目鬼!」
え?百目鬼?
それは、金髪の髪を真っ黒に染め直した。
1年半ぶりに見る。
〝百目鬼神〟だった。
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