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番外編16ひと夜咲く純白の花の願い
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久々に、あの日の夢を見た。
百目鬼さんが惚れ薬を飲んで僕と両思いだったあの日の夢。
目が覚めると、そこは百目鬼さんの寝室。
でも、彼の姿はなかった。
カーテンから漏れる、明るい日差し。すでに日が昇ってる。
マキ「キーホルダー…探しに行けなかった…」
ボソっと呟き、ベッドから起き上がった。
マキ「…さぁ、仕事だ」
決意を新たにした時、自分の携帯が点滅してるのに気が付いた。
メールが2通。
《イブの日16時に集合(≧∇≦)今年も交換するプレゼント持参でね!大人のオモチャ駄目絶対(?_?;)修二》
…ふはッ。修二…和む。
今年は水入らずでやればいいよ。
もう一人は、桜木さんだった。
《おはよう。今年はホワイトクリスマスになるらしいよ。車で迎えに行くから家の中に居てくれ、いつもの時間に行くよ。桜木》
…そっか、ホワイトクリスマスか…。
僕の1週間お泊まりは、最終日が丁度クリスマス。
百目鬼さんはどうやって過ごすのかな?
ベッドから這い出て、リビングに向かう。リビングにも百目鬼さんの姿は無く、テーブルに、ホットサンドが置いてあった。
ふと時計を見ると、すでに10時を回っていた。
マキ「ええ!?」
自分があまりにもぐっすり眠ったことに気が付いて、慌てて桃色のニットワンピースに着替え、ホットサンドを頬張って、お水で流し込み、下の事務所に足を運んだ。
琢磨「マキ!」
事務所には、明るい琢磨と琢磨の母が来ていて、その接客に百目鬼と檸檬がソファーで向かい合っていた。
言うまでもないが、琢磨の母は百目鬼の見た目に青ざめている。
マキ「琢磨君、今日はどうしたの?」
しゃがんで琢磨に視線を合わせると、琢磨はニコニコとしながら、ポケットから小袋に入った10円饅頭を5つ取り出した。
琢磨「これ、お礼。探偵に依頼したらお礼するんだろ?」
琢磨がマキに饅頭手渡すと、青ざめた母親が「やだ!なんて失礼な事を、申し訳ありません」と琢磨を止めに入る。
琢磨「え?でも鬼は甘いものが好物なんだ」
現状が理解できない琢磨がキョトンとすると、母親は琢磨を叱りつけ百目鬼さんに謝り倒した。何故叱られたのか分からない琢磨が涙ぐむ。
百目鬼「あの、叱らないで下さい。小さい子の言うことですので。それに我々は依頼を受けた訳ではありませんから、このお金もいりません」
百目鬼がテーブルの上に置いてあった茶封筒を琢磨の母親に突き返すと、琢磨の母親は「いえ、うちの子がご迷惑をおかけしましたので迷惑料としてお受け取りください!」と引かない。
百目鬼「…、いいえ、我々は何も迷惑はかけられていません。ここにいる彼女が琢磨君と友達で、一緒に猫を探しただけで、そうだなマキ?」
いきなり話しを振られて驚いた。
百目鬼さんは、何故か真っ直ぐ僕を見てる。
百目鬼さんは、猫を探すのに、檸檬に協力させ、自分も後から駆けつけたのに、お金を受け取らない気のようで。社員じゃない僕なら、話しを上手くまとめられると思ってるみたい。
マキはニコッと笑って涙ぐむ琢磨の手を握り、琢磨の母親に微笑みかけた。
マキ「はい、琢磨君とお友達のマキと言います。可愛い子猫を飼ってらっしゃると聞いたので、見たいと話したら、その子猫が行方不明だと知り、勝手ながら探させていただきました。琢磨君は子猫をとても大事にしている優しいお子さんです。ご両親が大事に育てられたのが分かります。何も迷惑なんてかけらていません。むしろ私の我儘で連れ回した事をお詫びします。ご心配をお掛けしてすいませんでした」
マキの言葉に母親は「とんでもない!」と言ってオロオロしている。
マキは、未だに涙ぐむ琢磨の顔を覗き込んで優しく微笑む。
マキ「このお饅頭は、琢磨君のおやつでしょ?琢磨君が大事に食べな」
琢磨「こ、これは、俺のお礼だから、マキが受け取ってよ。良くしてもらったらお礼するんだってママが言ってた。だからおこずかいで買ったんだ」
マキ「おこずかいで?…そうか、琢磨君が私のために用意してくれたのね、じゃあ、貰うね」
琢磨「…俺のおこずかいじゃそれしか買えなかったんだ、ごめんなさい」
マキ「私、お饅頭大好き、琢磨君ありがとう」
マキは微笑み、もらったお饅頭を一つ開けて口に入れた。
マキ「ん?美味しい。こんな美味しいの初めて食べた、琢磨君ありがとう」
マキがお礼を言うと、涙ぐんでた琢磨の顔がパッと笑顔に変わる。
琢磨「良かったぁー、これ全員分買ったんだ!鬼の分もあるぜ!」
琢磨が百目鬼さんに向かって饅頭を差し出すと、琢磨の母親が琢磨の言葉にゾッとした。
マキは、琢磨を止めようとした母親の手を握り、大丈夫ですよと微笑んで見せた。
琢磨「鬼はお饅頭好き?」
百目鬼は強面の顔でその饅頭を見て、ソファーから降り、琢磨の前にしゃがんで視線を合わせると、10円サイズの小さなお饅頭を指先で摘んで受け取る。
百目鬼「俺はなぁ、和菓子が大好物なんだよ、貰っていいのか?」
琢磨「うん!コロを探してくれたお礼だから食べて!」
百目鬼が包みを開けてお饅頭を口にする。
百目鬼「本当だ、こんな美味い饅頭は初めてだ、ありがとな琢磨」
百目鬼さんが精一杯笑顔を作って、琢磨の頭を撫でると、琢磨はへへっと照れたように笑った。
ふふ、笑顔が引きつってる、そんなにわざとらしく笑顔作らなくても、百目鬼さんは優しく笑えるのに。可愛い♪
普段生意気な琢磨の懐きようと、百目鬼の子供に対して慣れた仕草に、琢磨の母親からも少し緊張の色が薄れ、その後は和やかな空気に包まれた。
杏子と檸檬と矢田も饅頭を受け取り、琢磨は元気になったらコロを連れてくる約束をして、母親と手をつないで帰って行った。
百目鬼さんの子供に対する優しさはまるでお父さんみたいだ、ゲイじゃないかったらきっといい父親になったろう…
あ?あ、無駄に惚れ直しちゃった。
百目鬼「あー…肩凝った。お昼にするか…。おい、お前は何食いたい」
あれ?リクエスト聞いてくれるの?。
マキ「何でもいいよ、百目鬼さんの作るご飯全部美味しいし♪」
百目鬼「…そうか……」
深みのある声で呟く。
百目鬼さんの大きな手が僕の頭を撫で、三階へ向かう。
頭…撫でないで欲しい…心臓に悪い。
百目鬼がいなくなると、矢田がコソコソっとマキに寄ってきた。
矢田「マキちゃん、25日もいるよね」
マキ「え?なんで?」
矢田「クリスマス会やるから、参加して欲しいっす」
マキ「ふふ、誘ってくださるの?」
矢田「もちろんっす!あっ、でも、百目鬼さんには内緒でサプライズに協力して欲しいっす」
マキ「うん、いいよ」
その日は、急ぎの依頼も無いらしく、のんびりした1日。矢田さんがやたらくしゃみしてたけど、本当に大丈夫かな?
百目鬼さんが僕にやることないから上でゆっくりしてろって言われて、「えー」って言ったら睨まれた。
まだ全然外が明るいから、少し散歩って言って、キーホルダーを探した。
昼間はやっぱり人がいっぱい居て探すどころじゃない。
散歩から帰ってきたら、百目鬼さんが事務所から顔を出してきた。
でも、何を言うわけでもなく、事務所に引っ込んだ。
百目鬼さんは心配性みたい…。ウケる。
その後、マキが一人で洗濯物を回していると玄関のチャイムが鳴った。
ーピンポーン
マキ「あれ、誰だろう?百目鬼さん下にいるのに…」
ーコンコン
雪哉『マキ様ぁー』
それは、雪哉の声だった。
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