アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編25ひと夜咲く純白の花の願い
-
26日の朝。
昨日までの雪は止んだが、一面真っ白。
何もかもを雪が包んで隠してる。
雪哉「おはようマキ様。朝ごはんはフレンチトーストだよ」
雪哉さんの作ったフレンチトーストは、キラキラ宝石のようで、盛り付けも綺麗で食べやすく切ってあった。
流石パティシエ…、柔らかいし、美味しい…
でも…、百目鬼さんは6枚切りの食パン二枚がドンと皿に盛ってあって、真ん中までは卵が染み込んでなかった。
でも、…凄く美味しかったんだ…
雪哉「マキ様…おいしい?」
マキ「とっても♪」
雪哉「よかった。神がね、マキ様にフレンチトースト食べさせてやってくれって」
え?
雪哉「気に入ってたみたいだから、本物食わせてやってくれって言ってた。喜ぶだろうだって。……」
百目鬼さんが僕に?
なぜか、僕の顔を楽しそうにじっと見る雪哉さん。何かを興味深そうに観察して「ふーん」って言っていて、僕は首をかしげた。
雪哉「ハハッ、ごめんジッと見たりして。………んーとね、フフ……、昨日神の奴がさ……あっ!」
言いかけたところで、火にかけておいた百目鬼用の鍋が吹きこぼれ、雪哉は席を立った。
…?。
朝と、昼と、百目鬼さんに美味しいお粥を作ってずっと側で看病していた雪哉さん。
僕は、見守る事しか出来ない。
洗濯して、掃除して、もともと百目鬼さんの部屋はあまりに汚れて無いからやれる事はごくわずか。
雪哉さんが買い物して来るって言うから寝室を覗いたら、百目鬼さんは眠ってた。
寝てるなら、隣に行っても平気かな?
ベッドに頬杖ついて、黒髪の前髪がかかる百目鬼さんの眉間を眺める。
ここは、いつもシワが寄ってる。
しばらくジッと眺めていたら、玄関の開く音に慌てて寝室を出て、リビングのソファーに寝そべった。
そこへ丁度買い物から帰ってきた雪哉さんがリビングに入ってきた。
雪輪「ただいまー」
マキ「おかえりなさい雪哉さん♪」
僕がニッコリ微笑むと、雪哉さんはふるふる震えて感激したようす。
雪哉「ああッイイ!マキ様におかえりなさい❤︎って言われるの!神の奴が羨ましい!」
マキ「あはっ、百目鬼さんは迷惑がってるよ♪おかえりって言うといつも変な顔するもん♪」
雪哉「アハッ、そんなの照れ隠しだよ」
ケラケラ笑った雪哉さん。
照れ隠し?それは無いんじゃないかな?
雪哉「マキ様って…神のことどう思う?俺的にはマキ様なら譲っちゃうなぁ〜」
唐突な質問に、マキは瞳を瞬いた。
マキ「え?どう……………って…、僕は百目鬼さんに嫌われてるから…」
雪哉「ええ!?そんな事ないよ!」
いつもイライラしてる。
優しいけど、いつもどこかイラついてる。
雪哉の優しいフォローにへらっと笑う。
マキ「フフッ、ありがとう♪でも、百目鬼さんは、僕みたいな肉食系より、雪哉さんみたいな癒し系が好きだよ♪」
雪哉「…俺が癒し系かは別として、確かに神は、肉食系苦手だけど……」
マキ「ね♪」
僕がニッコリ微笑むと、納得いかないといった雪哉さんはブツブツ言いだす。
雪哉「だって…昨日、マキ様1人で寝れるかなって気にしてたし、インフル移したら申し訳ないって、矢田の馬鹿がって怒ってたし。まぁ、矢田君に対してはいつも怒ってるけど。マキ様がご飯全部食べたかとか、具合悪くなってないかとか気にしてたよ?」
マキ「…それは、僕が看病してあげたからで、僕じゃなくても百目鬼さんはそうやって気にしたと思いますよ。百目鬼さんは優しいもん♪」
雪哉「神は確かにみんなに優しいけど…。マキ様には、特別優しいと思うんだけど…」
マキ「フフッ、そう見えるのは、僕が子供扱いされてるからですよ♪百目鬼さんは、僕と居るといつもイラついてるし♪」
雪哉「イラ……、あ!それって、タバコのせいじゃない?」
マキ「タバコ?」
そういえば…、再会してから、百目鬼さんがタバコ吸ってんの見てない…
雪哉「最近タバコ我慢してるみたいだよ、神のやつ結構ヘビースモーカーなのに、吸いたくてイラついてるんじゃないかな?」
違う、そんなソワソワした感じじゃない。
でも…、タバコ…僕が居るから我慢してる?
あんだけ気の利く百目鬼さんなら…確かにあり得る…。
夕方、雪哉さんは夕食分のお粥を百目鬼さんに食べさせ、薬を飲ませ、百目鬼さんが寝付いたのを見守ってから、次の日仕事のために帰っていった。
明日の夜、また来るそうだ。
今晩は、僕と百目鬼さんの2人きり。
寝室を覗くと、熱で顔が真っ赤な百目鬼さんが眠っている。
明日になれば、熱も下がるだろう。
結局、インフルエンザ騒動でキーホルダーを探すどころじゃなくなった。
雪も積もって、もう見つけるのは不可能だろう。
赤く汗ばんだ百目鬼さんの頬に触れる。
苦しいのかな?眉間にシワが寄ってる。
冷却シートの下に、シワが集まってる。頬を触った反対の手で、そのシワを伸ばすように撫でた。
熱いな…、辛そう。今夜は雪哉さんが帰っちゃったから、僕で我慢して。
百目鬼の寝顔を眺めながら頬を撫でていると、先程の雪哉の言葉を思い出す。
その事を考えたら、胸がドキドキとして、緊張してきた。
優しかったり…冷たく睨んだり…
面倒見良すぎたり…すぐ怒ったり…
賢史さん紹介したのに…上から覗いてたり…
胸の中にじわりと愛しさが込み上がる。
たまらなくなって静かに眠る百目鬼の布団に潜り込み、そっと隣に寄り添う。
ボサボサの黒髪、無精髭…
もう、なんでも可愛く見えるからどうしようもない…
そっと慎重に手を伸ばす。仰向けに眠る百目鬼の右側から、顔が胸に埋まるようにそっとキュッと抱き込んだ。
百目鬼の体は火のように熱くて汗ばんでいた。
早く良くなって…早く幸せになって…
腕の中の高熱に苦しむ猛獣に、心の中で何度も念じる。
すると、マキの胸に包まれ、百目鬼はピクッと動いた。
!!
仰向けだった百目鬼が、寝返りを打ったのかと思ったら、右側を向き、向かい合ってもぞっとマキを抱きしめ返した。
ふえ!?
驚いて硬直したマキは、動けなくなった。
百目鬼が、すりすりと顔を胸に押し付け、グッと抱き込んでくる。
可愛い仕草に胸がキュンキュンして、マキの心臓が激しく鳴った。
心臓の音、絶対百目鬼さんに聞こえてる…
ヤバイ…
百目鬼「…ん、…気持ちぃ…」
スリッと頬を胸に擦りつける。
熱の高い百目鬼には、マキの体温は低く感じて気持ちいらしく、足まで絡んできて、がっつり抱きつかれた。
瞬間。ぶあっと猫が驚いて全身逆立てるように、マキは驚きのあまり見えない尻尾が膨らんで、心臓がヤバイくらい早くなる。
にゃー!!う、動けにゃい!!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
450 / 1004