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番外編86ひと夜咲く純白の花の願い
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百目鬼さんは、皆んなの目を盗んで僕を外に連れ出した。
百目鬼「3日も缶詰で息が詰まったろ、初詣するだけだが、少しは外の空気吸っとけ」
そう言って近所の神社に連れて行かれた。
神社は人がいっぱいで、長い列が出来ていた。
百目鬼さんと2人で列に並んでいたら、外の寒さに思わずブルッと身震いしてしまった。百目鬼さんは、「ほらみろ言わんこっちゃない」って眉間にシワ寄せて、また裸で寝たことを指摘してきた。
べつに裸で寝たからじゃないんだけど…と思いながら、冷えだした指先に息を吹きかけて袖を伸ばしてしまい込む。それを見かねた百目鬼さんが低い声で「ここにいろ」って言って、神社で売ってる甘酒を買って戻ってきた。
百目鬼「ほら、飲むなよ。持ってろあったかいから」
差し出された甘酒に瞳を瞬く。
どうして百目鬼さんないちいち人をトキメかせるんだろうか。
マキ「わぁ♪あったかい♪♪ねぇ一口♪」
百目鬼「ダメだ」
マキ「ケチ」
百目鬼「ケチで結構だ」
長蛇の列に30分ほど並ぶ、待ってる間他愛も無い会話をした。去年はどう過ごしたかとか、おせちは美味かったかとか、大学どこ行くんだとか…。
僕は受からなかったら恥ずかしいから内緒♪って濁し、お参りを済ませた。
百目鬼さんは巫女さんのいる売店に歩いて行き、おみくじを引こうと言い出した。
ちょっと意外で笑っちゃったけど、2人で運試しに引いた。
マキ「あっ、僕、吉だって♪百目鬼さんは?」
百目鬼「…」
見上げた百目鬼さんはおみくじを見ながら固まってる。
マキ「あはは♪もしかして大凶?」
百目鬼「秘密だ」
マキ「はいはい、悪かったおみくじは結んでいくと良いんだよ、僕と一緒に結ぼう♪」
百目鬼「いや、いい、お前は結んでこい」
百目鬼さんはおみくじを結ばずポケットにしまってる。
もしかして良かったのかな?
なら見せてくればいいのに。
ってかなんか…デートみたい?。
ってかあれか、デートなんて大げさか。周りを見ても普通に友達同士でも初詣してるか。
僕はおみくじを結びながら、自分の引いたおみくじを見つめる。
吉…、吉って、運気すら普通って、良くもなく悪くもなく…このままって事かなぁ?
百目鬼「…マキ」
マキ「ん?」
百目鬼「これ持っとけ」
百目鬼さんが差し出してきたのは、合格祈願のお守り。どうやらさっきおみくじと一緒に買ってきたみたい。
マキ「わぁ♪ありがと百目鬼さん♪」
百目鬼「お前、勉強してるとこ見ないが大丈夫なのか?」
マキ「えへへー♪僕はこう見えて頭いいんだよ♪今更慌てても結果は変わらないし♪レベル的には合格ラインだよ♪」
百目鬼「…ダメだったらどうするんだ」
眉間にシワを寄せた百目鬼さん、受験生への禁句をサラッと言ってしまってる。
マキ「ちょっとちょっと受験生にそんなこと言っちゃダメでしょ」
軽くかわしたが、百目鬼さんは真剣な様子で訪ねてきた。僕が濁してるから心配してるみたい…
百目鬼「この先…どうするんだ」
マキ「んー、僕ってすでに一個ダブってるから、浪人じゃなく仕事探しかな?まぁ、先生の所のバイト増やしてもいいし」
百目鬼「…バイトって調教のか?」
少し嫌そうな顔した百目鬼さん。
やっぱ売り専の誤解は解けても良くは思われてなさそう。
マキ「そうそう、調教♪。ってか、性のお悩み相談だけどね♪」
体に触れたり道具使ったり、そればかりじゃ無い。ちゃんと話しを聞いて、その子がどうしたいか話し合うのが主な仕事。
百目鬼「……マキ」
マキ「ん?」
百目鬼「……………」
あーあ、深刻な顔して黙っちゃったよ…。もしかして、そんな仕事辞めろ…的な?
それは出来ないんだな。
百目鬼さんには理解し難いだろうけど。
僕は心理や心の勉強してるし、このバイト結構気に入ってるんだ。
僕のこの性に対する知識を、必要としてる人に教えてあげて僕みたいな間違いを犯さないようにするって目標もあるし…
いずれは資格を取ってって考えてる…
口籠った百目鬼さんを即してみたが、百目鬼さんは一言目がなかなか出ないみたい。
マキ「何?百目鬼さん」
百目鬼「……、その、バイト内容がどうかは知らないが、悩み相談は…確かに…お前には向いてるかもしれない…。お前は、人を引きつけたり癒したりのには向いてるだろうし…」
マキ「ふえ?」
突然の褒め言葉。
っていうか突然過ぎて何言ってるか理解が追いつかなかった。
なんて?
なんて言った?
僕が…向いてる?
はえ?
百目鬼「…俺も世話になったし…だが…」
ッ!?…
世話に…何それ……
百目鬼「…………、その…………。……〝そんな〟バイト辞めて…俺の事務所で働かないか?」
は?
〝そんな〟バイト?…
そんなって…、僕は真剣なのに……
つーか…俺の事務所でって…
百目鬼さん僕と一緒に働く気??
マキ「…」
百目鬼「…」
マキ「…え?………百目鬼さん酔ってる?」
百目鬼「酔ってねぇーよ。ちゃんと記憶はあるぞ、俺は事務所経営者としてちゃんとした話しをしてるつもりだ…。お前が居た間の功績は素晴らしい、…正式な誘いだ。バイトでも良いし、お前が良いなら社員にしても良い」
は?
ヤバイ…
〝そんな〟バイトって…言われてカチンと来たはずなのに、百目鬼さんのその後の言葉がビックリ過ぎて意味不なんだけど…
百目鬼さんが何言ってんのか
全然理解が追いつかない…。
一緒に働く?
僕と?
社員って……
僕を雇って社員にしたら〝長く一緒にいるって事〟だよ?
百目鬼さんの考えてる事が分からない。
絶対酔ってるよ!
困惑しながら百目鬼さんの瞳を見上げると、やけに真剣な、カッコイイ表情の百目鬼さんが、僕を見下ろしてた。
ッ!?……
ズルい……
マキ「何言っちゃってんの?僕は、受験するんだよ」
百目鬼「…分かってる、選択肢の一つに…と思って…」
返答に困ってる僕に…百目鬼さんはさらに続ける……
百目鬼「………マキ…俺んとこ来ないか?」
!!?!!
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