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百目鬼から見たマキ…
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空港からマキを家に送り届けるために車を走らせながら、俺は、昨夜星空の下で聞いたマキの過去について考えていた。
考えても考えても、こんな俺では、マキにかけてやる気の利いた言葉が見つからない。
聞きたいことは山ほどあった。言ってやりたいことも…。だけど、やっと言ってくれたのに、あれこれ言って台無しにしたくはない。好き勝手生きて大人になってしまった俺には、こんな時気の利いた言葉一つ浮かばない…。
そうして言葉を選んでいるうちに、先生様のうちに着いてしまった。
マキがシートベルトを外しながら、運転席の俺の方を向いた。
マキ「百目鬼さん、ありがとうございました♪北海道とっても楽しかったよ♪時計もすっごい気に入ったし、素敵なお祝いありがとう♪」
俺の頬にチュッとリップ音を響かせて、可愛らしく微笑むマキに、何か言ってやらなきゃと思いながら言葉が出ず、マキが車を降りようとドアを開けた。気の利かない俺は、思わず無計画に呼び止めた。
百目鬼「マキ」
マキ「ん?何」
百目鬼「……いままで悪かった」
マキ「……」
百目鬼「お前のお陰で、今俺はこうしていられる。修二と普通に話をしたり、自分を雁字搦めに縛っていたものから、前に進む方法を考えられるようになったり、どれもこれも、お前に出会ってから動き出した。お前には、本当に感謝してる…、お前はこれから我慢したりせず、好きなように生きて大学でいっぱい勉強して、きっと立派な人間になれるさ。お前の目指すものもきっとなれる」
気の利いたことを言おうとして、ありきたりの臭いセリフしか出てこない。
マキは、表情の読み取れない顔をして俺を見つめてる。
こんな時、修二だったら気の利いた心に響くようなこと言うだろうに…。俺はこんな大事な場面で役立たずだ。
百目鬼「あー、マキ。せっかくの初デートで何度もキレてすまん…。せっかく行きたがった水族館で悲しい思いさせたりとか、無理やり北海道とか…、俺はどうも人を喜ばすことに向いてない…、誕生日とか、お前が産まれたことに感謝しなきゃならないのに…ぶち切れてセックス三昧なのも…本当にすまん。せっかく大事な日に一緒にいる相手で俺を選んでくれたのに…。来年はもっとちゃんとやるから、今度は前もって行きたい所言えよ」
マキ「……」
結局、こんなことしか言えない。謝り倒すしかない。俺は人を怒鳴りつけ、拳で言うことを聞かせてきた。
学生の頃、恋なんてできないと初めから諦めて、膨れ上がる凶暴性を拳に変えて、なんでも暴力で片付けた。
修二の時も、黙って俺に従う修二に甘えて見て見ぬ振りをして、どんなに修二のことを知っても、どんなに俺を分かってもらっても、それは言葉ではなく、体のことで、気持ちを結びつける繊細な作業をしてこなかった。快感を与えて足開かせて、優しいくしてればいつかは勝手に伝わるもんだと思った。
マキは、修二より複雑で、修二より繊細で、子供のように無邪気で、真の中身は無垢だ。
俺ではきっと傷つけてばかりかもしれない、それでも、この真っ直ぐな瞳が欲しいと思ってしまった。
俺が一番欲しかったものをくれた瞳。
惚れ薬のせいだったが、俺に溺れるあの瞳をもう一度見たい。
マキの心を満たしてやることができたら、いつかまたあの瞳が見れる。
俺だけしか映さない…
俺だけを見る瞳…
マキ「……うん、今度はちゃんと言うね」
百目鬼「俺はお前と違って社会に出てる大人だから、大抵のことは叶えてやれるんだぞ」
マキ「ふふふ、百目鬼さんて頼もしいんだね♪」
百目鬼「…お前が寄っかかった位でふらつく訳ないだろ。お前俺をなめてんのか」
マキ「ふふふ、なめてないよ、百目鬼さんのことは〝大好きだよ〟」
百目鬼「…なら、もっと素直になれよ」
マキ「素直に努力してますよ、今日はちゃんと百目鬼さん好き好きって言ってるじゃない。僕は、素直に、行動力があって昼は紳士で夜は獰猛な猛獣になっちゃう、面白くて可愛いティーカッププードルな百目鬼さんが好きだよ」
百目鬼「……可愛いってなんだ」
マキ「ふふふ、可愛い、百目鬼さんは可愛いよ。僕、こんな可愛らしい人に会ったことないもの。可愛いのに、夜は激しいし、まさには理想的♪」
百目鬼「…お前って、本当に淫乱絶倫だな」
マキ「毎日シてたいくらいだよ♪」
クスクス笑いながら車を降りて、車のドアを閉める。
マキ「…送ってくれてありがとう」
そう言ったマキの瞳は揺れていた。
百目鬼「なんだその意味深な顔は」
マキ「……ふふ、…なんか夢みたいだったから寂しくなっちゃった」
本当に?なんだか泣きそうに見える…。
俺はまたなんか失敗したのだろうか?
〝淫乱絶倫〟って言っちまったからか?
いや、事実だから仕方ない。
百目鬼「今日はダメだが、明日はお前が学校終わったら会えるように、時間作ってある。2日はお前の誕生日だと思ってたから、事務所の奴らと雪哉とパーティーの支度してるぞ、あと呼んでないが賢史も顔出すとか言ってやがった」
マキ「え…」
百目鬼「…みんなお前が大好きだからな」
マキ「…………………………………」
百目鬼「おっと、そろそろ俺は行くぞ。マキ、メールだったら手の空いた時返せるから、〝お前から〟よこしてくれていいんだぞ」
マキ「ふふ、うん、メールするね」
百目鬼「また明日な」
マキ「うん、また明日」
そう言って手を振るマキの瞳が、見えなくなるその瞬間まで、潤んで揺れ動いていた…
仕事がなかったら……もう一度どこかに連れ込んでしまいそうな衝動を覚えながら、明日はみんなと祝ったあと、ベッドで嫌という程甘やかし倒してやろうと俺は決めた…。
マキ「………百目鬼さん…も……」
《百目鬼から見たマキ…》終。
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