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(番外編)純愛♎︎狂愛15
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『嘘だな、奏一は嘘つくと唇に力が入る』
その言葉が、やけに耳の奥にこびりついた…
奏一さんがピンチと知ったからか、仕事モードに入ったからか、凛々しい頼りになる普段の表情に戻った百目鬼さん。
百目鬼「怪我とは穏やかじゃないな、言ってみろ力になる」
奏一さんが押され気味で黙ってもグイグイ前に出る。
その間に僕は店員さんに経緯を聞いておいた。
マキ「ねぇねぇ、奏一さん、お店が何者かに営業妨害されてるって、修二にも危険な話じゃない?百目鬼さんなら直ぐに犯人捕まえると思うよ♪」
百目鬼「ッ!!」
奏一「なっ!?どうしてそれを…」
マキ「今あの社員さんに聞いた♪♪」
奏一さんが過保護なのは知っていたから、修二の名前を出せば、状況が変わると判断し、ニコニコ報告すると、百目鬼さんが一瞬怖い顔をして、奏一さんに真面目な顔で近づく。
修二の名前で動くのは、百目鬼さんもだった…
「協力させてくれ」と言った百目鬼さんは、もう動揺の欠片もなく、かっこいい顔をしていた。百目鬼さんは罪滅ぼし的に無償でやらせてくれと言ったら、奏一さんが怒った。
奏一「なめんな、お前は修二と和解したんだろ。俺に罪滅ぼしする必要はない。金は払う、キチンと受け取るならお前に依頼する」
わずかに陰りのある表情は、「修二と和解したんだろ」っと言ったところで、右手が左肘を握りしめ、言い聞かせるみたいに聞こえた。その仕草は、奏一さんが百目鬼さんとのことを消化しきれてないと感じた。
多分、百目鬼さんも分かってる。
百目鬼「…分かった。キチンと契約書を用意して、俺は極力顔を見せないように部下を…」
奏一さんに配慮して、百目鬼さんがそう言うと、奏一さんは握っていた手を離して、真っ直ぐ百目鬼さんを見上げた。その表情には、さっきの陰はない。
奏一「聞いてなかったのか、俺はお前に依頼するって言ったんだ」
ああ、この人は、紛れも無い修二のお兄ちゃんだと感じた。
百目鬼さんが驚いたように目を丸めてる。
奏一さんからは真っ直ぐ凛としたオーラを感じて、さっきの陰りは完全に消えた。自分の感情より、弟の人間関係の円満さを取ったんだ。それが一瞬で出来る人。奏一さんは人を惹きつける。百目鬼さんはこういう所を好きだったんじゃないかな?
ーツキン…
修二の時には何も感じなかった。むしろ百目鬼さんが修二を好きでいることに嬉しさを感じていたのに…
奏一さんと百目鬼さんの関係を目の当たりにして、胸の違和感が強くなる。
そしてそれは、痛みに変わる。
百目鬼「……ありがとう」
…………………………。
それは、見たこともない柔らかな笑顔だった。
ズンッと鋭く重い痛みが走って、奏一さんを見たら、奏一さんは眉を寄せてムッとしていた。
僕は慌てて口を開く。
マキ「奏一さぁん♪♪潜入捜査なら僕がバイトになりすますよ♪♪飲食経験もあるし♪♪」
ズキンズキンと胸が痛みながら、理解した。
依頼を受けるということは、これから百目鬼さんと奏一さんで何回も会うってことだ…
胸は痛むけど、目の前の状況はほっておけない。
罪滅ぼしをしようとする百目鬼さんと
和解を試みようとしてる奏一さん
奏一さんは百目鬼さんの自分を卑下する態度にイラつくみたいで、それをなんとか中和する。僕がペラペラ喋るから、百目鬼さんは、僕に気を取られていつもの顔に戻った。
百目鬼「黙れマキ!お前は事務だろ!」
マキ「だってぇー♪百目鬼さんの事務所で若くて可愛いピチピチな子は僕じゃん♪それに修二と働きたいしぃー♪」
百目鬼「後半が目的だろ…、貴様は現場には出さない」
百目鬼さんが普通に僕と喋ってるのを、一体どんな関係でこの子誰?的に不思議そうに奏一さんな僕の顔を伺うから、ニコッと可愛らしい顔で笑っといた。
こうして、営業妨害の犯人を調べる依頼を受けた百目鬼さん。
当たり前だけど、その後交わされた契約の場に僕はいない。
僕の見ないところで、百目鬼さんと奏一さんが会ってることに、仲良く出来てるか心配な気持ちと、あの笑顔を引き出した奏一さんに胸の痛みを覚えた。
僕……、奏一さんに嫉妬してる…のか
今まで、そんなにハッキリ自覚したことのない感情。
修二の時は平気だったのに。
百目鬼さんは奏一さんと会ってる、これからも会うと思うと胸が痛む。
和解をするだけだ。百目鬼さんには奏一さんとの和解は不可欠だ。だって好きだった人だ…
あ…
好きだった人…
そうだ…
あの百目鬼さんが好きになった人…
自分の中の猛獣をその人に向けまいと大事にした
奏一さんは百目鬼さんの特別な人だ……
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
百目鬼さんと奏一さんが正式に契約を交わした後、修二の家に行った。修二はバイト禁止になってて、その話から、店の営業妨害と百目鬼事務所への依頼を話したら、修二は少し困った顔をした。
修二「そっか、営業妨害されてたのか…」
マキ「知らなかったの?」
修二「うん、なんかトラブルっぽいと思ったけどね。でも、大丈夫かなぁ…」
マキ「何が?」
修二「兄貴、まだまだ百目鬼さんとは複雑みたいだし…。手が出てなきゃいいけど…」
頭を抱える修二が言った言葉に驚いた。
マキ「え?手が出るの?」
修二「兄貴元々は短気だから…」
それは意外だ。いつも修二のことを影になり日向になり見守ってるイメージ。いつも静かに怒りを灯して決して外に出さないような、静かな強さを感じてた。
まぁ、やるときはキッチリ落とし前つける的なイメージはあるけど…。
こないだ会った時随分イライラしてたけど、それは百目鬼さんとの過去が関係あるのかと思ってた。
修二が話す奏一さんは、しっかり者で頼り甲斐があって強くて、でも、そこが時々心配なんだと言った。それに、百目鬼さんに対しては非常にキレやすく、2人で会うなんて心配だと…
修二「もしかして、バイト禁止も百目鬼さんと僕を会わせないためかな?…、兄貴はまだ消化しきれてないんだ…」
マキ「まぁ、でも、これを機に和解できるかもよ。やっぱり直接じっくり話さないとね」
修二「…そうか、…そうだといいなぁ…」
和解はして欲しい。
でも、
和解したらどうなるだろう。
奏一さんの方が良くなったりしないんだろうか…。
修二を好きになったのは、元々奏一さんに似てたから…。
じゃあ、奏一さんと和解して、奏一さんといい感じになったら?
無理やり言いよってる僕と
百目鬼さんが好きになった人…。
勝ち目は無いんじゃないかな…。
そもそも百目鬼さんは、修二がむつや華南じゃなく百目鬼さんを選んでたら、僕のことなんか気にもかけないんだろうな…
修二のこと抜きで出会ってたら、僕らは、話しすらしなかったんじゃないかな?
僕は、百目鬼さんの中で何番目かな?
2番くらいにはなれたかなぁって思えてたけど…
3番かな?
じゃあ…奏一さんが百目鬼さんを好きになったらどうなるんだろう…
もし…、和解をきっかけに距離を縮めて、奏一さんが百目鬼さんに告白とかしたら、百目鬼さんはどうするかな?
付き合ってるやつが居るって断るかな?
それとも…、
奏一さんをとるかな?
………迷う余地があるかな?
………僕にそんな価値があるかな?
……駄目だ。嫉妬がぐるぐるしてて冷静に考えられない。
今までこんな風に考えたことなんかない、
〝好きな人が、一番好きな人と結ばれる〟。
こんな嬉しいことはないと思ってた…。
僕は今、百目鬼さんが「奏一と付き合いたいから別れてくれ」って言ってきたら、返事が出来るかな?
ぎゅーっと息苦しい胸の痛みを堪えて、「幸せになってね」って送り出せるかな?
想像しただけで、息が止まりそうなのに、僕は、百目鬼さんを諦めることが出来るかな?
あは♪…
ヤバイなぁ…
おかしいなぁ…、
いつの間に…、こんなに溺れてたんだろう…
水槽から打ち上げられた金魚みたいに息苦しい…
僕…、そんなの堪えられない…
もし、百目鬼さんと奏一さんが相思相愛になっちゃったら…
どうしよう…
あはは…、ヤバイ…、嫉妬って…苦しいんだなぁ
今まで、別れるなんてした事ないし…別れたくないって思ったことないから…知らなかった…
修二は、この気持ちを乗り越えて、むつを信じたのか…、強くなったんだなぁ…
胸のネックレスを握りしめる。
不安が消えず、体が疼く。
ああ…今直ぐ抱いて欲しい…
抱いてもらえれば、百目鬼さんの気持ちは少しは僕にあるって思える…
でも…
今の百目鬼さんは、僕とのセックスを望んでない…
きっとまた、忙しくなるから会えないって言われるんだ…。そして、その時間、奏一さんと過ごす…。
…
動物園…、行けそうにないなぁ…
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