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〔裏番外〕狂愛♎︎<純愛5
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腕時計は、結局俺が引き取った。
見るからに高額そうなこの腕時計。支払済だとはいえ、店側も困っていたし、何より姫香さんの圧が凄かった。
少しの間妹役をしたマキを、本当の妹のように、〝受け取るだけはして欲しい〟と目が語っていた。
別に迷惑だとか、重いと思ってるわけじゃない、ただ、別れてしまっているのに、俺が持ってていいのかという疑問だ。
これはマキが俺に渡す事に意味がある気がする。
この腕時計には、言われなくても分かるくらいの、マキの気持ちがこもってる。
しかも、値段は明らかに、俺の買ってやったやつの倍はするだろう。
未成年がこんなお金を使って…全く…
賢史「うっわー、酷いなこりゃ」
俺が今、手がけてる仕事を手伝ってくれてる賢史。何時もだったら菫ママの店で落ち合うのだが。今日は別の要件もあったから、別の店に呼び出した。
賢史の手が空かず、俺は待ちぼうけをしている間、腕時計の入った箱を眺めて1人でウイスキーを空にしていた。
賢史「仕事の話じゃなかったのか?」
百目鬼「飲みたい日もある」
賢史「はぁー。飲みたい日より飲まない日を数えたほうが早そうだ…」
呆れながら、半個室の俺の向かいの席に座り、新しいのを注文する。
百目鬼「例の件どうなった?」
賢史「取引は一月後だ」
百目鬼「一月後!?遅い!!なんとかならないのか」
賢史「早る気持ちは分からんでもないが、でかい取引だ、奴らも慎重なんだよ。それにこうなるってわかってて奏一にバラしたんだろ?」
ついこないだ奏一に殴られた時。奏一の仲間が溝呂木に唆されてると教えた。奏一が仲間を説得し足抜けさせたために、取引目前だったものが流れて逮捕のタイミングを逃した。
別にこちらの作戦がバレた訳じゃない。奏一は元々正義感ある人物だ、溝呂木も奏一にバレればこうなる事は分かっていたろう。それでも俺への復讐をしたかったんだ。
溝呂木は今回。復讐は出来ず取引を一つ延期する形になったが、俺の弱点を掴んだのは大きな成果だったろう。
賢史「ところでどうして今日は荒れてるんだ?世話役の雪哉は?」
百目鬼「明日から新作のケーキを売り出すから、その仕込みで忙しい」
賢史はテーブルに置かれた小さな箱をチラッと見て、前のめりにテーブルに肘をつき俺を指差した。
賢史「もうさ、雪哉と付き合えば?奴らにはもう新しいのと付き合ってるって嘘ぶっこいてたじゃん。本当にしちゃえば良くね?」
百目鬼「雪哉に…俺は相応しくない」
賢史「お前の相手が出来るなんてそうそう居ないぜ?お前は見た目よりはいい奴だけど、気難しいし、泣かせるくせに泣かせると落ち込むし、嫉妬深いしめちゃめちゃ独占欲あるし、恋愛にドップリのめり込むタイプだし。超面倒くさいし。振ったくせに、引きずりすぎだっつーの」
百目鬼「…」
返す言葉もない…
賢史「その箱何だよ。超有名ブランドの時計店だけど…」
百目鬼「知ってるのか?」
賢史「ああ、俺、時計好きだし、そのブランド専属の職人がいて一点物とか多く扱ってるマニアには有名な店だぜ」
百目鬼「うっ、高いよな」
賢史「まぁ…、それなりにするけど、時計好きからすれば、良心的な値段だと思うぜ」
益々、値段が怖い…
賢史「…マキちゃんから?」
俺の顔色から察知して、その名を口にする賢史、俺が口籠ると、賢史は苦い顔をした。
賢史「うわー」
百目鬼「何だその顔は」
賢史「だって、お前ら別れちゃったじゃん」
百目鬼「う…」
確かに…
マキがこの腕時計に込めた願いは、すでに俺が砕いてしまった。
恐らく、マキが1番言われたくない言葉を使って…。
賢史「……、お前さ、どうしたいの?」
百目鬼「どうって…」
賢史「面倒くさい、要らないっつったのお前だよ?」
百目鬼「…」
賢史「俺はこうなると思ったから反対したんだ。お前みたいな嫉妬深いタイプに、女王様みたいなモテるタイプは合わねぇだろ。しかもナイフの前に飛び出すような無謀さ…。更にあの頑固さ、お前とソックリだ、一回拗れたら、お互い折れないだろ?」
確かに、俺に似てるところもあった、その部分に関しては、分かるから余計イライラした。隠されてることについ声を荒げちまう。
賢史「お前さ、女王様のどこが良い訳?女王様見ててもお前いつもイライラしてるし、そりゃSEXは一流品だろうけど、他の男で覚えたことをやられるのとかお前さ好きじゃないじゃん。お前の好きタイプは修二みたいな純情系じゃん、自分色に染めて従順になるような。まぁ、女王様も意外に一途だったしギャップ萌だけど、お前のSEXに耐えられる体があるってだけじゃねぇの?」
賢史の言ってる事は的外れじゃない。
だけど…
百目鬼「うっせぇーよ、お前がマキを語るんじゃねぇー」
賢史「だいぶ酔ってんな。…お言葉ですが、お前が別れた後、マキの様子見に行ってやったろ?何でそこまでこだわるのかくらい教えてくれてもいいんじゃねぇか?」
百目鬼「っ…」
賢史「俺は別にこのまんまでもいいぜ。だけどよ、お前んとこの〝子犬ちゃん達〟がキャンキャン煩いわけよ」
子犬ちゃん達?矢田や檸檬か?
百目鬼「…そこに関しては…、すまない」
賢史「謝るんじゃなくて、お前の気持ちを聞いてんだよ」
百目鬼「……俺は…、マキと居るとぐちゃぐちゃになっちまう、今まで耐えられたことが耐えられない。また…繰り返しちまってる」
賢史「ぐちゃぐちゃって?」
百目鬼「あいつはヘラヘラ笑うんだ、場の空気を察知して穏便に済ますためや、ワザと焚きつけるために…。大勢の場所では必要かもしれないが、2人の時にヘラヘラされるとイライラする」
賢史「それで?」
百目鬼「本音はいつも茶化して飲み込むし、時々口にしたかと思ったら下ネタ混じりだし、俺に言わないくせに修二には言ってし」
賢史「…そいで?」
百目鬼「言うこと聞かないし、危ないことばかり平気でするし、頼ってこねぇし、頑固だし」
賢史「……で?」
百目鬼「どんなに大事にしてやっても、ワザと俺を煽ってきやがるし、一回タガが外れたらどうなるか分かってるくせに…」
賢史「………。」
百目鬼「どうしても駄目なんだ…。コントロール出来ない…、どんなに大事にしたくても、外に行きゃ危ないことするし、中にいりゃ、俺があいつを抱き潰す、あいつのことが可愛いくて可愛いくて…」
賢史「神?」
百目鬼「あんな糞可愛い生き物俺のそばに置いといたら、壊しちまうよ」
賢史「神君?」
百目鬼「…だから手放したのに…、こんなもん今更出てくるなんて…反則だろ…」
賢史「こんな物?時計がどうかしたのか?」
百目鬼「……」
賢史「おい、寝るなよぉ…」
賢史は深いため息を付き、テーブルに突っ伏した百目鬼を眺めた。
そして、百目鬼が最後に言った言葉から、テーブル置かれた小さな箱を開けてみた。
賢史「うわ…、こりゃ10万くらいすんじゃねぇか?青い文字盤…、マキが持ってたのも確か青い文字盤だったな、あっちの時計はアンティーク調だったが…。ん?」
箱の蓋の部分には、小さなメッセージカードが挟まっていた。そこには綺麗な達筆な字で、マキが百目鬼に当てたメッセージが書かれていた。
賢史「ふーん。こりゃ、キツイわな…」
学生時代の百目鬼を知る賢史は、目を細めた。賢史には、百目鬼の欲しているものが分かる。
賢史「なぁなぁ神君。俺がマキちゃん貰ってパコパコSEXしまくるって言ったらどうする?」
突っ伏した百目鬼の頭をツンツンしながら尋ねると、百目鬼は眉間にしわを寄せ唸った。
百目鬼「……変態、触んな…」
賢史「クハハハ。そんなに触られたくない?俺が食べちゃったら怒る?」
百目鬼「俺が骨も残さない…」
賢史「そこまで言えて何故ああなったのかな?」
百目鬼「あいつは幸せになるべきだ…」
賢史「あの子の幸せはあの子が決める。お前の幸せはお前が決める。俺はお前の味方だ。俺はマキちゃんの味方じゃない、そこでお前に一つだけ言っとくが、あの子は確かに恋愛初心者のお前にはレベルが高い。だけど、きっと、マキちゃんほどお前を好きだという子は最後かもな。俺はあの子の味方じゃない。お前の欲しい物を知ってる。お前が腹くくるなら、美味しそうなマキちゃんの事は、おさわり程度で諦めてやるよ」
百目鬼「チャラいおっさんのお前がモテる理由が分からない…」
賢史「ハハッ、みんな言葉が欲しいのさ、俺は言葉にしてるだけ」
百目鬼「言葉にしたら、歯止めがきかない」
賢史「…そう思っちゃってる時点で歯どめなんかあるのか?」
百目鬼「……」
賢史「この腕時計貰ってもいいか?」
百目鬼「殺すぞ」
賢史「ハハハッ、なら、どうするべきなんだ?」
百目鬼「…得体のしれない奴をとっ捕まえて、溝呂木の組織を壊滅させたら。
迎えに行く…」
賢史「…カッコイイけど、明日二日酔いで記憶ないとか言うなよ」
百目鬼「……」
賢史「最後まで決まりきらないとこ、いい歳なんだからなんとかしようぜ」
百目鬼「…」
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