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「からかいたい」6
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独占欲の塊の神は、マキと俺が会うことを最後まで抵抗した。だが、マキが譲らなかったのと、お茶してる間いつでもメールするし電話にも出ると約束して、更に椎名さんも一緒ならと、最終的に折れた。
神は常に怒ってるし怒鳴るから、周りはマキが可哀想な扱いを受けてるように映るかもしれない…。だが、神を良く知る俺から言わせれば、もう、見てるこっちが恥ずかしくなるほど神はマキにメロメロで片時も離れたくないと言ってるようにしか見えない…。
ってか、俺の扱い酷くない?
まぁ、いいけど、神が幸せな証拠だからな。
あーあ、俺にも可愛こちゃん出来ないかなぁ?
つよし「百目鬼さんが、マキさんを大事にしてくれてて良かった」
メイ「ふふ、そうですね、百目鬼さん優しいし男らしいし、マキも本当に楽しそう…」
マキの案内でお茶しに移動していたら、後ろを歩くつよしと椎名さんがそう呟いたのが聞こえて驚いた。
賢史「…えっ…。神が怖くないの?」
メイ「怖くはないですよ、百目鬼さんがああいう方だって私は前から知ってますし、矢田さんがいつも熱弁されてます。百目鬼さんは不器用なだけでいい人だって。マキが直ぐチャラケて怒らせるから喧嘩しないかドキドキしちゃって…。それに私は百目鬼さんも賢史さんも強面な男らしい人カッコいいと思います」
ニコッと笑った椎名さんは、お世辞でそう言ってる目に見えない。本当にそう思って言っていた。
つよし「ぼ、僕は、お会いしたばかりですが、お、大声が苦手なだけで怖くはないです、ビックリするけど…。と、友達にもいます、心配で言い方キツイ人、そういう意味では慣れてますし、マ、マキさんがあんな風に笑うの今まで見たことないし、マキさんが百目鬼さんを可愛い方だと言うなら、可愛い方なんだと思います。マキさんの人を見る目は長けてますから」
こいつらが、人を見る目があるのか。
はたまた、マキ様の影響か…
神を取り巻く環境が大きく変わっていってる。
マキ様と出会って修二への気持ちに割り込んだかと思ったら、神の周りをチョロチョロして、神を恐れて近寄らなかった商店街の人たちを虜にして探偵事務所に依頼をまいこませ。気がついたら、修二とも和解の場を作り、奏一とも会って話せるようにしてしまった。
マキ自身は危険な香り漂う掴み所のない蝶のような存在なのに、マキが側にいてもたらすものは、信じられないほどの幸福。
天使のマキ様と、とある発展場で囁かれ、ネットでも評判が流れてた。
〝天使マキ様に特殊な悩みを相談すると、解決して、恋人ができる〟
胡散臭い噂話だった筈なのに…
終わってみれば、全てがいい方向に転がってる…
マキ「あー♪あそこに居るのユリちゃんだぁ♪」
商店街に移動したところで、見知った顔が歩いていた。出勤前なのか、シンプルな薄桃色のワンピースにレースが付いた服。化粧もナチュラルメイクで、こないだのいかにもキャバ嬢って感じじゃなく、普通に可愛い女の子の格好をしていた。
ユリは、こちらに気がついて、一旦はニコニコと手を振っていたが、俺の存在に気がつくと、鬼の形相でこっちに走ってきた。
ユリ「ちょっとあんた!!またつよしと会ってたのね!しかもマキちゃんまで!!」
ドロップキックこそしてこなかったが、しそうな勢いで捲したててきたが、面倒くさいのでスルーした。
賢史「あんた、キャバ嬢の格好より今の方が似合ってんじゃん。ナチュラルメイクでもかなり普通に可愛いのな、顔のパーツ綺麗だもんな」
ユリ「ふえッ!?…」
俺は見たままを言っただけだが、ユリの勢いは一瞬にして固まり、耳まで真っ赤になってやがる。
賢史「やっぱ元が良くないとダメなのかね、俺の知り合い化粧してても化けれてなくてよ。いやぁー、意外と近くで見ても平気なのな、…やっぱお手入れの賜物?それとも外人はこんなもん?」
ユリ「…あ…う…」
賢史「ってか、やっぱそのエメラルドグリーンの目が良いよなぁ、キラキラ宝石みたで、客にもよく言われるだろ」
ユリ「う…まぁ…」
賢史「やっぱ天然もんは違うよなぁ。こんなに綺麗なんだから、弟の目も綺麗だろうに」
ユリ「ちょっ!」
賢史「〝お姉ちゃん〟から言ってやれよ、ボサボサの前髪で隠してないで前髪切って目を出せって、『〝私〟に似て可愛いんだし、中身は男前なんだから将来イケメンになれるから堂々としろ!』とかさ」
ユリ「…」
俺は思ったことを言ったまでだ。
けしてユリのご機嫌を取ろうなんてこれっぽっちも思ってない。
マキ「…今のは、完全に精神的胸キュンドロップキック決まりましたね…」
メイ「賢史さんってチャラい系なんですか?」
マキ「いや、過激なこと言うけど結構ストレートに言う人なだけかな?」
メイ「聞いてるこっちが恥ずかしくなりました」
マキ「メイちゃんの好きな、意地悪だけど情熱的な人だよ」
メイ「や、やめて下さいよ」
マキ「つよしー、大丈夫?顔真っ赤だよ」
つよし「っ…賢史さんって…いつもこんな、は、恥ずかしいことばかり言ってるんですか?さっきのマキさんに対しての言葉だったり…」
マキ「あはは、まぁ、たぶん。ある意味正直な人かな♪でも、僕に対しては百目鬼さんの恋人だから常に試してるだけだよ、賢史さん百目鬼さん大好きだから。だから、一度懐に入れたら凄く優しいと思うよ」
つよし「…優しいのは、なんとなく分かります…。ユリちゃんのこと、女性扱いしてくれてる…」
マキ「……ふむ」
後ろでそんな会話があった事なんか俺は知らなくて、目の前のユリが、段々顔を赤くしていくのが面白くて楽しんでた。
賢史「随分と高いハイヒール履いてるけど、足痛くなんないの?やっぱ〝女〟は足が痛いよりファンションなの?〝女性は〟大変だねぇ」
ユリ「ッ…」
賢史「あんた店でモテるだろ、男って努力家でキチンと意見が言える女が好きだよな。若い頃はひ弱そうな健気な子がって言うけど、気がついたら最終的には母ちゃんみたいなのと落ち着いてるんだよな。若くてフワフワした見た目にばっか目が行くのは見る目ない」
ユリ「…ぇ……っ…」
賢史「ところで、出勤途中だったんじゃねぇーの?」
ユリ「ギャッ!もうこんな時間!私もう行かなきゃ!つよしあんたは帰りなさいよ!」
急に弟大事な姉に戻ったユリが、俺を睨んだが、真っ赤な顔で睨まれてもこないだみたいな殺気は殆どない。案外可愛らしいんだな。
マキ「ユリちゃん大丈夫だよ、今から賢史さんの奢りで4人でお茶するだけだから。僕が居るし、それになんかあったら百目鬼さんが飛んでくるから♪」
奢り!?
ユリはマキの言葉に半分安心したようだったが、後ろ髪引かれながら何度か振り返りながらキャバクラに出勤して行った。
さてさて、嵐が過ぎ去ったが、次の嵐はどう乗り切ろうか…。マキ様がつよしのイジメに首を突っ込めば、また神が荒れちまう。
作戦を考えてる間に、マキのオススメの店に着いた。お店は、会計を済ませてから座るタイプで、かなり美味しそうなスイーツが並んでいた。マキはもう何を頼むか決めてあるらしく、つよしと椎名にショーケースを見てくるように言った。
マキと並んで待ってると、マキは、悪戯っぽく色気をまとった妖艶な笑みで俺の顔を覗き込んできた。
マキ「ふふふ♪」
賢史「なんだ…その含みのある笑い方は…」
マキ「ねぇ、賢史さん、いい出会いはあった?」
賢史「は?…なんだ。紹介してくれんのか?お前が俺を?俺のこと勧められんのか?」
マキ「ふふ♪僕、前言ったよね、賢史さんのこと嫌いじゃないって」
賢史「…」
マキ「まぁ、僕は僕の友達の味方だから、賢史さんは百目鬼さんに味方してもらって」
賢史「…戦力にならねぇだろ」
マキ「ふふふ♪メイちゃんは、真面目で尽くすタイプの大和撫子で料理上手。意地悪されても平気だからかなり柔軟に受け止めてくれて、ワイルドな人が好み。
ユリちゃんは日本語はペラペラだけど、外国が長かったから習慣や常識で多少のズレはあるかもだけど美味しい故郷の料理作ってくれるし、ドロップキックしちゃうワイルドな乙女ちゃん。
そして、つよしは、まだ蕾だからどんな風に咲くか分らない、小動物で凄く可愛いけどかなり芯の強い真っ直ぐな優しい子。何もかも真っ新だけど、簡単に染まったりしない男らしい子だよ」
賢史「俺をからかってるのか?」
マキ「まさか、賢史さんが本気になるなら、これはからかってることにならないよ」
賢史「……、俺は、モテないわけじゃないんだぞ」
マキ「知ってる。続かないんでしょ」
マキが何もかも見透かしたような瞳で微笑んでる。
マキ「ふふ♪、賢史さんが百目鬼さんの味方のように、僕も僕の友達の味方だから、賢史さんが本気になったなら、アドバイスしてあげる。ただし、相手も賢史さんを好きならね」
賢史「…」
マキ「続かないと思ってたら、続くもんも続かないでしょ?」
賢史「お前がそれを言うのか…」
マキ「みんなに、学ばさせてもらったんだもん♪」
ニコッと笑ったマキ様は、ずいぶん可愛らしい笑顔で笑ってた。散々神に説教垂れた俺に、今度は自分がやって見せる番だろと言うように。
つよし「お、お待たせしました注文決めました」
椎名「いやー、マキの勧めるお店はどこも美味しそうなのばっかりで迷っちゃいます」
マキ「ふふ♪僕のお勧めは絶品揃いだから♪さっ、会計して席に座って食べよう♪」
…俺が本気なら…
続かないと思ってたら続くものも続かない
…か。
俺は仕事柄、恋人と過ごす時間が前もって約束できない。休みはあるが、急に呼び出されることもあるし、急に休みになる事もある。
友達の時は上手くいっても、恋人になった途端、そういったズレが耐えられないと去っていく。
釣った魚に餌をやらないとよく言われたもんだ。
でも違う。餌はやってるが、魚がお腹が空いた時にエラをやれないだけだ。お腹が空いてない時にやった餌は、いつも無残に沈んで水槽を汚すだけ…
ハハッ…
やっぱマキ様はマキ様だな…
痛いところ突いてる。
噂が本当なら、俺にも幸運のおこぼれ貰えるのか?
だがよ、マキ、俺が本気になって相手が俺に興味なかったら、俺の本気損じゃねぇか?
まぁ、いっか、まだ出会ったばかりだ。
これから何が起こるかは分らない…
って、これからは俺がからかわれる番かよ…
「からかいたい」〜【終】〜
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