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キングの冒険4
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ーザァァー。
ーザァァー。
何分…、何時間…そうしていたのか分からない。
俺、死んだのかな?
もう、マキには会えないのかな?
ミケにも、会えないのかな…
百目鬼ぃぃ…、お腹空いたよぉぉー…
ーーガラガラッ!!
男「こっちこっち」
突然ドアが開き、見知らぬ男の声が聞こえてきたが、空腹で起き上がる元気が無く、物が多くて見つかるわけないとそのまま目を瞑っていた。
男「早く、こっちだよ茉爲宮」
1人だった声が、2人に増えて、さらにそこに、3人目の人間が入ってきた時。
鼻いっぱいに広がる甘くて優しい匂いが俺の嗅覚にビビッときて、その声に耳が震えた。
マキ「キング!」
マ、マ、マキ!
マキの匂い!!マキの声!!
キング「ワンッ!」(マキ!)
薄暗い部屋には、マキが入ってきた扉から光が入り込み、マキの後ろが光り輝いて、まさに天使が舞い降りてきたようだった。
マキは赤い眼鏡を掛けていて、ちょっとキリッとしてたけど、俺が吠えて返事した瞬間、いつものようにフワッと優しく笑って俺をギュッと抱きしめてくれて、ほっぺすりすりしていっぱい撫でてくれた。
マキ「だめじゃないキング、〝めッ〟だよ!なんで着いてきたりしたの!…あぁ、こんなに震えて、寒いの?待って今温めてあげる」
マキは、着ていた白いカーディガンを脱いで、俺の体にかぶせてくれた。
俺、雨にも濡れてるし、服が汚れるのにいいのかな?この服、百目鬼に買ってもらったやつだから悪戯しないでってマキが大事にしてる服なに…。
マキは、優しく微笑んで、俺をそっと床に降ろした。それから、「お腹すいたでしょ」って、ポケットから俺の大好きなリンゴを小さくしたものをくれた。なんでも俺が食いつくと思って、食堂のおばちゃんに分けてもらったらしい。
美味い美味い!
感動意外に喜んでいたら、マキを案内した男2人が、何やらコソコソ話をして、マキに近づいてきた。
男「嘘じゃなかったろ?その犬、茉爲宮の犬だったろ?」
マナミヤ?マナミヤってマキのことなのか?
男「タイムラインで見たのとそっくりだったし、な?、見つかったんだし、お礼してよ」
男の1人がマキに近づき、もう1人は入り口を静かに閉めた。
光が遮断され、雨音響く薄暗い空間に逆戻り。取り巻く空気に嫌な予感がしてビクッと身を起こした。
すると、俺の目の前にしゃがんでるマキが、俺の頭を撫でながら、小声で言うんだ。
マキ「キング、待て」
マキに言われたら、俺は動けない。
マキの手が俺から離れ、立ち上がる。その時マキは、見たことない顔してニコニコ笑ってた。
いつものマキじゃない。
ふんわり花咲くみたいな笑顔でも、百目鬼に見せる甘えた笑顔でも、恥ずかしそうな笑顔でもない。ニコッと笑って笑顔なのに、マキは全然楽しそうじゃない。
マキ「ふふっ♪キングを見つけてくれてありがとう♪それで?どんなお礼がお望みなの?」
キレイにニコニコ笑うマキから、いつもと違う空気が漂う。眼鏡を掛けてるからじゃない…、百目鬼と一緒にいる時の綺麗で可愛いいマキじゃない。
もっと違うキレイで、艶やかな極上の笑み。よく分からないけど、背筋にゾクッと悪寒が走るキレイさ。
ミケがいつか言ってた、外の世界には、美味しかったり、キレイでいい匂いの危険なものが溢れてる、自然界では、そういったものは獲物を惑わせて毒で動けなくして敵をやっつけたり、餌にして食べちゃうんだって…
マキ「鍵なんか閉めちゃって、ふふっ♪怪しぃー」
初めて見るキレイにニコニコ笑うマキを、怖いと思った。
そういえば百目鬼がよく言ってる。
『ヘラヘラ可愛くない顔して笑うな!お前はそうやって直ぐ胡散臭い顔して笑ってごまかす!』
って…。百目鬼は何言ってんだと思ってた。いつも花のように、天使のように、ふわっと可愛いい笑顔のマキに、百目鬼はいつも吠えてばかりで文句言ってばっかり。マキが可愛くないわけないのに、笑顔で誤魔化すってなんだと思ってた。
そりゃ、心で泣いてばかりの時は、そうだったかもしれないけど、百目鬼とまた一緒に居られるようになってからのマキは、いろんな顔して笑ってる。意味の違う笑顔ではあるけど、その笑顔は嘘ではないし可愛くなくもないのにって…。
でも、今目の前にいるマキは、見たことない顔してる。超笑顔で笑ってるのに、笑ってない。
男「いやー、こんな機会でもないと、成績トップクラスで人を寄せ付けない茉爲宮様とはお話も出来ないなぁと思って、普段は取り巻きが煩くて近づけないし」
マキ「ふふっ♪お話ならいつでも出来るよ。お勉強の話ならいつでもね♪」
男「しかし、茉爲宮は一緒にいる人間選んだほうが良いんじゃないか?なぁー?」
男「ああ、そうだな」
男2人がそう頷き合うと、マキがニコニコっと笑みを深めた。
くぅぅん……マ、マキ周りのオーラがなんだかピリピリするよぉ…。マキっ、笑ってるのに怒ってる。
男「あいつら、〝オタク〟だぜ?」
マキ「ふふっ♪心理学を専攻してる人間の発言とは思えない幼稚さだね♪」
男「なんだと!お前の為に言ってんのに、だから噂が経つんだよ!」
マキ「へー♪、どんな噂?」
男「茉爲宮はその顔と体で大学に入って、成績も教授と寝て取ってるって!最近じゃ、取り巻きの生徒惑わせて大学乗っ取ろうとしてるって」
マキ「ふふふっ♪そんな面白い噂してるの?僕、男だよ?」
男がマキの気を引こうと吠えてるけど、なんか俺にはよく分かんないけど、マキはニコニコ相手にしてないって感じで、男は焦ったそうにイラついてる。
「その見た目だ、実は女でしたもあり得るんじゃないのか?」
「俺たちが確かめてやるよ」
男たちが鼻息荒くしてマキを取り囲む、その嫌な雰囲気に俺は我慢ならなくて、マキの「待て」を無視して男の1人の足に噛み付いた。
キング「ウ¨ーウァンッ!!」
マキは!俺が守る!!
男「ワッ!!?」
ガブッとやってやりたかったけど、俺の小さな口は肉には届かなくて、男のジーパンの裾に噛み付いただけ。驚いた男が払うつもりで足を振ったら、小さくて軽い俺は見事に宙を舞って床に激突した。
キング「キャイーーン!」
マキ「キング!!」
うぅ…
痛い…痛いよぉ…
でも…マキを…守らなきゃ…
マキを…守らなきゃ…
マキを…
体中が痛くてクラクラする、でも、マキが飛んできて抱きしめてくれたから、痛いのなんか吹っ飛んで、暖かいマキの腕に安心したら、なんだかマキの声が遠くなった。
マキを…守らなきゃ…
体が重くて…なんだか暗い…
でも…マキを…
マキ「……僕の大事なものを傷つけるなんて、お仕置きが必要だね…」
ボソリと最後に聞こえたのは、聞いたことないほど低い、マキの怒った声だった。
ど…
百目鬼…マキを助けて…
俺じゃ…モブドモをやっつけられない…よ…
ど…めき…ぃ…
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