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ー芽生えー9
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……。
みみちゃん達と会ってから、神さんの様子が少しおかしくなった…。
マキ「…ンっ…神…さん…」
優しくて様子を伺うようなその大きな手が、僕を求めて触れて、触れたキスはどこか緊張するように不器用で…、迷いは、その眉間のシワに刻まれてる…。
マキ「…んぅ……ッ…」
自宅に帰り、夕食を作り出した神さんは、珍しく、僕を呼んで一緒に作ろうと言ってきた。その表情は困ったように眉間にしわが寄ってて、どうしたのかと思ったけど、せっかくのお誘いだから一緒に作った。
作ってる間、神さんはやたら優しくて、料理がほぼ完成して煮込んでると、僕を引き寄せて甘いキスをしてきた。
マキ「…んん…」
百目鬼「…腹減ってるか?」
キッチンに充満したいい匂いの中、何かに困った神さんの瞳が僕を伺ってる。
困った顔の神さんが僕の頭を優しく撫でる。
何か言いたいのに、言葉が出ないんだろう。
神さんは出ない言葉の代わりのように、もう一度僕にキスしてきた。
困り眉に優しいキス、様子がおかしいのは分かってるけど、密着した体から神さんの熱く大きくなってるのが布越しに伝わって、僕も神さんと同じように熱くなってる。
マキ「まだ平気」
神さんから求めてくれてる状況を断るなんて、僕に出来るわけがない。
様子がおかしいと知りながら、僕は応えるようにキスを返した。
百目鬼「ベッドへ移動しよう」
軽々と僕を抱き上げた神さんは、コンロの日を消して、そのまま壊れ物を扱うみたいに僕を優しく抱いた……。
神さんの様子がおかしい理由…
その原因に心当たりがある…。
みみちゃん達が帰るって神さんが教えてくれて下の事務所に行くと、みみちゃんの弟の翼君が、神さんの隣に座ってて、神さんはみみちゃんの弟君の頭を優しく撫でていた。
僕が入って行ったのをドアの音で知った弟君は、パッと顔を拭ったから、もしかしたら泣いてたのかもしれない。でも、神さんの大きな体の向こう側ではっきりは見えなかったし、僕はあえて聞かなかった。
みみちゃんが、僕にお礼を言って、これからは神さんに勧められた探偵に探してもらえることになったけど、今後も神さんにも相談させてもらうことになった報告された。
その時も、神さんは営業スマイルで優しく笑いながら、困ったような瞳で僕の様子を伺ってた。
百目鬼『曾祖父さんの依頼は引き受けたから、もう心配するな。俺の知り合いは腕は確かだから。これからは俺がやるから、お前は大人しくしてろよ』
そう言って、余計なことをするな、これ以上首をつっこむなと言われた気がした。
まぁ、確かに、今まで数々の余計なことをして来た僕だからしかたないんだけど……
家に帰ってきてからの神さんの態度を見ると、どうもそれだけじゃない……
やっぱり、気になっちゃうよね。
神さんは〝同じ〟だから……
*******************
一週間が経った頃、みみちゃんのところに最初の報告があったみたいで、僕に教えてくれた。
みみ「まだ行方は分からないんだって、聞き込みで辿ってみたけど、行き先を知ってる人はいなくて、情報がプッツリ途絶えちゃったって。別の方法で探してみるって言ってた」
マキ「そっか、やっぱり、百目鬼さんの言った通り難しいんだね」
依頼として成立したから、僕はこの話を神さんから聞くことは出来ない。神さんはこの一週間、一度もこの話をしない。
みみ「百目鬼さんも探偵さんも、全力で探しますって言ってくれてるよ、すっごく頼もしい。マキちゃんが協力してくれたから良い探偵さんに出会えたよ、ありがとう」
マキ「僕は何もしてないよ」
一度だけ神さんに様子を聞いたことがあったけど、顔つきが仕事モードに変わって、守秘義務だって怒られた。
礼「きっと見つかるよー♪♪」
礼ちゃんのウットリした声が響いて、乙女モード全開の彼女は自分を抱きしめてハッピーエンドを妄想中。
礼「きっと相手のおばあちゃんも待ってて、感動の再会!。青春を取り戻すようにこれから2人で幸せな老後を送れるようになるのよぉーー♪」
礼ちゃんの頭上に、ハートがいっぱい飛んでる…
みみ「そうなっては欲しいけど、もう90歳だからね」
礼「ミィちゃんは夢がない」
みみ「現実的に考えないと、どんな結果かで、曾祖父ちゃんへの伝え方考えなきゃ、曾祖父ちゃんの代わりに私が動いてるだけで、曾祖父ちゃんが依頼人なんだから」
礼「あー」
みみ「もしかしたら、戦中に亡くなったかもしれないし、生き延びて新しい家庭を築いたかもしれないし。だとしても、今も生きてるとは限らないし」
礼「おじいちゃんを思って独身だったかもしれないしね、そして感動の再会♪」
みみ「…そうだね」
乙女モードの礼ちゃんは、再会以外の選択肢は無いらしい。
だけど、そこにさらに現実的な水を差す。氷室威さん。
氷室威「女は切り替え早いからなぁ、むしろ会いたくないって答えもあるかもよ」
礼「ええ¨ッ!なんでそんなこと言うんですか!」
氷室威「だってさ、新しい家庭をきずいてたら、昔の恋人とか会えなくないか?そもそも女は、昔の男とか未練ないだろ」
礼「そ、そんなことないですよ。そもそもこの2人の場合嫌いで別れたわけじゃないんだから、生きてるって聞かされたら会いたいでしょ!」
氷室威「男はさ、一度好きになった恋人にはやっぱどっか気持ちがあるから、会いたいと思うけどさ。女の人は事情はどうあれ新しい恋してたら会いたくもないんじゃないの?」
礼「氷室威さん、それって自分の話ですか?」
氷室威「さっきっから自分のことのように話してるの礼だろ?恋人もいたこともないだろうに、会いたいって言われたみたいに喜んじゃってさ」
礼「ち、違います!」
いつものように夫婦漫才みたいなやりとりが始まって、礼ちゃんと氷室威さんがキャンキャン吠え合ってる。
まぁ、無理もない。
題材が題材だから、2人が熱くなるのは仕方ないこと。
氷室威「よし、こうなったらサークルで話し合ってみよう!みみちゃんも良いよね」
みみ「…身元を明かさないならどうぞ」
氷室威「みみちゃんの許可も下りたし、今日の議題はこれで行こう!」
僕らの所属しているサークルは、愛をテーマとした、恋愛心理学の追求と研究。通称〝恋研〟。
もしかしたらちゃっちく聞こえるかもしれないけど、かなり真面目だ。
例えば、好きだった人を殺してしまった殺人者の心理を解いたり。逆に、殺したいほど憎い相手に恋してしまった人の心理を研究したり。題材の中には、もっと普通の母性の研究や、同性愛を研究したり、愛に関係のあることを突き詰めるサークル。
今回は、人生が残り少なくなって昔の恋人を懐かしむ男の心理と、同じように残り少なくなった時の女性の心理。
氷室威「なぁ、マキちゃんはどう思う?」
…僕は、例え神さんに先立たれて1人になっても、清史郎さんを懐かしむことはないだろうなぁ…
マキ「難しい質問だね。でも、僕は探さないかな」
神さんが死んじゃったら、僕はどうなるのかな…
氷室威「マキちゃんは昔の恋人には会いたいと思わない?、んー、さすがクールビューティー」
マキ「ふふ」
きっと、神さんの側に行きたくて仕方ないけど
そんなことしたら神さんに怒られてあの世で口聞いてくれなさそうだから、神さんが迎えに来るまで大人しく待ってるんだろうな…
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