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ー芽生え歌うー10
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マキ「ふふっ♪氷室威さんには紹介しなーい♪」
可愛らしく笑いながら、肩に乗せられた手をお箸で突っつくと、氷室威さんは痛がって手を引っ込めて不服そうに口を尖らせる。
氷室威「イテテ。えーなんでー?」
マキ「僕の可愛子ちゃん取られたらやだもん」
僕の言葉に礼ちゃんとみみちゃんが吹き出して、声を殺して肩を震わせながら笑うから、氷室威さんが訝しげな顔をした。
氷室威「マキちゃんから取る訳ないじゃん、それに、マキちゃんから俺になびくとか無いでしょ、こんな綺麗なマキちゃんには勝てないよ。てか、可愛子ちゃんってそーとー可愛いいんだろうなぁ」
マキ「可愛いよぉー♪♪僕はメロメロだもん♪♪」
氷室威「へー、マキちゃんがメロメロ?っか、その影響?香水変えたでしょ」
マキ「ふふっ♪」
氷室威「付き合ってどのくらい?」
マキ「もうすぐ1年だよ」
僕の答えに氷室威さんが「へー、長いじゃん」と言ってる後ろで、礼ちゃんとみみちゃんが〝1年!?キャー♪♪〟って反応してて、2人は目で会話してた。おそらく頭の中は今僕と神さんのめくるめく日々で興奮状態。
氷室威「年はいくつ?」
マキ「年上だよ」
氷室威さんが「へー」と言いながら、やっぱり年上かぁって納得しながら、可愛子ちゃんがどんな子かアレコレ想像してる。
その、氷室威さんから見えないように、礼ちゃんとみみちゃんがコソコソ話してる。
氷室威「ねぇ、喧嘩とかする?」
マキ「喧嘩っていうか、僕が我儘な事するからよく叱られるかな、ふふっ♪」
ヘラヘラ答えて笑った僕に、何故か氷室威さんは僕の目をジッと見た後、嬉しそうに笑った。
マキ「え?なんで笑うの?」
氷室威「…良かったなって思ってさ」
マキ「良かった?」
氷室威さんが、ニコッと笑って僕の頭をポンポンとして撫でる。
僕はその意味を拾いきれなくて、キョトンとして瞳を瞬いた。
氷室威「彼女には、ちゃんと我儘言えて喧嘩も出来るんだな」
マキ「へ?」
いつも軽いノリで喋ってる氷室威さんの目が、マジな目をしてスッと細められ、悪戯っ子みたいにニカッと笑う。
氷室威「マキって、他人には気遣いやさんで優しいけど、自分にはかなり厳しいみたいだから、息抜き出来てんのかなって思ってたから」
マキ「…」
氷室威「なんでも人に合わせて、自分の事は自分でってやってるマキが、彼女には我儘言えてるなら良かったなって思ってさ。最初の頃は人を寄せ付けない一匹オオカミだったのに。夏休み明けに俺たちと話すようになったり雰囲気が柔らかくなったのって彼女さんの影響なんだろ?」
マキ「…」
心理学を専攻している人間なんだから、こんな風に言うのは当たり前な部分があるのかもしれない。
だけど、年の近い人間が、僕の内側に気がつくことはほぼ無い。
だから、少し不思議な気分だった。
僕がキョトンとしたまま何も言わないでいる間。氷室威さんはニコニコしながら僕の頭をヨシヨシ撫でた。
その光景を、礼ちゃんとみみちゃんが身悶えしながら見ていたけど、僕はこの不思議な気分のままだった。
マキ「さすが恋研所属」
氷室威「まーねー」
マキ「さぞおモテになるでしょう」
氷室威「ウッ。そこはそっとしといてよ、モテはするけど何故かいつも〝いい人〟止まりなんだから」
マキ「ふふっ♪モテるとか自分で言っちゃうんですねぇー♪」
氷室威「頭脳明晰、顔は中の上、優しさなら売るほどありますよ」
マキ「ふふっ♪」
お茶目に笑いを取るいつもの氷室威さんに戻ると、僕と氷室威さんのことを脳内で妄想してたらしい礼ちゃんとみみちゃんが現実世界に帰ってきて、すかさず礼ちゃんが氷室威さんにツッコンだ。
礼「誰にでも優しい男はねぇ、みみちゃん」
みみ「そうね、乙女は自分だけに特別扱いを望んでるのよね。みんなに優しいようじゃねぇ、礼ちゃん」
礼「そうよねぇ、みみちゃん」
あららら。
礼ちゃんとみみちゃんは、僕より前から氷室威さんと一緒にいるから、氷室威さんの恋愛事情を知ってるのかな?
知ってる風にニヤニヤ話してる。
氷室威「酷いなぁ。…女心は難しいよ、優しい男が好きとか言いながら、みんなに優しいのは嫌だとか言うし。でも親しい友達には優しくして欲しいとか、してほしく無いとか」
*******************
大学の修行ベルが鳴ったと同時に、携帯を取り出して神さんにメールした。
頼みたいことがあるって、一体なんだろう?
礼「おおっ、早速授業終わったのご報告?」
マキ「礼ちゃん覗かないでよぉー♪」
礼「いやいや、毎日速攻メールしてるじゃん。でも、ノートもしまわないでなんてよっぽど急いでるのかなぁーと思っただけだよ」
マキ「んー、なんか頼み事があるんだって」
礼ちゃんに混ざってみみちゃんもこっちを覗き込む。
みみ「あら、じゃあ、今日はサークルおやすみ?」
マキ「んー、どうだろう、なんの頼みか分かんないし、それにこの時間はまだ仕事のはずなんだよね」
送信したばかりの携帯を眺めて考えてみたけど、思い当たることは無い。
メールをしてみたものの、返事がすぐ来るとは限らない。
お客の対応をしていたら、携帯見れないし。
マキ「んー、やっぱ今日はサークル休むね」
神さんの頼み事がすぐ出来るようにしておきたいし。
僕はみみちゃんと礼ちゃんにバイバイして、駅に向かうことにした。
神さんからまだ返事は無いけど、直ぐに帰れるようにしておきたかった。
丁度、大学の最寄駅に着いた時、携帯が鳴って神さんから電話が来た。
マキ「はいはーい♪貴方のマキちゃんでーす♪♪」
いつもの調子でおちゃらけて電話に出たら、神さんは受話器の向こうで硬い咳払いした後、いつもみたいに不機嫌な低い声じゃなくて、珍しく優しい声で言った。
百目鬼「ゴッホん…。ッ…。おつかれ、マキ、今から空いてるか?空いてるなら頼み事があるんだが」
マキ「うん♪空いてるよ♪何々?お使い?」
百目鬼「あーまーそうだ」
マキ「どうしてそんなたどたどしいの?難しいよお使いなの?」
百目鬼「ゴッホん。…いやー、至極簡単だ。雪哉の店でお菓子を買ってきて欲しい」
マキ「雪哉さんとこ?」
何故か神さんの声は緊張気味にかすれてる。
雪哉さんは百目鬼事務所からそんな遠く無い。
いつもだったら矢田さんか杏子さんに行かせてる。
マキ「うん、どのお菓子を買ってくるの?」
百目鬼「雪哉に、いつものやつと言えば用意してくれる」
マキ「うん、分かった♪」
百目鬼「マキ、体調は平気か?」
マキ「やだなぁ、全然平気だし元気だよ。今朝の続きも出来るよ♪♪」
百目鬼「ッ…」
いつもだったら、ここで怒って電話を切るのに、今日の神さんはいつもと違った。
百目鬼「ッ…ッ…。続きだな」
にゃ?!
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