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ケダモノたちの宴
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11月も終わりに近い今、街はどこもこれから訪れるクリスマスに向けて早々とイルミネーションで飾られている。
雨が降り続き、寒さが厳しさを増す。コートが欠かせなくなってきた。
そういえば、マキと再会したのは、こんな寒さ厳しい雨続きの季節だった…。
矢田がマキを女の子と勘違いして拾って、世話焼き菫が雨にびっしょり濡れのマキを店に連れてきてた。そして、酔いつぶれた俺が、夢と勘違いしてマキを襲った。
あの時は本当に肝が冷えた。
目が覚めたら服のビリビリに破けたマキが白濁まみれで俺の隣に横たわってて…
あまりの肌の白さに死んでるんじゃないかと…
でも…
あの時、矢田が拾って来なかったら
マキ『神さん♪、大好き♪』
今のマキの笑顔を
眺めることも出来なかったのか…
賢史「そういえば今頃だな、女王様が百目鬼事務所に現れたの、矢田が拾ってきたんだろ?」
賢史がニヤニヤしながら俺を見る。
今日マキは、修二の所に泊まっていていない。だからだろう。聞けるチャンスとばかりに気持ち悪い笑い方しやがる。
さっきまで真剣な話をしながら酒を飲んでいた。そろそろ酔いが回ってきたのと、堅い話に飽きた賢史が、さも今思い出したように口を挟んだ。本当はずっとこの話をしたくてうずうずしてたくせに。
話を切られ、書類を片手に説明していた烏磨が、不機嫌に眉を寄せながらも、その話題に興味有りって目で俺を見た。
烏磨「…。さすが、トラブルを呼び込む天才。色恋沙汰まで拾ってくるとは、だいぶ厄介な拾い物でしたね」
賢史「厄介どころかめっけもんだろ」
烏磨「私の話を聞いてましたか?茉爲宮グループを相手にどれだけ苦労したか、下品な想像してるってその汚い面なんとかなりませんか?確かに茉爲宮優絆君は綺麗で魅力的ですが、それ以上の魅力を持っていたでしょう。正直、茉爲宮優絆にどこまで価値があるのかと思いましたが、猛獣がここまで穏やかに変わるとは思ってませんでした」
烏磨がそう言いながら俺をじっと見た。
変わった?
穏やか?
俺ッ??
烏磨「そんなに驚くことですか?無自覚?
貴方、まるで別人のように変わりましたよ」
嘘だ…って顔を顰めたら、賢史も烏磨に賛同しだした。
賢史「別人別人、気持ち悪いくらい甘ったるい顔しちゃってよ。前は『側に寄る奴はみんな殺してやるぅー!』って顔してたのによ」
烏磨「ええ、殺人鬼みたいな顔してましたね」
お前ら揃って人を犯罪者扱いしてたのか?
賢史「まぁ、今も怖い顔には変わりないけどよ。前よりオーラが丸くなって近づきやすくなったんじゃないか?」
烏磨「雪哉さんもそんなこと言ってましたね。全部マキ様のおかげだと」
賢史「ハハッ、マキ様に毎日毒気抜いてもらって美味しい肉かっ喰らってお腹いっぱいで幸せってか?」
なんでもすぐ下ネタに持ってく賢史を睨みつけたが、賢史はニタニタいやらしく質問してくる。
賢史「違わねぇーだろ?毎晩あの体抱いてんだろ?」
百目鬼「お前に関係ないだろ」
賢史「関係あるんだなぁ。女王様とできなかった次の日はお前の機嫌が全然違うからな」
百目鬼「なっ!?違わねぇだろ!!」
全力で否定したものの、賢史は「本当だしー」ってふざけた顔を辞めない上に、烏磨まで違わないって冷ややかな顔して俺を見やがる。
烏磨「茉爲宮優絆君を助け出した時は、あんな色白で細い子に貴方の相手が務まるのかと思いましたが、取り戻してからこの数ヶ月の貴方の表情の変わりよう。そんなに夢中になるもんですか…、あの子とのセックスは…」
百目鬼「おい!体目的みたいにサラッと口にするな!」
烏磨「マキ様の噂は聞いてましたが、この猛獣を良く手懐けましたしねぇ」
烏磨とは浅い付き合いだが、俺がヤンチャしてた時の話を知っているし、酷いセックスが止められないのも知ってる。100人相手に臆さず単身乗り込むような無茶をしたことも、相手を組み敷いて泣かせで乱暴にしたのも知ってる。
そして、マキ様の噂も…
どいつもこいつも、ネットの野蛮な噂に卑猥な想像しやがって!!
賢史「それがよ、烏磨、女王様は神みたいな猛獣手懐ける凄テクの持ち主だが、実はその下に可愛い面隠してるんだぜ、こないだなんか酔ってふにゃふにゃに…」
百目鬼「賢史ッ!!」
酒に酔ったマキの醜態は、マキが1番人に知られたくない姿。
それを口外されるのは我慢できなかった。一瞬で頭が沸騰し、賢史を吠え睨みつけると、俺の本気具合に一瞬止まった賢史が、察したにもかかわらずニヤニヤ。
賢史「なーに?可愛くて隠しておきたいってか?」
百目鬼「マキは、あの時の自分を酷く後悔してる、広めたり本人の前で言ってくれるな」
賢史「後悔?子供みたいな駄々こねたからか?あれのどこを後悔すんの?可愛いもんじゃん」
百目鬼「マキは、我儘を言うのを酷く嫌う、やっと少しだけ言葉にするようになったんだ。酔って全部ぶちまけたから落ち込んでる。お前がからかったりしたら、また振り出しに戻り兼ねない。マキは、人のことは何でも許すくせに、自分が弱音を吐く事を悪だと思い込んでる。一年かかって最近やっと言った我儘が手を繋いで買い物してほしい、だぞ」
賢史「うわー、レベル低く…、お前の恋愛偏差値小学生並みに低くいわー」
呆れた賢史がため息ついて、烏磨が「恋愛偏差値小学生って」ってクスクス笑ってやがる。
百目鬼「こっちは必死なんだよ。ガードが硬い上に誤魔化し魔のあいつの中に入っていくのは大変なんだぞ」
賢史「そうか?神の恋愛偏差値が低いからじゃねぇの?俺みたいに大人の対応ができりゃあ簡単だろ」
百目鬼「大人の対応のできる賢史君は、何度破局してるんだ?」
賢史「大人は色々あるんだよ」
百目鬼「相手が見つからないからって子供をからかってるやつが大人だと?」
賢史「つよしの事?別にからかってないさ、可愛いから可愛いって言ってるだけじゃん、あいつ小ちゃくて可愛いだろ?でも見た目よりしっかりしてるぜ、普段ブルブル震えてるくせに、考え方はかなり大人だし、話してていちいち反応面白いし。こないだ助けてやったら律儀に菓子折り持ってきたぜ」
百目鬼「そうやってちょっかい出して、ユリさんまでからかって」
賢史「ハハッ、あの兄弟いちいち反応がオーバーだよな。2人して可愛いでやんの」
酒が回って変なスイッチの入った賢史は、ゲラゲラ笑って止まらない。そんな風に茶化してばかりいるから、相手に嫌われちまうんだろうが。
笑う賢史を、烏磨が冷ややかな目で見ながらため息つく。
烏磨「可哀想に、遊ばれてる兄弟が気の毒です」
賢史「俺は別に遊んでないぞ、人助けだろ、弟のつよしの事は助けてやっただけだし、ユリが俺をケダモノ扱いしてやたら噛みついてくるだけだ。あいつせっかく綺麗で可愛くしてんのにもったいない。俺はどっちも可愛いと思うし、来るなら本気で相手するぜ。ただ、ユリがいつまでも弟離れできないでいるから、手伝ってやってるだけだろ」
烏磨「お節介ですね」
賢史「は?そういうお前はどうなんだよ、随分熱心に雪哉の店に通ってるらしいが、目的はケーキじゃなくて雪哉なんじゃねぇーの?」
烏磨「下品な言い方はよして下さい、貴方と違って私と雪哉さんは真剣にケーキと向き合ってますから」
賢史「とか何とか言ってぇ、やる事やってんだろ?」
烏磨「下衆いですね。私と雪哉さんはそういった事はしてません」
賢史「は?だってあんた雪哉の家に行ってるんだろ?」
烏磨「雪哉さんの試作品や私のリクエストしたお菓子を頂いてるだけです」
賢史「雪哉はあんたの事好きなのに?」
烏磨「お友達です」
賢史「お友達って…、その気無しかよ」
烏磨「雪哉さんは納得してますよ」
賢史「ケーキだけが目的じゃん」
烏磨「体目的みたいに言わないでください。ケーキのお礼はちゃんとしてます」
賢史「お礼って…」
烏磨「時々私が作ったものをご馳走しますし、私の知り合いの三ツ星レストランに連れて行ってあげたり、ご要望があれば慰めて差し上げてますよ」
賢史「慰め…やっぱヤってんじゃん!」
烏磨「いいえ、雪哉さんが望むので、縄で膝って、彼のする自慰行為を視姦して詰って差し上げてるだけですが?」
…雪哉。何やってんだ。
だがあいつの事だ、ノンケに叶わない恋してるって胸躍らせてるんだろう…。
よだれ垂らして喜んでる姿が目に浮かぶ。
だが、烏磨も烏磨だ、気がないなら構わなきゃいいのに。
百目鬼「雪哉をあんまり泣かせるなよ」
烏磨「彼自身が泣かされたがってるんですが?」
百目鬼「あんま、悲しませないでやってくれ」
烏磨「そんなことしませんよ、雪哉さんの喜ぶことしかしてませんよ」
ニコニコ胡散臭く笑う烏磨は、どこまで本気なんだろうか?
雪哉には散々迷惑かけたから、あいつにもパートナーができてほしいが…、雪哉は今烏磨に夢中だし、烏磨は何考えてるか分かんねぇし。ただ…烏磨が雪哉を気に入ってるのは確かなんだがな…。
賢史「なんだよなんだよ、リア充ってか」
百目鬼「リアジュウ?」
賢史「リアルが充実してるお前らのこと!」
百目鬼「あぁ、そういう意味なのか、確かにリア充だな」
マキがいる、それだけで世界が明るくて、絡まった糸が綻ぶ。マキはいつも花のようで、みんなの前では色鮮やかな花畑のようなのに、俺の隣では儚げな真っ白い花でありながら、すべてを浄化する。マキがいると俺が俺でいい気がして、心があったかくて、忙しくて、離したくなくて、簡単に嫉妬に狂いそうになるが、あいつはそばにいてくれる、狂っても離れないと思えるから狂わない。狂いたくない。狂うくらいなら優しくしてやりたい。泣かせたくない、だけど俺ってやつはマキを泣かしてしまうし、涙を見るとムラっと獰猛な猛獣が動き出す。悲しい涙は見たくない、流させるなら、嬉し涙がいい、嬉し涙ならそう簡単に泣かせられるもんじゃないし、マキの感情を動かせるのは俺だけだ。これからもいっぱいあいつを知って、いろいろ解り合っていかなきゃならない、…恋愛偏差値だって上げなきゃいかんし、キザなセリフも少しは言えるようにならなきゃ…、見習いたくないが…、賢史に頼るほかない、今の俺じゃキザなセルフなんて〝全く〟言えないし、あいつをドキドキさせる言葉なんか思いつきゃしない…。
ただ、これだけは言える、二度と離さない。開放してやれない。マキを、茉爲宮優絆を幸せにしてやれるのは、俺だけだ。
マキの今の笑顔を守って増やしていく。
俺が…。
賢史「あーあ、だらしない顔して笑いやがって」
百目鬼「は?、俺は笑ってない」
賢史「笑ってましたー。どうせ女王様のことでも考えてたんだろ、でれぇーって目尻が下がって鼻の下伸ばしてたぜ」
百目鬼「は!?そんな顔するわけないだろ」
賢史「してました。な、烏磨先生」
烏磨「ええ、幸せそうな顔なさってましたよ」
はッ?!
俺が??
いや、確かにマキのことは考えてたが。
賢史「あーヤダヤダ、これだから恋愛偏差値小学生以下のリア充は…」
百目鬼「だから、なんで小学生なんだよ!」
賢史「よーし!今日はとことん飲むぞ!神!お前が潰れるまで帰らないからなぁ!!」
百目鬼「わっ!溢れんだろ!やめろ!」
賢史「飲め飲めッ!!俺の注いだ酒が飲めないのか!!」
烏磨「ハァー、騒がしい人達ですね。せっかくのお酒が不味くなります」
賢史「烏磨!貴様も潰れろ!!」
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