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愛の証④
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「お前が良ければ、続けてくれ。」
コウタが、頼むと ハルは小さく息を吐いた。
「 …分かった。」
2人の短い会話が終わると、ハルは、今度はコウタの右斜め後ろに立ち、さっきと同じことを繰り返した。
すなわち、先程とは逆の角度で、背中から足首まで、びっしりと、赤い線を描き出した。
言うまでもなく、コウタの身体にはすでに一面ミミズ腫れが並んでいる。
その上に、重ねるようにして振り下ろされるケインの痛みは、壮絶だ。
しかし、コウタは、湊が喜ぶ顔を思い浮かべることで、苦痛を喜びに変えた。
湊さん… 愛してる。
本当に、愛してるんだ。
上から下へ… 下から上へ…。
ケインの痛みが背中の上部まで戻ってきて、ハルがコウタの頭をグイッと下に押さえた。
次が 最後だ。
これが… 痛い。
死ぬほど痛い一打になるはずだ。
コウタは、ギュッと目を閉じて、身体を硬くして衝撃を待った。
ピシッッッ
最後の1発は、コウタがうつむくことで露わになったうなじに、命中した。
「うっあぁぁぁっっっっっ!」
あまりの痛みに我慢できず、コウタは思わず声を上げて、ドンッッッと 壁を拳で殴った。
「くぅっっっっっ 」
何度経験しても、身悶えするほどの痛みに、全身が鳥肌だった。
でも… これで、コウタの首には、湊が望む首輪のような赤い一筋が、綺麗に描かれたはずだ。
そして、コウタの背面には、無数の鞭の痕が赤く交差して、湊が好む身体ができたはずだ。
コウタは、数秒…、ほんの数秒間、息を整えるために時間を使ったが、すぐに振り返ると、両手を頭の上にのせて、身体の前面に鞭を受けるための姿勢をとった。
ハルは、コウタの斜め前から、再び淡々とケインを振り下ろし始めた。
コウタは、ハルが与える痛みに耐えながら、ハルの腕は大丈夫だろうか と考えていた。
与えられたケインの数は、数えてはいないが、恐らく、ゆうに100は超えているのではないだろうか。
それは、かなりの重労働であるはずだ。
その証拠に、ハルの額には、うっすらと汗が滲んでいた。
それでも、文句ひとつ言わず、全力でケインを振るってくれるこの友人に、コウタは心から感謝した。
身体の前面は、背後に比べて皮膚が弱いため、打たれる痛みは数倍だ。
どんなに歯を食いしばって耐えていても、噛み締めた歯の間から、声が漏れてしまう。
ピシッッッ という 皮膚を切り裂くような 乾いた音の後に ックゥ… あぁっっっ… と コウタの苦痛がにじむ声が続く。
ハルは、痛みに顔を歪ませているコウタの表情を時折確認するように覗き込みながら、ケインを振るい続けた。
ピシッッッ
っっくうぅぅ…
ピシッッッ
あぅっっ
ピシッッッ
あっっ…あぁぁぁっっっ
コウタの声が、だんだん大きくなり、あぶら汗がコウタの額ににじむ頃、ハルは、部屋の隅にあるタンスの引き出しから、自分のTシャツを取り出して、コウタの口の中に押し込んだ。
ありがたい。これで、大きな声を上げずに済む。
コウタは、ハルの気遣いに感謝して、グッと口の中のTシャツを噛みしめた。
この痛みに耐えることは、自分の湊への愛の証しだ。
それは、恐らく他の誰にも真似できない、コウタにしかできないことだ。
コウタには、そういう自負があった。
湊さん… 愛してる。
他の誰も、湊さんのために、これほどの痛みに耐えることなんて、できないはずだ。
俺だけ… 俺だけが、湊さんのために耐えられる。
湊さん… 俺だけだよ?
その誇りが、コウタに、ただじっと、凶暴な鞭に耐えさせた。
足首まで降りたケインが、2往復を終えて胸の上まで戻ると、ハルがコウタの額に手を当てて、後ろにグッと押した。
あぁ… ようやく…。
コウタには、これからコウタを襲う死ぬほどの痛みへの恐怖よりも、これで湊の元に戻れるという喜びのほうが、ずっと大きかった。
コウタは、できるだけ頭を後ろにそらした。
トントン… と、喉仏のすぐ下あたりに、ケインが当てられて…
ビシーーーーーーーーーーーーッッッ
息ができないほどの衝撃が降ってきた。
「んんんーーーーーーーっっっ 」
口の中になにも入っていなければ、きっと、家中に響き渡るほどの叫び声をあげたのだろうか、Tシャツで口が塞がっているおかげで、そう大きな声は出さずに済んだ。
「すごいな。大丈夫か?」
コウタのあまりの痛がり様に、ハルが苦笑しながら、コウタの口からTシャツを引っ張りだした。
「 ああ…。」
コウタは、そう答えるのがやっとで、自分の首筋にできたミミズ腫れに手を伸ばして、その感触を確かめた。
あぁぁ… これで、首輪のように見えるだろうか…。
赤い首輪… 湊さんの好きな、赤い首輪。
全てが終わり、自分の身体の前面にできた鮮やかな赤い線状痕を見下ろしたとき、コウタは、なんとも言えない幸福感に包まれた。
コウタから湊への、愛の証だ。
湊さん… 湊さん… 愛してる。
湊さんは、きっと喜んでくれるだろう。
湊さんも、俺を愛してくれるだろうか…。
ふと、ハルを見ると、ハルは、ケインを持つ手をダラリと体の横にたらし、肩で大きく息をしていた。
コウタは、ハルの手からゆっくりケインを受け取ると、それをクローゼットの中の元の位置に丁寧に戻した。
コウタがクローゼットの扉を静かに閉めて、振り返ったとき、ハルは、さっきまでと同じ場所に立ったまま、ギラギラとした目で、コウタを見ていた。
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