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森の館⑨
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コウタはてっきり、今夜はどこかのレストランで食事でもするのだろうかと予想していたが、湊のこの一言で、行き先はレストランではないのだということを悟った。
湊は、まっすぐ前を見ていて、コウタからはその表情は分からない。
期待なのか不安なのかわからないが、コウタの心臓はドクンドクンと早鐘のように打ち始めた。
その時、左手にオレンジの街灯の光に照らされた大きな門が見え、車はスピードを落とすとその門をくぐった。
そのまま少し走ると、正面に大きな洋館が現れた。
車はその玄関の前に滑り込んで、静かに停まった。
いつものように、湊の運転は乗っている者に全くストレスを感じさせない。
走り出す時も停まる時も、もちろん走っている最中も、少しの振動もない。
まるで、冷静で動じることのない湊そのものだ。
玄関の前には、仰々しい燕尾服を着た初老の男性が立っている。
湊はシートベルトを外すと、湊に見とれて動けずにいるコウタに苦笑した。
「コウタ?どうした?」
「… 湊さん。」
湊は、コウタのシートベルトを外すと、右手をコウタの肩に乗せ、コウタの身体に覆いかぶさるようにして、左手でシートベルトをゆっくりドアの際に戻した。
キスをねだるようなコウタの表情に、意地悪をしてやりたい気持ちも膨らんだが、今日はコウタの誕生日であることを思い出し、湊は唇に触れるだけのキスをした。
離れる瞬間、湊を追うように舌を伸ばしたコウタに、湊がもう一度軽くキスをすると、コウタの目には涙があふれた。
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