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地下室①
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勘がいいコウタのことだ。
もしかしたら、自分が痛めつけられるためにここに連れて来られたことに、気がついたのかもしれない。
それでも健気に湊に微笑んで見せるコウタを、湊は心の底から愛おしいと思った。
俺もあの時… 初めてここに連れて来られた時には、こんな表情をしていたのだろうか…。
もう、ずいぶん前のことだが、あの日のことは昨日のことのように憶えている。
あの時見たもの、聞こえたもの、隣に立つ男がまとっていた香水の香りまで、すべて記憶に焼き付いている。
全てを壊され、打ちのめされ、絶望感の中で、ただ必死に耐えた。
永遠に終わらないのではないかとさえ思える苦しみに、目が開けられなくなるほど泣き腫らして、耐えた。
これから、あの同じ苦しみをコウタに与えることを思うと、不安を隠して湊に笑顔を作るコウタが、不憫に思えてくる。
でもこれが、湊の愛し方だ。
湊はあの時の自分を思い出しながら、コウタを安心させるように肩に手を回して引き寄せると、唇を重ね、コウタの口の中に舌を忍び込ませた。
口内を一周かき回してから口を離すと、コウタはトロンとした目で、湊を見上げた。
「行こう。」
湊は、コウタの肩を抱いて、建物の中に入った。
扉を抜けると、ふたりは男性の後について奥に進んだ。男性を先頭に地下につながる階段を降りながら、湊はこれから始まることへの期待から高鳴る胸を隠すことができず、口元に笑みを浮かべていた。
階段を一番下まで降りると、目の前にひとつに小さな扉があった。
男性が鍵を開け、湊に微笑んだ。
湊は男性に小さくうなずいてから、自分で扉を開けて、コウタの肩をグッと引き寄せた。
「おいで。」
いつものように、コウタに呼びかけて、室内に足を進めた。
案内役の男性は、ふたりが部屋に入ったのを見届けると、静かに扉を閉めた。
ガチャンと外側から鍵を閉められた音がして、コウタは思わず振り返ったが、すぐに思い直して、湊に身を寄せた。
大丈夫。湊さんがいる。
湊さんと一緒だ。
ここがどこだろうと、湊さんがいる。
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