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起‐1
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赤葦(アカアシ)が居ないと何にも出来ない訳じゃないし。
……てか、そんな歌、あったな。
でも、ホントのことだ。
ヤカンを火に掛けて紅茶の在りかを探すなんてしないし(そもそも紅茶なんて飲まないし)、自分が作った朝食が不味いのを誰かのせいにもしたくない。
他人の目には、オレが赤葦に頼りきりで赤葦任せにして お気楽に自分勝手に赤葦を振り回しているように見えるんだろう。
や。そうじゃない、とは言わないけども。
確かに楽してるとは自覚してるけども!
でもそれだけじゃない。
オレの中にちゃんと『オレ』があって、オレは『オレ』を信じて進んで来たし『オレ』を曲げたりしないし、だから『オレ』は、……あれ?オレ、で良いのか?何だかよく分からなくなってきた。
とにかく!
オレにとって赤葦京治(アカアシ ケイジ)というヤツは、高校の頃から苦楽を共にした頼りになる後輩。オレの1番の理解者と言ってもいい。世話好きで口うるさいけどオレを信頼してサポートしてくれる。
そして、オレのバレーを愛してやまない男。
……と思ってたから、あの反応には驚いた。
そんなに怒るコトか?
そういう自分にも驚いた。あんなに言い返さなくても良かったかなー。
でも、オレは悪くない。
これが原因で赤葦がオレの元を去る、と言うのなら、オレは引き留めない。
だって赤葦が居なくたって何にも出来ない訳じゃないんだから。
頭の中に溢れかえる言葉を整理しようとせず、むしろ言葉の波に翻弄され感情をさらけ出すかのように、木兎光太郎(ボクト コウタロウ)は鼻を、ふん、と鳴らす。
そして赤葦と口論のきっかけとなった週刊誌に目をやる。
激昂した赤葦が机に投げつけ開いたままの頁には、
自分と、ある女優とのツーショット写真に加え、スキャンダラスな文言が踊っている。
【バレーボール全日本エース木兎光太郎、熱愛発覚!】
うまく撮れてるよなー、と木兎は感心する。
所属チームでの練習が終わり、チームメイトは帰って行った後の、誰も居ないミーティングルーム。
静かな空間で木兎は週刊誌を手に取り、少し眺めてから無造作にバッグに突っ込み、部屋を出た。
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