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起‐2
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「木兎さんなんて、オレが居なけりゃ明日の予定だって分からないくせに、『オレのことは放っといてくれ』なんて、どうしたらそんなコトバが出てくるのか理解に苦しみます!
オレは事実関係を聞いただけなのに、ちゃんと答えないし、でも有り得ないじゃないですか!
木兎さんが熱愛なんて!オレに何の相談もなく女のヒトと会うとか!まあ、せいぜいご飯を食べるくらいでしょうけど、熱愛て!
ちょっと会うだけで熱愛?おかしいですよ!
話題性が担保されりゃ何でもイイんですかね!
オレは認めません!木兎さんのコトだって謝るまで知りませんよ。オレが居なくて困れば良いんです。
オレは本気ですよ?木兎さんが困ったって自業自得なんですから。オレが折れる?しませんよ、今回は!折れたりなんか、するもんですかっ!」
赤葦京治が、彼にしては珍しく感情をあらわにして一気に言い募る。
「ああ……うん、ぼっくんが……あー、そう……」
赤葦の言葉のマシンガンを一身に受けた及川徹が、木兎を愛称で呼び、困ったように笑う。
何と言って良いか分からずに、当たり障りのないことを口に乗せる。
梟谷学園高校の体育館では、男子バレーボール部の練習が終わり、部員達が帰った後である。
コーチを務める及川が、日課のようにこなしているサーブ 練習を1人で始めようか、としたところ突然、赤葦が現れた。
木兎と赤葦はこの部のOBで、折に触れ部活に顔を出している。逆に、この高校と関わりのない及川が、臨時職員兼男子バレーボール部のコーチとして存在しているのは、木兎の働きかけのお陰も否定出来ない。
かつては、及川も木兎と一緒に全日本のメンバーとして世界と渡り合った。
エースストライカーの木兎にトスを供給し、若き司令塔として注目されたのがセッターの及川だった。
木兎のスパイクが決まるとチームは勢いに乗り、その勢いがまた木兎の力となって及川を刺激した。
イケイケのお祭り状態のように盛り上がり、相手チームを圧倒することもあった。
その木兎に、高校・大学を通じてセッターとして支えたのが赤葦である。
1学年上の木兎を追って同じ大学に進み、全日本に招集されたこともあるが、セッターには及川を始めタレント揃いの年代で、次第に代表から漏れていった。
それでも赤葦は、献身的に木兎の身の回りの世話を買って出て、現在は木兎と同じ実業団チームでコーチングスタッフとして名を連ねるが、実質は木兎専任のマネージャーのようなトレーナーのような立場で相変わらず木兎の世話を焼いている。
つまり、赤葦が言うところの『オレが居なけりゃ何にも出来ない』木兎、に仕立て上げたのは、当の赤葦本人だ、ということに対して周囲に異論はない。
でも。
と、及川は、2人を見ていて常に感じることを
また思い出す。
でも多分、ぼっくんは、1人にされたとしても何とかしちゃうんだろうな。
あの無類の明るさで周りの人を取り込んで、ぼっくんの為に動きたい、って気にさせちゃうんだろうな。……だから赤葦くんはぼっくんの傍を離れないんだよね。取って代わられそうで怖いんだよね。
「うん、分かった!ケイジーのお怒りはごもっとも!じゃあもう お役御免で良いんじゃない?ぼっくんなんて放って置きなよ!」
赤葦のことをケイジーと呼び、及川が笑顔で赤葦の主張を全肯定する。
「大体、ぼっくんはさー、がさつだしデリカシー無いし声はデカイし!一緒に居るだけで疲れちゃうじゃん?ケイジーの好意を良いコトに、どんどん付け上がっちゃってさー!」
わざと木兎を非難する言葉を並べて、赤葦の反応をみる。
そして、当然のように返ってくる筈の反論を待った。
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