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承‐2
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そんな赤葦の心配をよそに、木兎はいつも通りに練習に現れた。遅刻することなく、遅刻しそうだと慌てた様子もなく。
チームメイトやスタッフの1人1人と挨拶を交わして、太陽のようなオーラと共に赤葦に近づいてくる。
「お。赤葦、おはよう」
快活な笑顔が眩しい。
昨日の屈託をその表情に探すが見当たらない。
「……おはよう、ございます」
赤葦が挨拶を返す頃には、既に監督に話し掛けている。
……普通だ。
他のチームメイトやスタッフに対するのと同じだ。
昨日まであんなに近くに居たのに。
今日は、ポン、と突き放されたような距離感が。
目に見えない境界線が存在しているようだ。
誰よりも木兎に近いところに居る、と自負していた。そんな優越感は消え去り、その他大勢として木兎に憧憬の目を向ける存在になってしまったのか。
『何故、電話を寄越さなかった』と聞いてくれた方がマシだった。
その方が、自分は必要とされている、という自尊心をいくらかでも満足させたから。
これじゃ、まるで、お前は要らない、と切り捨てられたも同然だ。
普通である、ということは 特別ではない、ということ。
どこでどう間違えたのか……?
赤葦は、自分の指先の冷たさに絶望 し、ぎゅ、と拳を握り締める。
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