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転‐3(菅原の長い回想その1)
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「昔のハナシじゃん!」
と、及川は言った。
確かに、あれっきりで、後にも先にも報道されたことはもとより、噂すら聞かない。
そういう点で言うなら、及川の一途な想いは菅原に向いていると信じて良いのだろう。実際、疑おうとも思っていない。
ただ、あの時の……及川と女優との写真を見た時の衝撃は未だに忘れられない。
……似合っていたんだ。隙が無くて。2人で顔を合わせて何か話してるその様子が。絵になり過ぎて洒落にならないレベル。
及川は、オレが感じた想いを分かりはしないだろう。
菅原は、その時の絶望を思い出す。
いくら、言葉で説明したとしても、きっと本当に理解することは出来ないだろう。
例えば。立場が逆で。オレがそういう写真を撮られたなら。そしたら少しは分かるかも知れない。
でも、オレじゃあ到底あの美しさは醸し出せない。及川を嫉妬させることは、出来ない。
遊んでいるんだろ。て、それくらい覚悟していた。
彼女だっていたんだし。注目されて、人気があってモテるし、優しいところがあって、ちょっと軽い。
遊んでたって、咎める気はない。オレの見えないトコロで、なら。
オレに、ゼッタイ知らせることなく遊ぶのなら、かまわない。そんな風に思ってなきゃ、及川みたいな人気者と付き合っていけない。ましてや男同士。
どこか肩身の狭さもあって。
うるさいコトは言うまい。
そう腹を括っていた筈なのに。
眼前に突き付けられた事実は、思いの外の動揺を菅原にもたらした。
別れてくれ、と言われるなら、受け入れるしかない。だけど、信じられない。
コイツは、オレに惚れてる筈だ。
そんな気持ちの隙を及川に狙われた。
……いや。アイツは狙ったつもりなんか無くて。
本能的に嗅ぎ付けて。コトバだけで足りないなら、カラダも使って説得しよう、許されよう、としたのだろう。
振り上げた手を掴まれ、そのまま床に押し倒された。オレの部屋で。アイツが泡食って駆けつけた、アイツの痕跡がいくつもある、オレの部屋で。
すがるように、せがむように。
及川は菅原を求め、唇を熱く押しつけた。
そのまま、なし崩し的に、このハナシを無かったことにしたい、という及川の狡さを嫌って菅原が首を振る。
押しつける対象を失った及川の唇は、菅原の首筋に埋まる。
スガちゃん、ごめん。スガちゃん、違うんだ。
懇願のように、呪文のように、及川は菅原に許しを乞い続けた。
ずるい、と菅原は憤る。
謝る前に何故ちゃんと説明しないのか。説明出来ないのか、と。
及川が菅原から顔を起こして、その瞳を覗き込む。
自分の懇願が受け入れられたと思ったのか、菅原の頬をひと撫でして唇を深く合わせてくる。
性急に舌を絡めて、菅原の熱を上げようと口内を掻き回す。
ずるい、と再び菅原は憤る。
舐められてたまるか、と自分の口の中を、我が物顔で動き回る及川の舌先をキュッと噛む。
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