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転‐5(菅原の長い回想その3)
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その時の感情が。
木兎の件を知った時、雑誌で写真の彼女を見てしまった時、やはり蘇ってしまった。
「昔のハナシじゃん」と及川は慌てたように言って
「昔のハナシだよ」と、頬を緩めて菅原を見た。
「分かってんだけど……」
菅原が呟くように言って、及川にすり寄る。
「なあ、トオル……オレは、お前を止めていないか……?」
「え?」
及川が意外そうに聞き返す。
「や。違う。今のナシ!お前が止まる訳ねーよな。好きなように生きてるもんな!言い間違いだ。
わりぃわりぃ」
菅原が言い繕う。
「こうちゃん……」
及川の瞳が優しく菅原をとらえる。
「言われなくても、そうしてるよ。でも、オレが何をしようと何処へ行こうと、こうちゃんが居てくれなきゃダメなんだよ?」
「あん時も、そうだった?」
菅原が及川の胸に頭をつけて言う。
「あのとき?」
「……彼女と写真 撮られた時」
「当たり前じゃん!」
及川が笑い飛ばす。
「でも、事後報告だったよな?」
菅原が拗ねたように続ける。
「あれは……動き出したらアッという間で……オレもまだ子どもみたいなもんだったし。……もしかして、未だに怒ってるの?」
「~~~~~~」
「何て言ったの?」
及川が柔らかい声音で尋ねる。
「知らんっ」
菅原がヤケクソのように言う。
「知らん、て!」
「ちょっと思い出してモヤッとしただけだよ!」
菅原が更に頭を押し付ける。
「……ごめん」
「謝るなよ、トオル。もっと冒険したかったのにオレが枷になってるんじゃないか、とか、そんなことは思ってないから。露ほども思ってないから!安心しろ」
「……それが、こうちゃんのシコリ?」
「……」
「ばかだなぁ」
及川の眼が優しい。
「うるせ」
菅原が強がる。
「アレが流れたのはオレのせい。怪我もあったし。遅かれ早かれダメになってた。……こうちゃんも知ってるじゃん」
「分かってるよ……お前の転機をオレがダメにした、っていう傷痕を残したいだけの、オレの自己満足だ、ってのは。……本当にオレは、お前のことになると弱くなって……こんな自分がイヤなんだよ」
菅原が、言葉を選ぶように、ぽつりぽつりと及川の胸元で呟く。
「ばかだなぁ」
もう一度 言うと、及川は菅原をぎゅっと抱き締める。
「オレはさ。言葉にするのって、何か照れ臭くて、こうちゃんが可愛いと思うとすぐに抱き締めたくなって、そのまま有耶無耶にしてる自覚はあるんだけど。こんなにキミを求めるってことは、キミが愛しくて堪らないからで……。だから、キミの不安を吹き飛ばすくらい抱きたいんだけど、良いかな?」
「……何を今さら……」
菅原が及川の腕の中で小さく首を振る。
「カッコつけてないで、早くオレのこと、……トバしてみろ」
強がる菅原の耳が赤く染まるのを見て、及川はそっと そこに唇を落とす。
「うん。……お言葉に甘えて」
その耳元で低く甘く囁くと、ビクリと顔を上げた菅原の眼が潤む。
トオル、と言い掛けた唇を塞いで、及川がゆっくり押し倒す。
菅原の舌がいつもより性急に動き、腰を押しつけてくる。
及川は菅原の舌を優しく絡め、体重を掛けて菅原の熱さに応える。
甘い吐息と、小さな喘ぎ声を合図に、2人は互いを求め合った。
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