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転‐6
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「裏切られた、ていうのとは、自分の場合、違うのかも知れないんですけど……」
赤葦が漏らした言葉に、過去をほじくり返していた菅原は、我に帰る。
「あ。そうか?」
当たり障りのない相づちで赤葦を見る。
「はい。……オレと木兎さんとの関係は、及川さんと菅原さんのそれとは違うものですし……」
赤葦の語尾が消える。
「自分がその人に対して、こうだろう、と抱いたイメージを損なわれたら、裏切りなんじゃね?アイドルなんかは、その最たるモノだよな」
「そうでしょうか。それで良いんでしょうか……」
思案顔で赤葦が繰り返す。
「だって。赤葦は、それで怒ってたんじゃないのかよ?」
菅原がストローを揺らしながら、尋ねる。
「そうなんですけど……あの時は……。アタマに血が上る、って、ああいう状態を言うんでしょうか、つい、カッとなって……」
赤葦が恥じるように答える。
「うん。赤葦の献身ぶりを見てれば、それは仕方ない、と、オレは思う。でもな。怒ったあと、ちゃんと話をしたのか?」
諭すように言う菅原に、
「……っ。それが、その、……」
と、赤葦は唇を噛んで沈黙する。
「話すこと大事、って言ったべ?オレみたいにシコリを残して欲しくないんだよ」
菅原がゆったりと微笑む。
「だって……。でも、そのハナシをする、っていうことは、木兎さんに対するオレの気持ちが分かってしまう、ってことで……」
赤葦の眼が揺れる。
ふー、と菅原は軽く息を吐き、
「話してみなきゃ分からんべ?でも、無責任な言い方かも知れないけど、木兎なら大丈夫、て気がするんだけどな」
と言う。
「大丈夫、て……何が、どう大丈夫なんですか!」
赤葦が口をへの字にして菅原を見る。
「色々、全部。木兎なら大丈夫!……と思う。」
「そんな…………無責任な……!」
赤葦が鼻を鳴らす。
「はは。怒るなよ。……お。もうそろそろ時間か?
リハビリ室に戻るか」
ちら、と時計を見て、菅原が言う。
「あ。……そうですね。行かないと」
赤葦が驚いたように言って、先に席を立つ。
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