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転‐7
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「本当に、良いのか?」
赤葦が申し訳なさそうに眉を下げる。
「大丈夫ッス!オレ、今日は病院終わったら帰ってイイって言われてるんで、このままタクシーで帰ります!赤葦さんはお友達とゆっくり積もるハナシで盛り上がって下さい!」
リハビリ室で処置を受けていた赤葦のチームメイトが快活に返す。
「でも……」
言い淀む赤葦に、
「大丈夫ですって!監督も了承してるんで。赤葦さん、真面目だからいつもチームに戻って来るけど、皆 電話連絡して帰宅してますよ!」
と、彼は笑い飛ばす。
「そうなんだ……木兎さんはいつも、戻る、って聞かないもんだから……」
「あはは!なんで、今日はここで失礼します!ありがっした!お疲れ様ッス!」
病院の玄関に停まっていたタクシーに乗り込んだチームメイトは、ひらひらと手を振って、スマホを取り出し、既に興味はそちらに移っている。
誰かと会うのかな。……あいつ、コイビト居るんだっけ?
と、赤葦はぼんやりと考える。
走り去ったタクシーを見送り、一部始終を見ていた菅原に目を遣る。
「んじゃ、オレも上がりだし、おコトバに甘えてメシでも食いに行くか?まだ話し足りねーべ?」
菅原がニカリと笑って赤葦を見る。
「あ……はい。ご迷惑じゃなかったら……」
と、頷く赤葦の横から、
「菅原」
と声を掛ける者がいる。
「あ、岩泉!……またサボってんのかー?」
軽口を叩く割には、表情を少し強ばらせて菅原が答える。
「人聞きの悪いことを言うな。……お見舞いに来たんだよ」
岩泉、と呼ばれた者が苦笑する。
岩泉一は、及川の幼なじみで、高校では菅原達の烏野高校の、強力なライバルとして立ちはだかった青葉城西高校のエースとして活躍した。
高校卒業後、偶然にも大学で一緒になった3人は、 バレーボール部を通じて親しくなり、卒業後も付き合いは続いている。
ただ、大学の頃から菅原に好意を抱いていた岩泉は、過日その想いを遂げたものの、菅原は及川の元に戻り、以後は微妙な距離感が保たれている。
「見舞い……1人で?」
菅原が心なしかホッとしたように尋ねる。
「上司と一緒に、だ。今、その上司をタクシーに乗せたトコロだ」
岩泉が投げるように言う。
「ふーん。……お前は、乗って行かなくて良かったのか?」
菅原が他意なく尋ねると、岩泉は少し傷ついたように眉を寄せ、
「……方向が違う」
と横を向く。
2人の間の、ぎこちない空気を感じた赤葦は、
「あの、菅原さん。やっぱりオレ……」
と、口を挟む。
「あ、悪い、赤葦!」
菅原が、慌てたように言うと、
「オレこそ、すまん。……赤葦くん、久し振りだな。オレ、岩泉だけど、覚えてる?」
と、岩泉が赤葦に向き直る。
「勿論です、岩泉さん。お久し振りです」
赤葦が微笑むように岩泉を見る。
「お互い、及川や木兎を通じての付き合いだけど、な」
「大学以来、ですかね?でもオレ、岩泉さんのプレー、好きでした」
「お世辞も大概にしとけ」
岩泉が照れたように言って、思い出したように、
「そう言えば、木兎の移籍が決まったんだろ?赤葦くんも忙しくなるな」
と笑う。
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