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転‐9
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「あ。……うん。言わない方が平和かもな?」
菅原が、茶目っぽく笑う。
「揉めても知らんぞ。ちゃんと言っとけ」
岩泉が憮然と答える。
「んー。そだな、及川のヤツ心配性だからなー」
「お前とオレがセットになりゃ、面白くなかろうよ。まだ信用出来ないんじゃねーか?ヤツの気持ちは分かるよ」
「どーゆー意味だよ。んじゃ、手ェ出すなよ。
オレは清廉潔白だ!」
菅原が抗議するように唇を尖らせる。
「試してみるか?」
岩泉が挑むように笑う。
「おい!場所を考えて……」
不敵な笑顔の岩泉に思わず見惚れた菅原が、バツが悪そうに喧嘩腰になる。
「あの、菅原さん!」
赤葦が割って入る。
菅原達の事情を薄々知ってはいるのだが、今は自分の感情を持て余し、場の空気すら読み取れずにいるその顔は、泣きそうに歪んでいる。
「オレ、やっぱり帰ります」
赤葦は、1人になりたい気持ちと、誰かと一緒に居たい気持ちに揺れながら、先輩に迷惑は掛けたくない一心で声を絞り出す。
「んなコト言うなよー。せっかく岩泉もその気なんだし。行くぞ行くぞ行くぞー!」
菅原が赤葦の気を晴らそうと、はしゃぐように腕を突き上げる。
「『みやぞん』かよ」
岩泉が吹き出す。
「すがぞん、て言って♪」
菅原がわざとらしくウィンクをする。
2人に釣られた赤葦が、
「スミマセン」
と小さく笑う。
それに気をよくした菅原が、
「よし!オニイサン達が奢っちゃる!」
と声を上げた時、
「菅原さんっ!!」
と病院から出て来た者が呼び掛ける。
「何だよー?今日はやけにお呼びが掛かる、……って、どした?」
菅原が声の方へ顔を向けると、病院職員とおぼしき若い男が、切羽詰まった表情で立っている。
「良かったー!まだ荷物があるから、何処かに居る筈だッと走り回った甲斐がありました!!トラブってて~~!菅原さん、来て下さい」
男は、ほぼ直角に体を折り曲げて頭を下げる。
「オレ、上がりなんだけどぉ」
菅原が頬を膨らませる。
「システムが~~!オレ達じゃどーにもなんないんスよーー!」
男が泣きそうな声を出して菅原にすがり付く。
「お前らでどうしようもないモン、オレが行ったって、」
「頼みますよ~~菅原主任!みんな、待ってるんですぅ!」
菅原の言葉を引ったくるように、男が言う。
「オレ、これから飲み会、」
「今度!オレが奢りますから!菅原主任~~!主任だけが頼りなんスよぉ~~!」
必死に訴える男の顔を見て、菅原は、ふ、と口元を緩める。
「仕方ねーなぁ。すぐ行くから戻ってろ」
そう言って男に背中を見せようとする菅原に、
「ダメです。一緒に来てもらわないと。帰られたら困ります」
と、男は菅原の腕を取る。
「……お前ら、オレのこと何だと思ってんの?」
菅原が鼻を鳴らす。
「行くと言っては雲隠れするけど、とっても頼りになる菅原主任」
男が真顔で返す。
「何だ、そりゃ。ったく」
言いながら、菅原は赤葦と岩泉に向き直り、
「悪い。……こんな状況になってしまいました」
と、頭を下げる。
「いえ。こちらこそ。……今日は、ありがとうございました」
と、赤葦は眉を下げ、
「早く行ってやれ。『頼りになる菅原主任』!」
と、岩泉は笑う。
「本当に申し訳ない!赤葦、ホントに、ごめん!」
菅原は、男に腕を取られたまま、もう片方の手を拝むように上げて、病院に戻って行く。
「お前、ホントに奢れよー?」
菅原が、男に絡むように言う声が聞こえる。
「勿論ッス!あ、昼の定食で良いッスか?」
「飲み会だ、っつったろ?!」
掛け合いのように言いながら廊下を曲がって行く2人を見送ると、赤葦と岩泉は、自然と顔を合わせて苦笑する。
「菅原さん、慕われてるんですね」
赤葦が羨ましげに言う。
「……距離が近い」
岩泉が憮然と呟く。
あ、と、ようやく思い当たる赤葦に、
「いや、何でもない。……ところで、どうする?」
と、岩泉が尋ねる。
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