アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
転‐10
-
「どうする、って……?」
赤葦が尋ねる。
「この後さ」
岩泉が赤葦の顔を見る。
「ああ。……菅原さんが居ないんじゃあ……」
言ってから、岩泉に失礼だったか?と気づいた赤葦は、力なく微笑んで岩泉の様子を探る。
「そうだな。……取り敢えず、駅まで歩くか」
何の頓着もないように言いながら、岩泉は足を進める。すると釣られたように、赤葦がその背中を追おうとする。
なんか、……懐かしい
岩泉の背中に、木兎の背中を重ね、赤葦の胸はキュッと締めつけられる。
懐かしい、というほど長い間、木兎と接していない訳ではない。
チームの練習でも会っているし、日常会話なら交わしている。
それでも、「赤葦、行くぞ!」と、赤葦が追って来ることを疑わずに前を行く背中を追うことは、写真を撮られてからはしていない。
高校の頃からずっと、あの背中を見守ってきたのに
何故、木兎は、自分に一言も相談してくれなかったのだろう、と赤葦は自問する。
信じるに足る人物だと思われていなかったのか。
頼りにするには心許ないと思われたのか。
そもそも、その必要性すら感じなかったのかも知れない。
今まで支えてきたつもりの、自分の献身は何だったのか。
自分は、木兎の『何』なのか。
話しがしたい。……木兎さんと!
赤葦は、そう強く願う反面、それでも何も言って貰えなかったら?と思うと、自分の存在が疑わしくなるほどの不安に襲われる。
自分は木兎に、更に言えばこの世界に必要とされていないのではないか、という強烈な自己否定の波が身体中を駆け巡り、行き場を失くした思いが声にならない声として赤葦から漏れる。
「っ……!!」
「………大丈夫か?」
赤葦の様子に気づいた岩泉が、振り返って声を掛ける。
唇を噛み締めた赤葦が、岩泉を見返し、押し殺すように、
「はい」
と辛うじて一言吐き出し、深く俯く。
男にしては白いうなじを見せて、何かに耐えるように背中を丸める赤葦の姿に、泣かれりゃ厄介だな、と、岩泉は微かに眉を寄せるが、無防備に晒されたぼんのくぼに哀れを誘われる、
ふと、そこに唇を寄せたい衝動に駈られ、岩泉は自らに宿る熱を意識する。
ああ、そうだ。菅原に会ったんだった
数分前に手放した笑顔が、岩泉の頭に甦る。
久し振りに会えて、言葉も交わせた。声を掛けた直後の、緊張した面持ちは岩泉を傷つけたが、ここに居る赤葦のお陰か、いくらか『友人』らしい会話が出来た。
オレはあいつの『特別』を望んでいるのだが。未だに望んで止まないのだが。
岩泉は小首を傾げて、赤葦の首筋を見つめる。
それでも。ただの友人らしい会話すら出来ない状態は、オレを不幸にする。
あいつら2人を愛してやれば良い、と割り切っているのだが。そのつもりで居るのだが。感情が走ってどうにも出来ない時もある。……今日みたいに。
菅原のうなじは、どんな風だったろうか、と、後ろから抱きつき、その場所に唇を落としてから、身体中の至る所に痕をつけ いとおしんだ、かつての栄光を辿る。
もしかしたら、オレ達は。
慰め合えるのかも知れない。
岩泉は、自分の熱を赤葦を以て発散し、また赤葦の苦悩を快楽によって軽くしてやれる可能性に気づく。
「やっぱり、何処かへ寄ってくか?」
岩泉が熱を押し隠して言う。
ぶっきらぼうに響くその声に、赤葦は、迷惑を掛けている、と判断し、
「いえ……。大丈夫です。帰ります」
と、極力、平静を装って答える。
岩泉は、赤葦の強がりに気づくものの、誘う為の言葉を他に知らず、
「そうか」
と口の中で呟き、こーゆー時はどうやって口説いたら良いんかな、と暗くなってきた空を見上げる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 35