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転‐13
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「気が向いたら連絡をくれ」
岩泉の声が不意に甦る。
何故、あの人は……?
赤葦が紙片に目を遣りながら考える。
さっきから否定していた可能性を、現実のものとして考え始める。
あの人は。オレと。今夜。一緒に。居てもいい。
と、思っていた……?
一言ずつ区切るように、その意味を確認するように、赤葦は頭の中で今日の岩泉の言動を思い返す。
菅原に声を掛けたところから始まって、2人の間に漂う、どことなくぎこちない空気。木兎の移籍を知らせ、及川に気を遣い、菅原が参加出来なくなっても、赤葦と食事を共にしても良いと思わせる雰囲気。
そして、スパイカーの手。
その手で赤葦の頭を撫ぜ、熱を生じさせ、しかし、帰って行った。……本日限り有効のホットライン を押し付けて。
そうか。菅原さんか……!
あの人は菅原さんが欲しいんだ。
赤葦は、自分は菅原の代わりなんだ、と、思い当たる。
なーんだ、と馬鹿らしくなって笑おうとするが、じゃあ お前はどうなんだ、と問う自分が居る。
オレだって。かつてのスパイカーというだけで。
その手に触れられただけで熱くなったじゃないか。あれは、木兎さんを意識したからだ。
本当に求めているのは木兎さんなのに、心が揺れているこんな時は、気遣ってくれる人なら誰でも良いんじゃないか。
だから行きずりの人にも抱かれたんだろ。
哀れなのは、どこか少しでも木兎さんに似たところはないか、必死に探す自分だ。髪型、目の色、声のトーン、喋り方……そんな些細なことに、自分を無理矢理 納得させて身を委ねてきたんだろ?
なら、あの手を求めたって、良いじゃないか。
かつてのエースの、相手コートに突き刺さるスパイクを放った、あの手を。
その為だけに。今夜限り有効の。
今夜限り、なんだから。
明日のことは知らない。今日、これから、この夜をオレがどうやって過ごすかが問題なんだ。
差し出された手を……まさしく、その手を。
オレは握り返すだけなんだ。
打算だって良い。この不安と迷いを消し飛ばしてくれるのなら。
オレと一緒に居てくれるのなら……!
赤葦は、スマホを取り出し番号を入力する。
3回のコールで出た相手に、
「まだ間に合いますか」
と尋ねる。
ふ、と笑った声の主は、
「余裕だろ」
と低く赤葦の耳元で言った。
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