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結‐1
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ミーティングルームのTVで木兎の記者会見を見た後、集まっていたチームスタッフらはバラバラと部屋から出て行った。
反応も様々で、木兎の活躍を信じ興奮気味に騒ぐ者、自チームのこれからを憂う者、口には出さぬが不満を隠さない者……。
それぞれの思いを胸に、次に自分が成すべき事を見据える。チーム内のエース争いは既に始まっている。
誰も居なくなったその場に、赤葦1人が残っていた。放心したように椅子に座り、ガラにもなく両足を投げ出して、電源が切れたTV画面を見つめていた。
イタリアなんて…遠過ぎます。木兎さん……
距離のみならず、アスリートとしての格の違いを見せつけられたようだった。
高校、大学、そして今……一番近くでそのプレーを見てきて、魅了させられて、誰よりも木兎のことを分かっている、と自惚れてきた自分が道化者のように思えて仕方ない。
心に穴が開いたような、って……こんな感じを言うのかな……
自分の身体の核を失ってしまったようで力が入らない。指先ひとつ動かすのさえ億劫だ。
涙も出ない。ただ空虚だ。空っぽ。
こんなに木兎さんを求めていたなんて。
オレの全てを投げ出しても追い掛けて行きたいけれど、それがあの人の望むことじゃ無いのなら、オレは……。
オレの全ては放り投げられたままだ。
収まるところを知らず漂い続けるだけだ。
「……木兎さん」
小さく呟き長い溜め息を吐く。
今日これからの、というより、今この瞬間をどうやって生きていけば良いのか。岩泉に救ってもらった筈の魂は、昨日よりも更に深い喪失感に包まれている。
虚ろな目をTV画面から剥がし、天井を仰いで再び息を吐こうとした、その時に。
バタン
ドアが開いて、いきなり世界は光で充ち溢れるように一変する。
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