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結‐2
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「いた!あかーし!」
スーツにネクタイ姿、というレアな支度の木兎が、赤葦を認めて笑う。
「木兎、さん」
先ほどTV画面で見ていた、あまりにも遠くに行ってしまったと感じさせた、その人物が。しかし、屈託なく、いつもと変わらず生気に溢れた声で自分を呼ぶことに、赤葦は戸惑いを隠せない。
「見てた?オレの会見?」
授業参観で手を上げたのを親に確かめる小学生のように、誉めて欲しいと顔中を輝かせる。
「……はい」
「カッコ良かった?」
木兎は満面の笑みで赤葦に近づく。
「……、はい」
普段ならシニカルに答える赤葦だが、木兎の圧に押され顔を赤らめながら、答える。
「おー、マジで?やったー!」
無邪気に笑う木兎を見て、赤葦は会見の様子を思い返す。
だって。……本当に格好よかったんだ。
スーツ姿が似合っていて……いつもより落ち着いた声のトーンで、真剣な表情で、受け答えをして。
時折、見せる笑顔が最高にチャーミングで……。
多分、見ている人の多くは、木兎の挑戦を好意的に受け止め、応援したいと思ったことだろう。
バレーボール界からも世界で通用するスター選手の誕生を期待したに違いない。
「そう言えば、あかーしさ。ゆうべ何処にいた?」
不意に木兎が尋ねる。
「……え?」
赤葦が口ごもる。
ゆうべ、って。
……ゆうべは、岩泉さんと一緒で。……寝落ちするまで抱き合って、……
「ネットで情報流れたのに、お前、連絡よこさないからさー」
木兎が不満げに言う。
「いえ、……あの、」
「ぜってー今日の会見の心配する!て思ってたのに!」
「……でも、広報がいますし、……」
「そうだけども!今朝になってもナシノツブテだし……あ、合ってる?ナシノツブテ?」
「合ってます」
赤葦は思わず微笑み、同時に今朝のことを思い出す。
昨夜の余韻を体に残し、もう一度抱かれたいと、岩泉の腕を引いた赤葦は、抱きかかえられるように浴室に連れて行かれ、優しく全身を洗ってもらった。
岩泉に触れられる度に、赤葦の体は快楽を思い出し熱を持ったものの、夜の間さんざ赤葦を貫いた岩泉自身は、その猛りが嘘だったように鳴りを潜め、慈愛に満ちた眼を赤葦に向けた。そして、全てを洗い流すかのように、丁寧にシャワーを使った。
一度家に戻ってから仕事に出掛けると言う岩泉は、ゆうべの事など、ついぞ忘れたかのようにサラリーマン然とした横顔を赤葦に見せた。
何となく釈然としない赤葦は、困らせるように岩泉の首筋に噛みついて、アトを残した。
「……別に、オレは続けても良いけどよ」
岩泉は、困る風もなく笑い、
「だけど、お前はそうじゃねーだろ?」
と、赤葦の頭を撫でた。
「でも。………ヨカッタから、……」
赤葦は、口にしてから恥ずかしさの余り、俯く。
「オレも。……だけど、オレ達はソレだけだ。分かるだろ?」
掠れた声に、悲痛な叫びのような切なさを感じ、赤葦は岩泉の顔を見た。
怒りと悲しみと愛しさと哀れみが入り交じったような瞳が見返していた。
「……後悔、………してるんですか……?」
「してねーよ」
岩泉が噛みつくように言い、自分を律するように背筋を伸ばして、微笑むように口を歪めた。
「……次は、本当に好きなアイツに、イかせてもらえると良いな」
「岩泉さん、……」
呼び掛ける赤葦の額に、岩泉はそっと唇を寄せて、軽くハグをすると、
「じゃあな」
と一言を落とし、部屋を去った。
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