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結‐4
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「……っ」
赤葦は言いたいことが多過ぎて、却って口を開けないでいる。
今、一言でも発したら。………オレ、崩れそうだ……
「え?!ヤダの?あーっ……しくったぁ!こんな展開、考えてなかった」
木兎が困ったように頭を抱える。
「……どんな展開になると思ってたんですか?」
「そりゃ勿論、あかーしが目を輝かせて尻尾振って『行きます!行かせて下さい!』ていう感じのー」
「しっぽ、て」
赤葦が呟く。
「だって、世界相手だぜ?テンション上がるだろ?!」
木兎が満面の笑みで言う。
「……オレに一言も言ってくれなかったくせに」
「ん?」
「写真の時も、何にも言ってくれなかったくせに……!」
「あー、アレは……」
「オレが居なくても1人でちゃんと起きられるし、食べることも体のケアも、……あんた、1人で何でも出来るじゃないですか!オレなんか必要じゃないんでしょう?!」
しまった感情的になり過ぎた、と赤葦は唇を噛む。
木兎は、赤葦をしばらく見つめてから、こくり、と首を傾げる。
「必要とか必要じゃないとか考えたこと、ない。
あかーしが一緒に居るのが一番自然な状態だから」
そう言うと木兎は真摯な瞳で赤葦を見つめる。
「何も言わなかったのは悪かったよ、謝る。けど、……お前、オレのこと好きだろ?」
「は?!」
図星を指された赤葦が狼狽える。
「お前、自分よりオレのこと優先するくらい、オレのこと好きだろ?オレのことになると、バカみたいに態度に出るくらい好きだよな。それ、ちょっと危なかったんだよ。なんせ、チョー秘密にしろ、ってイヤになるくらいクギ刺されてたからさ」
木兎が言っている『好き』と、自分が抱いている『好き』の意味合いが違うことに気づき、赤葦は少し落胆し、少し安心する。
「オレ、そんなに分かりやすい、ですか……?」
「あー、うん、オレのことになると、な。『木兎さん大好きですサイコーですオレのエース神です!』みたいなドヤ顔になる」
「そこまで……?!」
「あー。ちょっと盛った!」
アハハと笑う木兎に、赤葦の心が流れ出していく。
やっぱり
本当に、好きだ
改めて恋心に気づかされる。
「なあ、あかーし!オレについて来いよ!世界を見せてやる」
木兎が眼をギラギラと光らせて赤葦を見る。
自信に充ちた、その瞳。闘志に燃えて。畏れなど知らず。
新しいオモチャを手に入れた子どものように無邪気に。
手に入れられる栄光を疑わないチャレンジャー。
どれだけ前向きなんだ……
赤葦は誇らしくもあり心配にもなり、小さくため息を吐く。
「でもオレ、イタリア語なんて話せませんよ」
「大丈夫!日常会話程度ならオレでも出来るから!勉強したから!だから、あかーしならすぐ覚えるって!」
赤葦のことまで とことん前向きにとらえる木兎が、大きく胸を張る。
それを見た赤葦は、肩から力が抜けていくのを感じる。
表情が緩んだ赤葦に、
「なあ。オレ、またしばらくお前の手のひらで転がされてやるからさ!1本の指に入るオレを、上手く転がしてくれよ?」
と、木兎が不敵に笑う。
ああ、もう。
本当に、この人には敵わない
赤葦は、いつの間にか微笑んでいる自分に気づき、これから するべき事を頭の中で思い浮かべ、その忙しさを覚悟した。
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