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記憶のカケラ 23
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どれくらいの時間、僕はそうしていたのだろうか。
床にペタリと座り込み、ソファーに顔を伏せてずっと泣いていた。身体中の水分が出てしまったのではないかと思うくらい泣いて、僕は大きく深呼吸をした。
痛む頭を押さえてフラフラと洗面所へ向かい、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を洗う。タオルで拭いて鏡で見た顔は、瞼が赤く腫れていて、思わずフッと笑ってしまった。
寝室に行って、翔吾さんに買ってもらったリュックを出す。そこに、ほとんど翔吾さんとお揃いで買ってもらった服を詰めていく。冬のセーターも持って行きたいと思ったけど、さすがに入らないので諦めて置いた。
荷物を詰め終わるとリビングに戻り、テーブルの前の椅子に座って、翔吾さんへの手紙を書き始めた。
一文字一文字書き進めるごとに、もう枯れたと思った涙がまた溢れてくる。手の甲で何度も拭うけど、数滴が紙の上に落ちて、紙をふやけさせてしまった。
全て書き終えると、部屋の中をゆっくりと見て回る。
約五ヶ月、ここで暮らした。翔吾さんと僕の家。とても居心地が良かった。本当に、ずっと一緒にいたかった。でもダメなんだ。僕はどうやら、人をダメにしてしまうんだって。だから、翔吾さんの為にも僕はここにいてはいけない。翔吾さんをダメにしてしまう前に、離れなければいけない。
今日を逃すと、常に翔吾さんといる僕は家を出れない。僕の気持ちを優先してこのまま翔吾さんの傍にいて、翔吾さんが後悔する姿を見たくない。翔吾さんに嫌われたくない。
少しでも早く、翔吾さんから離れた方がいいんだ…。
「翔吾さん…黙って出て行く僕を許してね…。顔を見ると離れられなくなるから。…翔吾さん、本当にありがとう。愛してる…」
ベッドの上に畳まれた翔吾さんのシャツを抱きしめて、ポツリと呟く。僕は少し考えて、翔吾さんの匂いがするこのシャツも、持って行くことにした。
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