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フィルター掃除のしかた(3)
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ふせんはそのままにして説明書を閉じ、再び棚の中にしまいこんだ。
フィルターの仕組みは大体わかった。モーター部分に汚れがたまらないようにブラシで綺麗にしたり、ろ過に使用しているスポンジや石を交換する必要があるらしい。
黙々と作業を開始した。誠のことは、とりあえずあまり考えないことにする。
難しそうだなと思っていたけど、やってみれば案外面白い。分解とか組み立てとか、元からけっこう好きだしな。
「なあまこちゃん。その番組面白いか?」
ある程度作業が終わったところで、まこちゃんを振り返ると、新婚さんいらっしゃいをにやにやしながら見ていた。
「面白いぞ。ほらこの男、しゃべってないときも口がぽかんと開いていて間抜け面だ」
「えっ?ああ…ほんとだ」
「まことに似てるな」
「あー…あいつたしかによく気の抜けた表情してたよな」
誠はどこか世間知らずなところがあった。とんちんかんなことを言ってるときや、みんなの話の意味がわからなくてあっけにとられているとき、口をぽかんと開けていた。
「ところで、まことはいつ帰ってくるんだ?長く外出すると言っていたが、もうだいぶ経ったよな」
まこちゃんはテレビから目を離し、俺をじっと見つめた。
なんだか気まずくてまこちゃんから目をそらし、掃除道具の片付けをする。
「えーと…どうだろうね。海外に出張してるから、まだかかるかも」
「ふーん。寂しいな」
「…そうだね」
まこちゃんに、本当のことを言ったほうがいいんだろうか?いつかバレる嘘をつき続けるよりは…。
まこちゃんの視線はテレビに戻っていた。2組目の新婚さんが登場してきたらしい。
「…まこちゃん、実は誠は」
「結婚とはなんだ?」
言葉を遮ってまこちゃんが聞いてきた。
「あ、え?知らずに見てたの?」
「知らずに見ていた」
「えーと、結婚はー、愛しあう男女が共同生活をして子孫を残す活動のこと…かな?」
「なるほど。交尾のことか」
「うーん…そうかなあ…?まこちゃん、愛とかわかるの?」
「失礼な。俺は愛と勇気にあふれたなまずだぞ。それくらい知ってる」
「でも小さいときからずっと1匹で水槽にいたって…」
前に聞いたこと、うっかり言ってしまった。まこちゃんは不機嫌そうに口をつぐんだ。
「ご、ごめんまこちゃん…」
「構わんぞ。どーせ俺は仲間を知らない孤独ななまずだからな」
「ああー…」
「でも俺を野生から引き離したのはどう考えても人間の方だということを重々心に留め…」
「ま、まこちゃん!あのー…ちょっと外に出てみようよ!」
「…え?」
まこちゃんは目をパチパチさせた。
「せっかく人間の姿になったんだしさ、水槽の外の世界、案内してあげるよ」
話をそらそうと思いつきで話してしまったが、これけっこういいんじゃないか?まこちゃんも外に行けたら楽しいだろうし。
「別に…お前がどうしても連れて行きたいなら行ってやらんこともないが」
まこちゃんは渋々といったていに見せているが、体はそわそわきょろきょろとしているのが十分に伝わってくる。
「よし、じゃあ行こう!」
テレビを消して、俺たちは立ち上がった。
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