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フィルター掃除のしかた(5)
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何事もなくショッピングモールまで到着することができた。人外を連れているのに平和なものだ。
ただ、バケツを持っている右手が死にそうだ。
「まこちゃん、もう大丈夫かなぁ」
「何がだ?」
「バケツ…。水入ってるし重すぎてもう持ってられない」
「つしま、俺の命はそのバケツより軽いのか?」
「…え?!」
まこちゃんはにやりと笑った。
「冗談だぞ」
「も、持つよ…。まこちゃんの命に比べたら軽いもんだよ…」
「そうか?無理しなくていいんだぞ?」
「よく言うよ…」
プルプルしている俺を見て、まこちゃんは吹き出した。
「馬鹿だなつしま。俺も半分持つぞ」
「そ、その手があったか!」
バケツを真ん中にして、ふたりで持ち上げた。それだけでもだいぶ楽になる。
はたから見たら明らかに変な人たちだけど、気にしたら負けだ。
「じゃあ帽子買いに行こっかー。たしか2階に帽子屋があったはず」
「おう」
帽子屋に着くと、まこちゃんは急にはしゃぎだした。
「つしま!面白い形をしているな!」
「あー、そうかな?頭にかぶって日差しを避けるんだよ」
「おお!じゃあこれはどうだ?」
まこちゃんが手に取ったのは日除け布のついた大きな麦わら帽子だ。
「えーと…日差しを避けるのにはいいんだけど、農作業してる感がすごい」
「む…じゃあこれは?」
まこちゃんは次に黄色のつば付き帽子を手に取った。
「それは幼稚園児っぽいな〜」
「むうう…文句ばっかり言いよって!それならつしまが選べ。お前が選んだのをかぶってやる」
「えー?じゃあ、これ?」
とりあえず目についた麦わら帽子を渡してみたら、まこちゃんは不審そうな顔をした。
「さっき俺が選んだのと一緒じゃないか。農作業っぽいんじゃなかったのか?」
「いや、さっきのは布がついてたから…まあとにかくかぶってみてよ。今夏だし、ちょうどいいんじゃない?」
まこちゃんは渡した麦わら帽子をかぶり、俺をちらっと見た。
「どうだ?」
「似合うよ!」
「じゃあこれにする!」
即決だった。
お会計を済ませると、まこちゃんは帽子をかぶったままショッピングモールを歩きだした。
「お!つしま!あそこに魚がいるぞ」
「え?ああ、熱帯魚ショップだね」
まこちゃんにぐいぐい引っ張られ、熱帯魚ショップに着いた。色とりどりの可愛い魚がたくさん泳いでいる。
「わあ、いっぱいいるんだね」
「ん?…うんうん」
まこちゃんはどこか上の空でにやにやしている。
魚に会えてそんなに嬉しいのかな。
「えっと…どれか飼う?」
「え!いいのか?!」
まこちゃんは目を輝かせている。
「いいよ。どの魚がいいの?」
やっぱり、水槽にずっとひとりで寂しかったのかな。友達くらい何匹でも飼ってあげよう。
「あれがいい!」
まこちゃんは大きめの金魚を指さした。
「へー金魚か」
「あれが一番おいしそうだ」
「…え?」
「うちの人工餌も悪くないが、たまには生きた魚も食べたい」
「まこちゃん、金魚食べるの?」
「食べるぞ。俺は自分と同じくらいの大きさの魚も食べられるぞ」
「…やっぱ買わない」
「え?」
「行こうまこちゃん」
「なんでだよ!なんでだよう!」
ごめんよまこちゃん。
たしかに俺も魚は食べるけど、まこちゃんが生きたまま金魚を食べるのは…なんか…なんか嫌なんだ!
「よう津島、何やってんの?」
まこちゃんとごたごたしていたら、突然知っている声が後ろから聞こえた。
「えっ…沢口?」
休日スタイル沢口だ。まさか1日に2度も会うとは。まこちゃんが俺の後ろに半分隠れた。
「あ、えーと…買い物に来た。沢口は?」
「俺もそんな感じ。で、そちらは?なんで2人でバケツ持ってるの?」
沢口は顔を傾けまこちゃんを見た。
「あー…うーん…」
「俺はつしまのペットだ」
「は?」
「えーっ?!何その誤解招く言い方は!」
俺があたふたすると、まこちゃんはふっと笑った。
「冗談だ。俺はつしまの親戚の者だ。気軽にまこちゃんと呼んでくれ」
「まこちゃん?もしかして君の名前も誠なの?」
「…うん?」
まこちゃんが不思議そうに俺を見上げた。
「あ、そう!この子も誠。だからまこちゃん」
「ふーん…」
沢口とまこちゃんの声がかぶった。
もしかしてまこちゃん、自分の名前の由来に気づいてなかったのかな。
「誠といえば、まだ連絡はないんだよな」
「うん。何も…」
「本当に大丈夫か?もう出てってから1ヶ月は立ってるけど」
「あー、うん…」
「ま、寂しくなったらいつでも俺を呼べよ!」
「なんか怖いからやめとく」
「強がっちゃって」
「うるせー」
「じゃあ俺は行くわ。まこちゃんも、また会ったらよろしく」
沢口は手を振って去っていった。
まさか外出先で人間まこちゃんと沢口が鉢合わせするとは……ん?
俺はばっと振り返ってまこちゃんを見た。
まこちゃんは大きな目でじっと俺を見上げている。
「えっと…聞いてた?」
「何をだ?」
「あの…誠は……」
どう説明したらいいかわからず黙り込む俺の頭に、まこちゃんはポンと手を置いた。
「無理に話さなくてもいい。俺はお前たちの味方だ」
「え……?」
「ほら、買い物行くんだろ」
まこちゃんは強引に話を終わらせ、スーパーのエリアへ向かった。
まこちゃんの言葉…どういう意味だろう。
まこちゃんはどこまで知っているんだ?
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